角田光代

エコノミカル・パレス / ★★★☆☆

ネットでいろんな人の感想を読んで興味を持って、借りたのだけど、重い話、でした。本当に。
現代のリアル?でも情けないよこんなの。吐き気すらしそう。
あんな足掻き方じゃ足下掬われるよ、と主人公に思いつつ、ラストは案の定。
けど文章とか作者に対する不快感は不思議となかった。
只、こういう現実、は哀しいなって深く考えないようにした上で、それだけ。

講談社 / 2006.08.01.



梶尾真治

時の“風”に吹かれて / ★★★☆☆

面白かった、とは思うのだけど、どうにもこの軽さが邪魔をする。
文章も地味に度々おかしなことになっているような気がして違和感。
最初の2作がタイムマシンを題材にしていたから、そういう短編集なのかと思ったら、そうではなかった。
軽さの中に微妙にぞわっと来るようなお話があったり、完全におちゃらけたお話があったり、飽きない感じ。
表題作と声に出して読みたい事件がすきかな。前者は微妙によくわかっていないのだけど。後者は微笑ましくて和んだ。
アトムにびっくりしたり、途中で黄泉がえりの原作者さんだと知ってびっくりしたり。
わかりやすい文章は読みやすくて、むちゃくちゃな展開にも何となく、ちょっと、和んだ…かも、しれない。

光文社 / 2007.02.24.



梶尾真治

黄泉がえり / ★★★☆☆

前半は淡々としていてちょっと退屈だったけれど、後半、クライマックス前までの流れには引き込まれた。
映画版も確かテレビで見た筈だけれど、この本の、黄泉がえり現象の中で起きたオリジナルストーリーなのかなと思う。
よく覚えてはいないけれど、大分違う感じだし。でもRUI…だっけ、柴咲コウちゃんの役は元はマーチンなのかな。
区切り毎に置かれた“彼”に関する文章が興味深かった。SF、っていうのかな、理科な雰囲気も面白かった。
国語では決してない、色、というか。イメージは知的なモノクロなのだけど。青葉由高が可愛くて和んだ。

新潮社 / 2007.07.01.



片山恭一

君の知らないところで世界は動く / ★★★☆☆

前半、高校生の夏の青春物語だと思っていたら、中盤以降、別物のようになって驚いた。
高校生のカヲルと大学生のカヲルが一致しない。色々見逃していたのかな。
恋愛描写が内容のわりに生々しくないないのは好印象。
カヲルの病気に対するジーコの解釈も興味深かった。
色恋ボケしてるぼくに対していちいち色んなことを全否定するジーコも良かった。
たくさん出て来る本とか映画とか洋楽とかクラシックのタイトルも
わからないものもゴロゴロあったのだけれど、何となく雰囲気があって素敵。
…だけどいまいち印象に残らないお話だった。
文章も受け取り易かったのだけれど。 カヲルの拒食や過食に関する描写もいい線行ってたと思うのだけど。
…何でだろう。無色透明。難しい。

ポプラ社 / 2008.02.25.



片山恭一

世界の中心で、愛をさけぶ / ★★★☆☆

大まかなあらすじに、手に取る気は起こらなかった。公開当時、映画も全く興味なかった。
だって白血病って。あからさまなお涙頂戴でしょう、って思ってた。
けどいつか、テレビでやってた映画版を、食わず嫌いはよくないわって何となく見た時に
思ったよりいい感じだったから、挑戦、してみた。原作。
泣けはしなかった。でも不快感も全くなかった。食わず嫌いはいけないね。内容も文章も全然悪くなかったよ。
波の音、淡い水彩絵具、鮮やかに。予想に反して淡々としてる所、微笑ましい会話、…うん、良かった、かも。

小学館 / 2006.05.16.



角野栄子

魔女の宅急便 / ★★★☆☆

映画とかの原作、って何か気になっちゃって物凄く児童文学な感じだけれど、借りてみた。
物凄く、児童文学だった(笑)。和み系の優しいほわほわしたお話。
おばけのアッチシリーズとかよく読んでいたから、同じ作者さんだって知って懐かしかった。
子供向け、はナルニアとかよりこういうのがすきだな。

福音館書店 / 2007.03.07.



上遠野浩平

しずるさんと偏屈な死者たち / ★★★☆☆

ずっと入院している綺麗で聡明なしずるさんと彼女に謎をお届けするよーちゃんの物語。
しずるさんは、病室のベッドの上から全く動かずに、よーちゃんの話と資料のみから殺人事件を解いていく。
唐傘小僧の話、宇宙怪物の話、幽霊犬の話、吊られた男の話の全4話。
プラス、動かない時計をお腹に持つよーちゃんのぬいぐるみの思い出と、
彼の今を想像する2人の話であるはりねずみチクタのぼうけんが間に挟まれている。
現場の状況が不気味な事件が多い中幽霊犬の話が彼は大丈夫なのかな、だって犬だからなあ…、ってちょっとつらかった。
宇宙人の振りをした悪戯のタネの話ははじめて知った。だからなるほどお、って面白かった。
女の子2人の関係が閉じているのにひたすら健康的なのが新鮮。
なんと言うか、物凄く真っ直ぐで綺麗で歪さのないお友達なのである。
お互いとても大事に思っているようだけれど、へんに執着とか複雑さとかなくて、どこまでも爽やかだった。

富士見ミステリー文庫 / 2009.04.10.



上遠野浩平

しずるさんと底無し密室たち / ★★★☆☆

白い病院にずっと入院中なしずるさんと、
その友人であるよーちゃんが退屈しのぎに不思議な事件の真相を暴くシリーズ第2巻。
今回は吸血植物の謎、7枚のカードの呪い、死人のドッペルゲンガー、空飛ぶ怪人の話の4本立て。
間にはお馴染みはりねずみチクタの、2人がお喋りに興じているせいで殆どぼけっと放ったらかしな船上の話。
物語の合間で語られるこのちっちゃなエピソードともつかない更なる日常部分が普段の2人の当たり前なやり取りって感じでとても良い。
前回より不思議も楽しめた。読んでいて痛かったけれど一家皆殺しな7枚のカードのお話に特に惹き込まれた。
しずるさんが穏やかにごまかしを許さないところも何だか素敵。
実は激しいとか芯が強いとかそういうのじゃなくて、何ていうか、ただ、その在り様が魅力的。
相変わらずよーちゃんはしずるさんの話す声をきいているだけで幸せっていう
ふにゃふにゃな惚気っぷりをとてもナチュラルに披露しているけれど、これまた相変わらず、やたら健全で真っ直ぐで
好意が全く捩じくれていない様が微笑ましくも眩しくて心地好かった。

富士見ミステリー文庫 / 2009.07.31.



上遠野浩平

ブギーポップは笑わない / ★★★☆☆

2008年12月18日、再読。
“自動的”な、宮下藤花のもうひとつの姿である黒帽子ことブギーポップと
こっそり起こった世界の危機と、その周りにいた高校生のそれぞれの事情。
彼らのあっさり淡々とした群像劇の在り方が、それ故に、魅力的だ。
再読の今回は記憶より大分読み易い文章だったことに、物凄くラノベだったのだなあって少し驚いた。
紙木城さんと凪さんのあまり書かれてはいない友情がそのせいでかえって儚くて、もっと見たいって思いがありつつも、良かった。
凪さんはやっぱり素敵だ。ファザコンなところもそそられるっ。

電撃文庫 / 2006.01.18.



上遠野浩平

ブギーポップ・リターンズ VSイマジネーター(part1) / ★★★☆☆

2009年01月14日、再読。
織機綺嬢登場の巻。もうちょっと後かと思っていたから少し驚いた。
大人しそうでけどぶっきらぼうで話すこともちょっと謎だったりする綺と
彼女に疑問符を飛ばしつつも純粋にベタ惚れな、凪さんの弟であるところの谷口正樹が、メインを張っている。
同時進行で語られる今回の世界の敵は、
自殺してその後空中に浮かぶようになったこっちも謎な水乃星透子と彼女に囚われた感じの飛鳥井仁である。
人の心の欠落しているものが胸元の植物の像としてわかる飛鳥井は、前半、彼側から読んでいる時は普通だったものが
後半になって別の視点を持つとあからさまに飛鳥井馬鹿じゃんになっていたりして、その対比が、何だかとても効いていた。
何だあの正義の味方気取りは。うわあ。
でもお馬鹿さには哀愁さえ漂うけれど、あの辺は愛すべき馬鹿さなのだと思う。力抜けるけど嫌いじゃない。
ちらちらと出て来る藤花のちょっと男勝りな口調に、再読の癖にまた、どうにも意外に思いつつ
ちょこっとだけ登場する姉モードの凪さんが新鮮で素敵だった。

電撃文庫 / 2006.02.07.



上遠野浩平

ブギーポップ・リターンズ VSイマジネーター(part2) / ★★★☆☆

2009年01月15日、再読。
水乃星さんは殆ど空気になっちゃって、だけど飛鳥井仁は彼の計画のままに暴走して
何となく弱っちいけど本格的に世界の敵っぽくなってしまい
ブギーポップがおせっかいさんが出て来る前に、と、微妙に嫌々?お灸を据える話。
ブギーポップの活躍が嬉しい。
左右非対称の例の顔でとぼけたり飄々としてたり簡単に雑魚をあしらったりしちゃってる所がたまらなくカッコイイ。
凪さんは1に続き姉モードで頼もしいけど可愛い寄り。
ファザコンな上ブラコンのケもある彼女の素直じゃない優しさっていうか気遣いっていうか、要は心配する様子にきゅんとしちゃう。
綺は登場時より随分と人間らしくなった。今後の凪さんとの絡みが楽しみ。
腐れ縁みたいになってるブギーポップと凪さんの直の絡みとかも見たいなあ。
いないところでお互いさらりと相手について言ったりしてるのがたまらない、でも多分あるのだけれど。

電撃文庫 / 2006.02.09.



上遠野浩平

ブギーポップ・イン・ザ・ミラー「パンドラ」 / ★★★★☆

2009年03月15日、再読。
リターンズの最中に起こった、予知能力を持った5人+1人の少年少女のお話。
未来の一点が相手の瞳の中に見えたり無自覚に喋れたりする能力者たちがふいに出会い
彼らはつるんでその能力をちいさく使ってみたりすることにする。
そんな中、ある日黒帽子の姿を予知した時から彼らは世界の危機の中心へと巻き込まれることになる。
ブギーさんも凪さんも今回は遠慮がちな出演で、さり気なく綺と正樹も登場しつつも
等身大な5人+そこに引き入れられた統和機構の人造人間な1人にひたすらスポットが当たっている。
でもどうにも私は凪さんファンなので冒頭末真と普通の女の子みたく会話してる様にきゅんとしたり
絶対兵器であるキトにとにかく優しい様に何だかこそばゆくなったりした。
紙木城さんのことがずっしり刺さったままで、健太郎の協力を拒否する凪さんがつらい。
終盤の怒濤の展開では生死に関わる戦いに巻き込まれる中
大層な理屈がある訳じゃなくただ必死に逃げて守って戦う6人がとても胸に迫った。
特に功志と希美にはかなり来るものがあった。さり気なく出て来てスケッチブックを渡すブギーさんは憎い。
今回も美味しい所しっかりひっさらって行かれたよ全く!本当、炎の魔女と黒帽子がどうしようもなく大すきだ。

電撃文庫 / 06.02.14.



上遠野浩平

ブギーポップ・オーバードライブ 歪曲王 / ★★★☆☆

2009年03月30日、再読。
バレンタイン・デイに起きた、寺月恭一郎の建てた巨大高層建築ムーンテンプルでの出来事。
今回は懐かしの「笑わない」メンバーである新刻 敬、田中志郎、
それからパンドラでのお披露目を経て本格的に中心へとやって来た羽原健太郎がメインとして再登場する。
ああこんなのいたかも、そうかこれが健太郎だったか、とかって今更思っている辺り
私にとって如何に奴が邪魔だったか、って感じだ…。
だって凪さんファンがこんな妙な乱暴さを備えた筋肉バカっぽい人とかもうね、…わーんごめんなさぁいっ
このシリーズの所謂普通の女の子キャラってちょっと苦手な子が多いのだけれど(除・直子)
新刻も同様で、だけど早乙女くんになった歪曲王に、じりじり追い詰められるシーンはいつになく入り込んだ。
彼女が彼女らしく復活してからはやっぱりあんまりなんだけど…。気の強さが、私には上手く働かない。
ブギーは今回も素敵だった。
子供相手でどことなく優しかったりヒーローみたく怪獣と戦ったり、新刻に押されて拒絶出来なかったり
珍しくふいにまともな笑顔を見せたりと、大変。大すき。
再読だけれどすっかり忘れていた為終盤の志郎には驚いた。
寺月恭一郎は妙な魅力があってすきだ。素敵なおじさま、なイメージ。
最初から死んでいるキャラなのに凄く存在感があって静香ママとのやり取りもとても良かった。

電撃文庫 / 06.02.19.



上遠野浩平

夜明けのブギーポップ / ★★★★☆

2009年05月02日、再読。
ブギーポップ誕生に関する短編集。実体はむしろ凪ヒストリー。
炎の魔女の誕生その他に関する物語がこれまでの物語の幕間的に語られる。
最初に置かれた夜明けの口笛吹き、では廃墟で彷徨うエコーズがブギーと出会う。
そこで彼に訊かれたブギーが自分の名前について語るところから物語は始まる。
ブギーポップの誕生、は寺月恭一郎の調査中な黒田慎平ことスケアクロウが13歳で入院中な凪に出会う話。
全てのはじまり。勿論、統和機構的にはとうに始まっていた訳だけれど。
ブギーの誕生は呆気ない描かれ方で、何がそんなきっかけだったのだろうと思うようなものだ。
でもそれが彼らしいのかもしれない。あれは誰の葬儀だろう。
…にしても、凪が読めなくて風とか言うガッコのセンセはさすがにアレだよと突っ込みたい。いるのかそんな人…。
霧間凪のスタイル、は元々スケアクロウが住家としていた安ビルの一角を事務所としている今の、18歳の凪の話。
場所の繋がりが憎い。すきだこういうの。歪曲王の後の話。
健太郎は別に頼りにならないよ〜とか酷いことを思いつつ
凪と、凪のところで新妻している綺の関係が微笑ましくて可愛くてすき。癒される。
…お金持ちだの何だので上手くファンタジーした素敵空間でしかないっていうのはわかっているのだけれど、憧れちゃう。
カラスの共食いな話。犯人の高圧的な言動が苦手。何で大人の男の人ってのはこう…とか、ね。
天より他に知る者もなく、はスケアクロウ事件で薬を手に入れてしまった来生真希子女医の話。
流れる時間はまた過去へ戻って、二重人格なのだと母親に騒がれた藤花が精神科医の彼女のところへやって来る。
世界の敵側に回りつつある彼女は今回はまだ、で見逃される。
殲滅しなければいけないなんてするのは間違っているのだろうけれど、この時点でブギーが行動に移っていれば
凪さんは危ない目に遭わなかったし、被害者の女の子たちも、…とつい思ってしまった。ブギーはどこまでも中立で自動的だ。
パブリック・エナミー・ナンバーワン、は更に時を溯って
進化の過程にある彼らの背中を知らず押していた霧間誠一と水乃星透子がちょっぴり出会ってちょっぴり話す話。
ちいさな凪さんのパパっ子っぷりが愛しい。わかりやすくパパだいすき!とかしていないのがとても良い。
虫、は末真が危なかった佐々木政則事件の真実の話。
誠一を殺した張本人なのに凪が気になってしまう佐々木ことモ・マーダーとか
それを知らずに、あんたは自分から進んで人殺しなんかしないよと言い切る凪とか
簡単に説明出来ない、縁で愛で優しさ、みたいなものが特に色濃く出ているのじゃないかなと思う。そういうところ、すきだ。
最後に置かれた夜明けの口笛吹き、では廃墟がどこなのかを明かして終わる。
エコーズがひたすら穏やかなのが染み渡るようで優しくて切ない。
全体を通して凪にスポットが当たったことで
彼女があまりにも統和機構のごたごたに首を突っ込んでいることがとても印象に残った。
凪が呼んでいるのか、向こうが引き寄せるのか、わからないけれど
具体的な描写は避けているから目立たないだけで、辛い目にもかなりの確率で遭っているなって、思う。
それでもやめない凪さんには、展開上の都合とか身も蓋もないことを感じたりしたけれど
人造人間の人たちが凪に会ってやたら調子を狂わせちゃうのは優しくて惨くて、やっぱりちょっぴり切ない。

電撃文庫 / 06.02.20.



上遠野浩平

ブギーポップ・ミッシング ペパーミントの魔術師 / ★★★☆☆

2009年10月31日、再読。
緑色の失敗作、アイスクリーム作りの天才、軌川十助の物語。
アイスも十助も全体の雰囲気も、ひたすらミントグリーンが似合う。シリーズの中でも異色だと思う。
いつもと一緒のブギーポップシリーズで、でもシリーズの中に自然ありながらも絶対的に交わらない印象。
十助を拾ったのは寺月恭一郎だし、中盤で十助に接触して来るのはスプーキーE、
逃亡した十助に再会するのは飛鳥井仁、と懐かしい面々が並ぶ。
作中の時間の中でリターンズとオーバードライブが起きたっぽい。多分。
同時に、直に受け継いだ延長線上の作品でもある。
ブギーポップが見逃したこともサイドストーリーっぽさに拍車をかけたかもしれない。
こういう薄ーく、でもあからさまに、けどさり気なく、繋がっている感じってやっぱり素敵だと思った。

電撃文庫 / 2006.02.21.



上遠野浩平

ブギーポップ・カウントダウン エンブリオ侵蝕 / ★★★☆☆

2010年04月02日、再読。
卵型のゲーム端末に入った謎のエンブリオと
それの影響で不思議というよりはやたら厄介な能力を開花させてしまった人たちの話。前編。
とばっちりなのにあまりに惨い最期になっちゃったりした少年に同情していたらそんなことはなくてほっとした。
再読なのに覚えちゃいないのは結構毎度のこと。
だって奴ならやり兼ねない、のか?とか思わされるくらい謎な人なんだもの、ブギーさん。
正樹が結構なメインを張っている。作風的にこっちのピンチにも一瞬ヒヤッとしたりした。
一瞬とはいえ有り得なくないような気がしちゃう無情な雰囲気は、嫌いじゃない。
主人公っぽいサイドは必ず勝つ!みたいな印象のないところ、すきです。
例によって綺とお買い物したり正樹に意地悪したりな凪さんに悶えた。
綺に対してお姉さんぽく接して何と言うか過保護気味な凪さんには何だかこそばゆい気持ちになる。
この巻では基本普通の女の子っぽい。和んだ。

電撃文庫 / 2006.03.03.



上遠野浩平

ブギーポップ・ウィキッド エンブリオ炎上 / ★★★☆☆

2010年04月11日、再読。
ビルが燃えてイナズマとフォルテッシモの再びまた再びな対決の巻。
ややこしくていまいち入り切れなかった。特に弟弘くんのオチ。
最強と稲妻の再対決もこの巻では繰り返しすぎて勢いが削がれている印象。
ここへ来て名前が再登場する水乃星さんに至っては引き継いだ顕子もろとも訳がわからない始末。
把握が難しくて自分で色々残念…。
ラストの大嘘つきだけはずば抜けてすきだった。
いきなり間抜けになっちゃった彼と嘘つきさんの惚けっぷりがたまらなく素敵。

電撃文庫 / 2006.03.04.



上遠野浩平

ブギーポップ・パラドックス ハートレス・レッド / ★★★★☆

少しだけ久しぶりなブギちゃん(やめようよその呼び名、とは自分でも思う)。
相変わらずの読むのを自分でも止められないスピード感その他、あっぱれです。
やっぱり凪さんはいいなぁ。かっこいい。珍しく怒るシーンも本気さが泣きたくなるくらい優しくて、じぃんて来た。
千鶴さんも暖かくてよかった。
朱巳さんは新しく出たキャラでは珍しく、初登場な今回で既にかなりすきカモ。また出て来てくれるかなぁ。
颯爽と目の前を駆け抜けたみたいに、どうしてもなかなか残ったりはしないのだけど、独特の解釈とか、妙にしっくりくるのです。

電撃文庫 / 2006.03.23.



上遠野浩平

ブギーポップ・アンバランス ホーリィ&ゴースト / ★★★☆☆

爽やかで可愛い青春劇、な感じ。相も変わらず凪さんはオイシイです。
微かにブギちゃん出生の秘密に片足突っ込んだ?と思わせつつ、匂いだけ。気になるじゃん…!!
イタチくんとその仲間タチは、最初の印象とか固定観念?先入観?と逆に、タル何て本当優しい兄ちゃんて感じで
いつのまにか中に入った私が勝手にすっかり懐いちゃってた。
最近ちょっと遠くて知らない人みたいだったブギちゃんもまた近くに来てくれた感じして、嬉しかったぁ。

電撃文庫 / 2006.03.24.



上遠野浩平

ブギーポップ・スタッカート ジンクス・ショップへようこそ / ★★★☆☆

末真と藤花が出て来る代わりに、凪さんサイドは出番なし…淋。
個人的に末真があんましすきでないのもあって(別に嫌いでもないんだけど)、そこそこな印象。
彼女、大切なのね。何気に結構中心にいる?意外カモ。。
前半の、後から後からちょっとずつ繋がって、な語り口が不思議で面白かった。じじがすきだ…!

電撃文庫 / 2006.03.27.



上遠野浩平

ブギーポップ・バウンディング ロスト・メビウス / ★★★★☆

久しぶりのブギーポップはその名の通り(泡は置いといて)不気味な雰囲気で
今まで読んだシリーズ中1番かもしれないぞわぞわ感を味わった。…そういうのは苦手な為あまり嬉しくないんだけど;;
ブリックを、可愛いと感じたかったな、なんて。イラスト怖いよぅ…。
ストーリーは、まだ何だか釈然としない感じ。ていうか凪さん!凪さん!早く次を読まねば…。。
終わりの始まりを、感じさせる文章もちらほら。近いのかな。まだまだかな。
広すぎるくらい、無限大に感じるくらい、なその全貌を見られる日が待ち遠しい、かも。

電撃文庫 / 2006.08.04.



上遠野浩平

ブギーポップ・イントレランス オルフェの方舟 / ★★★★☆

最新作。面白かった…のだけど、けど、でも、凪さんは!凪さんはどした!!
このシリーズでまさか巻跨ぐとか焦らされるとかは想像してなかったから何だかひたすら気になる。。
学校1ヵ月も来てないって何があったんだよ〜(泣)
美登里さんの設定がすき。春海さんのラストもほっとするもの(っていうのもアレだけど)だったし、良かった。けど、だ。
星4つ。だけど何だかもやもや。次が更に待ち遠しい。

電撃文庫 / 2006.08.31.



上遠野浩平

ぼくらは虚空に夜を視る / ★★☆☆☆

最初の3分の1か4分の1くらいまではわくわくしながら読めたのだけれど、その後はややこしくて難しくて入れなかった。
ただの学生である筈の工藤兵吾が精神というか本体というかを宇宙に飛ばして戦う未来の話。
普通の学生のつもりなのに、って戸惑う最初の兵吾と幼馴染みの槇村聡美とのやり取りとか
兵吾にラブレターを出して来た景瀬観叉子に、片思いな根津先輩とのやり取りとかは
特に根津先輩とのシーン全般が、微笑ましくて可愛くて良かった。
本筋はついていけなくてよくわからないうちに終わっちゃった。

徳間デュアル文庫 / 2008.09.10.



E.L.カニグズバーグ

クローディアの秘密 / ★★★☆☆

みんなのうたで流れたらしい歌の元になった児童文学。
歌の方もちゃんと知っている訳じゃないのだけれど、
そういう風に別物に生まれ変わったりしているって情報だけで何だかドキドキしちゃう。
家出する先がメトロポリタン美術館な所が素敵。
児童書〜って雰囲気に油断していると、クローディアが違って帰りたい、と思う所にはっとして
フランクワイラーおばさまと取り引きをして秘密を手に入れたところにはっとして
サクソンバーグさんの思わぬ正体に、やられたぁって思う。2人を送ったシェルドンの報告に、笑った。

岩波少年文庫 / 2008.05.12.



加納朋子

いちばん初めにあった海 / ★★★☆☆

周囲の騒音に嫌気がさして一人暮らしのアパートから引っ越す準備を始めた千波が
一冊の本を見つける所から始まる表題作、その本のタイトルが、この本と同じである。
はじめに置かれた文章もお揃い。こういう演出ってすきだ。
ページに挟まっていた手紙、知らない筈の差出人、千波は過去の記憶を辿り始める。
騒音の描写がやたらリアルでまずそこから千波にとても入り易かった。麻子の関西弁が柔らかくてすてき。
不健全だと思いつつ、甘々なお父様っていいなぁ憧れるなぁと性懲りもなく。
化石の樹はたまたまの同時収録じゃなくて、表題作とセットの片割れなのだと途中で気付いてどきゅん。
けど雰囲気代わりすぎでビビった。別人のようだよ。。わあお。
読者が登場人物になったみたいに語り掛けられる文体が新鮮。
樹のうろから発見したノートの文章がやたら鮮やかで良かった。そこから物凄く息衝き始めた気がする。
麻子の母親の嗜好が度々だぶってちょっとぎゃあだった。
きれいなものとか可愛いものとかだけを追って、少女趣味で、食に興味がなくて。母親として見るから彼女のことは許せないけど。
母でなければ共鳴したかもしれない。金木犀の存在がとても心地好かった。

角川書店 / 2008.04.09.



加納朋子

ガラスの麒麟 / ★★★★☆

基本の繋がっている、次から次へと紡がれる短編集。加納さんの本の基本形態の一つなのかな。
表題作以外も、全体が纏う色が本当に透明で綺麗だった。
ただ、私は麒麟って漢字だと中国の想像上の、って方をどうしても連想してしまうから
そこは、最後まで違和感を拭えなかったのだけれど…。
三月の兎にほろり、ダックスフントの憂鬱に入り込んで痛くなって、鏡の国のペンギンのさやかは何だか愛しい。
全編通して、神野先生が本当に大すきだった。
保健室の先生、って現実では独特で苦手だったけれど神野先生は人間としてとても好ましい。
弱さも丸ごと。…というか、本当は弱さ故、かもしれないけど。
けど最後のお話の前から、最初からずっと独特の澄んだオーラを発していてそれが凄くキレイで惹かれた。
通り魔の殺人事件からはじまるのに、透明で優しいお話だった。

講談社 / 2007.02.20.



加納朋子

ぐるぐる猿と歌う鳥 / ★★★☆☆

星は厳密には3.5。
個人的にミステリーランドは小学生からって感じの雰囲気があると思うけれど
幾つになっても楽しめる類のものもちらちらある印象だ。
北九州の社宅に引っ越して来た腕白少年のキラキラした日常。
元気すぎてよく色々やらかしてしまって大人によく怒られる高見 森(たかみ・しん)がふいに微笑ましくなる。
読んでいる最中は基本的に入り込んじゃっててわからないっていうのも如何にナチュラルかって感じで思い返すと何だか凄い。
方言がやさしくてかわいくて、さながら幽霊のようなやたら謎に包まれたパックも妖精みたいで、存在そのものが軽やかで良かった。

講談社 / 2008.07.25.



加納朋子

月曜日の水玉模様 / ★★★☆☆

可愛らしいタイトルに反して、中身はとてもナチュラル。主人公が丸の内の?OLさんなのだから当たり前と言うべきか。
その辺は、だからちょっと入り辛かったけれど、探偵もどきのうきうき萩クンが可愛くて
あと、出て来る駅名に身近なものが幾つかあって、何だかどきっとした。
加納さんはあの辺りの方、あるいはあの辺りが身近な方なんだろうか??
ちょっとしたミステリー、人の死なないミステリー…つまりは不思議?
…ちょっとニュアンスが違うかな、それをするすると解していくようなお話。
水曜日の探偵志願と木曜日の迷子案内、土曜日の嫁菜寿司、が特にすきかな。
中でも土曜日、アーヤちゃんの告白方法とか微笑ましくて可愛くて良かった。

集英社 / 2007.01.28.



加納朋子

コッペリア / ★★★★☆

前半はやたら強烈な勢いに吸い込まれるみたいにのめり込んだ。
その頃から既にややこしくはあったけれど、それもまた魅力になっていた。
ただ後半は、読み進めても読み進めても逆に訳のわからなくなるような展開に少し疲れてしまった。
人形師とその人形に執着する人間と人間と人間と
ちいさな劇団の舞台女優と彼女にそっくりな人形とその子を作った人形師と…(文頭へ戻る)
現在と過去が入り乱れて今がどこだかわからなくなる。了と創也と草太、にはかなり混乱した。
人間は死んでもドールは残る。何度か登場したその文章の、当たり前の、別に怖くもない筈の事実に、慄く。
女優さんの出て来るお話はやっぱりすきだなと改めて思いつつ。まゆらドールの鬼気迫る描写が印象的だった。

講談社 / 2007.11.12.



加納朋子

ささらさや / ★★★★★

泣きたい…凄く泣きたい。暖かくて切なくて、優しい、お話。凄くすき。
旦那様が突然の事故で亡くなってしまった奥さんと、赤ちゃんのお話。
基本はオムニバスみたいな短編形式で文章もストーリーもすっと馴染んだ。
ご近所のおばあちゃま3人と、若いお母さん友達とその息子。誰かの体を借りて現われる旦那様。優しい日常。
サヤになりたいって何度も思った。
許されるのはユウ坊が赤ちゃんのうちだけ。そのあとはちゃんと強くならなきゃいけない。じゃなきゃ申し訳ない。
でもずっと、サヤになりたかった。
ラストはきっとそうなるって、そうならなきゃいけないって、思っていたけど知っていたけどでも涙腺が、弛みそうになった。

幻冬舎 / 2006.10.27.



加納朋子

てるてるあした / ★★★★☆

星は、3寄りな気がしないでもないけれど。でもすき。変わらない加納さんワールド。
けど今回は、主人公の照代が痛かった。似てる、のだろうか。私と。苦かった。
いちいち可愛くないことを思ってしまうところとか。嫌いが多いところ。考え方。悲しいくらいに、重なる。
ささらさやの続編的なお話でびっくりした。
照代のおかあさんは可哀相な子供で、だから照代は終盤、自分が愛してあげる、って、ママになってあげる、って、言う。
それは、成長、なのだろうか。
可哀相なママ。だから娘がママに。じゃあ照代は?
ずっと先、照代がママになったらその時はその子供がママになってあげるの?悪循環、だ。
子供だっていろんなこと考えて、傷つくと
軽く言われた言葉だってしっかり覚えてもいるのだと、あゆかちゃんから感じた照代なのに、どうしてそんな風になれるのだろう。
…佐々良の人たちに、何だかんだで愛された、から?…なんて。
照代とダイヤくん、あゆかちゃん、ユウ坊、のやり取りが特に先の2人とは簡単に仲良くなったりしなくて
でもしっかり意味のあることとして生きていて、良かった。

幻冬舎 / 2007.04.01.



加納朋子

沙羅は和子の名を呼ぶ / ★★★☆☆

怖いかな、と、ちょっとびくびくしていたから、そういう不気味さがなくてほっとした。
お化け、とか。ミステリーな短編集。ホラーではない。
エンジェル・ムーンのセピアな哀愁とお魚の優雅さ、海を見に行く日の口語調の独特な色、
商店街の夜の絵の描写とファンタジー、それから、表題作がいちばんすき。
とにかく引き込まれる、巧みな空気に。実現しなかった未来との融合、何ていう無茶っぽいストーリーに、溶けて。
表題作をぽんっとひとつだけ読んだのなら、星4つ。

集英社 / 2006.12.28.



加納朋子

掌の中の小鳥 / ★★★☆☆

全5編の連作。主人公と過去関わった人、今関わっている人、その人と過去関わった人…たちの、お話。
私は、芝居に生きる人間の話がとてもすきだけれど、今回、絵を描く人間の出て来るお話も、いいなと思った。
通じるものがあると思う。極めてる人に弱いのかな。何通りもに広がってゆく色の名前が本当に魅力的。
誘拐してくんない?と言う少年の桜月夜には優しい色合いが浮かんだし
自転車泥棒の傘の彼女は、何だかどうしても見てる側としては微笑ましく感じてしまった。
暖かくって、ふわふわ。安心して読めるのはやっぱり落ち着く、かな。
…でも、不登校児には優しくて厳しいおばあちゃんが、付き物なんだろうか。と、少しだけ。
物凄く反発したくなる類のお話ではなかったけれど、その通りだよ、とも言えないから、微妙なもやもやが残ってしまった。

東京創元社 / 2007.12.12.



加納朋子

ななつのこ / ★★★☆☆

第3回鮎川哲也賞受賞作であり、デビュー作である。
当時からやさしい色合いと暖かい雰囲気と短編連作の基本構成は出来上がっていたみたいで
デビュー作であるにも関わらず全くぶれずに安心して読めた。
駒子の物語、1作目。
童話のような幻想小説のような、駒子お気に入りの本の作者さんとの手紙のやり取りを通して
日常に現われる、ちいさくてかわいい謎を解明していく。
スイカジュースの涙だけはちょっと後味が悪いけれど
バス・ストップで、の花の描写の鮮やかさに胸を打たれて、一万二千年後のヴェガの首長竜の旅に、笑った。

東京創元社 / 2008.08.05.



加納朋子

魔法飛行 / ★★★☆☆

ほのぼのな話。
何でかなぁ、やたら妙にリアルな感じで、今の自分の状態?とかも関係しているのかもしれないけれど
とにかくナチュラルで、何度も今、と本が、ごっちゃになった。故に、上手く飲み込めていない。
どれがこの本で読んだお話なのかいまいちわかっていない…
ちょこちょこ出て来る小物(魔女の宅急便、とか)が知っている度嬉しくて、茜さんの存在感が凄くて、クドリャフカ、は、哀しすぎる。
何で人間はそんなことするんだろう、出来ちゃうんだろう。
…本当かどうかはわからない、って書いてあるけれど重い哀しさが覆う。

東京創元社 / 2006.11.28.



加納朋子

スペース / ★★★☆☆

ななつのこ、魔法飛行の続編らしい。どれも駒子のシリーズ。
前者は未読だから、作者の希望に添えずちょっと申し訳ない。。
表題作とバック・スペースの2つセットな作品。
語り手のキャラクターをそれぞれ変えることで、視点を変えることで不思議な奥行きが生まれて、それが凄く綺麗。
双子の関係性はテーマとしてすきだし、その分も楽しめた。
女将さんからの散々好き勝手、な手紙が色濃く印象に残っている。出て来るのはほんの少しだけれど、締め方が凄くすき。
さり気なくって洒落ていて(とは言わない…かな)、素敵なお母様だった。

東京創元社 / 2007.04.13.



加納朋子

モノロールねこ / ★★★☆☆

全8編の短編集。ラストの2つがすき。
ポトスの樹。
ロクデナシのクソオヤジ、について半ば延々と愚痴っていても、どこか妙に明るくて可愛くて、憎めなくて
文章の軽妙さにやられていたら、更にオヤジ殿の過去の経験から来るポリシーに、すっかりすき!となってしまった。
ドラマとかで見る、父親から息子への「お母さんを頼んだぞ」が大嫌いだった。
大抵、息子はとても幼かったりする。遭遇する度有り得ないと思っていた。
作中のオヤジ殿はもっと濃いのも。プラスαも。余計にとっても、愛しい。
ロクデナシだけれども、ポリシーに共感したら大分チャラ。ラストも優しくて良かった。
バルタン最期の日。タイトルでいきなりネタバレだけれど、これも軽快なテンポが心地好くて良かった。
フータに釣られたザリガニのバルタン目線で語られる一家の在り様がぶきっちょで馬鹿馬鹿しくて、優しくて、暖かくて、ぬくくなった。
2作とも、一人称な文章がとても生きてるお話。
この本に収録されているお話はどれも一人称なのだけれど中でも上記の2作が私にとっては秀逸だった。

文藝春秋 / 2007.10.20.



加納朋子

螺旋階段のアリス / ★★★☆☆

昔ながらの誰もが知ってるようなお話の、
人があんまり覚えてないようなエピソードだとかキャラクターを比喩として使うようなお話が、すきです。
ハートの女王とかダイナとかはわかりやすいけど、トイードルダムとトイードルディーはどうにも浮かばない。
マイナーとか言われてるバタつきパンフライは何故かしっかり覚えているんだけど(笑)
そんな、つまりはアリスの出て来るお話。探偵さんとアリスのお話。
本来ミステリーとかはホント滅多に手に取らないのだけど、アリスに惹かれて
それからミステリーって感じではない、との情報を得ての、チャレンジ。
可愛いお話。さすがアリス。これは!!て感じではないけど、ちょっと、もうちょっと読んでみたいかも、って思わせるような。
最上階と子供部屋の回がすき。

文藝春秋 / 2006.04.10.



加納朋子

虹の家のアリス / ★★★★☆

読む前は結構な厚さの本だから少し心配したりもしたのだけど、読み始めたらそれはもう読みやすくてびっくりした。
前作より確実に面白く素敵になってると思う。アリスへの当て嵌め方もナチュラルになっているし奥行きとかもぐっと出た感じ。
表題作の真実が暖かくて、牢の家はラストの安梨沙にびっくり。
猫の家は締め方が優しくて、幻の家は安梨沙のバッグラウンドが切ない。鏡の家ではまんまと騙されて、夢の家では並ぶ花々にうっとり。
何だかクセになりそうなシリーズ。安梨沙のアイアイサー!が可愛くてすきだ。

文藝春秋 / 2006.05.11.



加納朋子

レインレイン・ボウ / ★★★★☆

優しい、深く深く優しい、お話。泣きたくなる、お話。
ほのぼの一直線な物語は物足りなくてあんまりすきじゃないと思っていたけれど、加納さんの作品を読んでいると
そうじゃないのかな、何て気がしたり、加納さん作品だからかな、と思ってみたり、とにかくその優しさの虜だ。
全七話、虹の七色の入ったタイトルで彩られていてちょっと親近感。
先の展開が気になるタイプのストーリーではないと感じたのに、読み進める手が止まらなかった。
ひよこ色の天使、と、雨上がりの藍の色、が特にすき。
ヒロくんの可愛さと佳寿美せんせーの優しいほわんとした視線が、
由美子の三魔女に対する敵意のなさとあっけらかんとした明るさが、それぞれすごくすき。
ラストの里穂も、陶子さんの広さに泣きたくなる。うん、良かった。

集英社 / 2006.12.14.



壁井ユカコ

エンドロールまであと、 / ★★★★☆

勢いがあって、飲み込み易い文章で、殆ど一気に読んでしまった。
10歳まで生きられたらいいほうだと生まれた時に医者に言われた佐々右布子(ささ・ゆうこ)は
来月で17歳になるが、みっともなく無様に、まだ生きている。
本来有り得ない筈の一卵性で異性の双子の弟だけが大事で、
だって他には何もいらないじゃないかと思いながら保健室の備品のように保健室の常連な日々を送っている。
右布子の所属する映画研究会は本拠地が保健室で、メンバーは他に背が高くてはっきりきっぱりした清野亜寿(せいの・あず)、
右布子の双子の弟の左馬之助(さまのすけ)、その親友で部長の西丸貴大。4人それぞれの視点から綴られて物語は展開する。
双子だから実は血が繋がってなかったなんてこともなく、それは嫌という程わかっているけれど左馬之助は右布子がすきで
身体の弱い右布子は右布子で、今にも死にそうな感じに無気力に過ごしつつ左馬に対する執着は強い。
右布子視点とそれ以外のメンバーの視点の文章で、右布子の印象がかなり違うのが不思議で面白かった。
自主制作映画の撮影の合間にお遊びで撮られたものに映っていた、ホラーなノイズの描写にはとてもゾクッとした。
最初は辛辣だった清野がこの子はまだ子供なんだと納得してから右布子に過保護になっちゃうのも微笑ましい。
鮮やかな青春はとても爽やかで、双子の身体に刻んでのメッセージ交換にきゅぅっと来て、
すごくすごく良かったのだけれど、ラストがいまいち。
おばあちゃまとかお母さんのこともそうだけれど
何より件のホラーが2度も登場していながら置いてきぼりに終わってしまったのが、不満だ。
必死さとか歪さに悩む様子とか切実さとか、なのに真っ暗にならないところはとてもすきだった。

小学館 / 2008.07.24.



壁井ユカコ

キーリ 死者たちは荒野に眠る / ★★★★☆

どっかちょっと偏ってはいるのだけど、でも、うん、面白かった。多少甘い部分もデビュー作だしこれからに期待ってことで余裕で許せる。
幽霊が見える、だから神様はいないんだって思うしかないキーリと不死人のハーヴェイと何故かラジオに取り憑いている兵長のお話。
スモッグとか排気パイプ、神様のいない教会、錆びた機械に鉄道旅行。退廃した世界が独特の美を醸し出す。
1話毎に完結する形式で、幽霊さんとの交流が美しく描こうとされすぎずに、でも優しく、語られる。
ちょっとだけグロテスクに片足突っ込んだような描写もあって、おかげで甘ったるい雰囲気にならずにいて、好感。
レベッカが可愛くて挿絵の感じも凄いすきだった。2巻も読んでみたいな。

電撃文庫 / 2007.02.05.



壁井ユカコ

キーリU 砂の上の白い航跡 / ★★★★☆

前作の舞台は荒野の列車、今回は、砂の海の蒸気機関船。砂の海、砂海の墓場、の描写が一々凄く綺麗。
退廃的、だし、砂の海の終着点である砂海の墓場なんて哀愁の漂う、といえば聞こえはいいけれど
どこか現代のごみ捨て場を連想したりもするようなものなのに、抗えない、美が存在してる。
ご主人が亡くなった後も変わらず暮らしていたロボットさんが切ない。
どの話もキーリにとても感情移入しやすくて、その辺の描写力とか多分T以上に凄くなっていて
それに、全体の纏まり具合もかなり良くなったと思われる。ライトノベルだけれどしっかりとした文章に好感。
詰まっている分鈍っていると怯むけれど、入り込み出して感覚を思い出したらぐいぐい進んだ。
情けなさとか、痛い、って顔を背けたくなったり、逆に目が逸らせなかったりきゅう、ぎゅう、って切なくて泣きそうになる感覚。
やっぱり主人公への共鳴度がぴかいちっ!

電撃文庫 / 2007.03.05.



壁井ユカコ

キーリV 惑星へ往く囚人たち / ★★★★☆

すっかりお気に入りなシリーズ。今回は断層の岩壁にへばりついている炭鉱の街を舞台に、宇宙船の遺跡なんかも出て来る。
…あとがきの簡単な粗筋、わかりやすくていいな(笑)
相変わらずまわりくどい性格の女の子と面倒くさい性格の男がくっついたり離れたりする話、らしい。
このどこか身も蓋もない言い方もすき。硬派だけれど、そういう面もあるんだよなぁ。
…けどそうするとハーヴェイはロリコンだよなぁ、なんて思ってみたり(笑)。3人(…?)の家族な雰囲気がすきです。
兵長がすっかり正義の味方キーリの味方!なお父さんになっていて可愛かった。
新キャラも登場したりしつつ、作者曰く人生くたびれた男、であるところのハーヴェイが今回は本当にどうにも大人気なく、余裕なく…
そんなこんなで思い切り、へんに、擦れ違っちゃったり。でもハーヴェイは結局は素直だから、有りだ。ぜんぶ許せちゃう。
ラストは意外だった。それがきっと作者の、ハーヴェイの、ケジメなんだろうと思う。
これが最終巻だったら淋しいけれど、そうじゃないから大丈夫。
それにハーヴェイの、しっかりちゃんとしていこう、みたいな真摯さが見えて、良かった。

電撃文庫 / 2007.3.15.



壁井ユカコ

キーリW 長い夜は深淵のほとりで / ★★★☆☆

3巻から約1年半後、16歳になったキーリと兵長、それからベアトリクスの旅の様子が描かれるのが3話まで、
4話からはハーヴェイサイドを加えて地下水路であたふた。
相変わらずのグロテスクな描写はぞわぞわするけれどへんに綺麗を追わないのはこのシリーズでは美点だと思う。
キーリとハーヴェイのやり取りは擦れ違いが痛々しくて切なくて、
かと思えば微笑ましい、優しくてほっとする空気も健在で、両方、あってこそだ。嬉しくなった。
全体を彩る、過剰にならないさり気なさが好ましい。それでいて、突くところは突いていて。真摯で。

電撃文庫 / 2007.07.23.



壁井ユカコ

キーリX はじまりの白日の庭(上) / ★★★☆☆

今回は人生くたびれた男、車に轢かれたり看板にぶつかったり堀から転げ落ちたりしながら例によって面倒臭く悩んだりしてます。
…あとがきから引用、っと。こう書くと可愛いなあ。
本編では誰も彼もとっても鬱な悩み方をしてるけれど。でもどこか愛らしい、感じ。ヨアヒムも可愛い。あんななのに。
メインは興行団での日々。ネズミとクマとわいわい。
そこにハーヴェイの過去を挟みつつ、離れていた時間が予想外に大きくて戸惑うキーリが切なかった。

電撃文庫 / 2007.07.26.



壁井ユカコ

キーリY はじまりの白日の庭(下) / ★★★☆☆

下巻。珍しく4話と5話とエピローグ的なお話全て続きもの、である。今までは短編連作ちっくだったりしたからちょっと新鮮。
ベアトリクス捜索に来たはずの植民祭編、
がしかし今回もビーは全く出て来なくて、けどその代わりエイフラムとエイフラム時代のヨアヒムが出張っている。
過去にひとり飛んでしまうのも人形の虚ろな町もとても心許無くて、悪霊の憑いた人形は、本当見事なまでに不気味だし
ハーヴェイはハーヴェイで無理しっぱなしで、いつにも増してぼろぼろで、苦しかった。クリフの描写もとても。
映画でも何でも、戦争ものとかって自分から見たりするの私は嫌いなのだけど、
既に知っているキャラがその時代を生きて、そのまま、過去の人だって今の人と全然変わらない人間だったんだって思い知らされるのは
やっぱり、痛く、なる。でもだからこそちいさな幸せとか優しさが、愛しい。
…ラスト、約束、にはぶっ飛んだ。予想しないこともなかったけどマジとは。積極的になったな、キーリ…。
巻末に挿絵の田上さんの描いた漫画版キーリが載っててそれまたびっくりした。懐かしいエピソード。“向こう”のキーリが可愛い。
それからあとがき、ラジオドラマ!兵長は芳忠さんだと聞いてあまりにそのもので笑った。
芝居に注文もつけたらしい作者さんに、とても好感。
そっかぁ、キーリは中原麻衣ちゃんか。なるほど。…ちょっと、きいてみたかったなー

電撃文庫 / 2007.07.26.



壁井ユカコ

キーリZ 幽谷の風は吠きながら / ★★★☆☆

ビーたんが何だかぶっ飛んで登場したり、キーリが物すっごい突っ走っていたり、色々と大変な巻。
キーリが思い詰めてる様は最初少し唐突に感じられたけれど
後半になるにつれて本人の苦悩と相俟って大分馴染むようになってほっとした。
兵長が飛んでしまったことにもちくちくしたり、またいつにも増して無理してるハーヴェイにも痛くなったり…
次巻はいよいよ首都で、ラストエピソード。
終わってしまうのは物凄く寂しいけれど、彼らの旅を最後までこっそり見守りたいと思う。

電撃文庫 / 2007.08.08.



壁井ユカコ

キーリ[ 死者たちは荒野に永眠る(上) / ★★★★☆

最終エピソードの上巻だけあってそんな雰囲気に溢れている今回。
淋しい。淋しい。…本当に淋しい。ここまで別れ難い本って久しぶりだな。
ハッピーエンドらしいハッピーエンドなんて有り得ないのだと思えば尚更。
別に、バッド、ではないかもしれないけれど。全てが優しい、みんなハッピー、はタイトルもアレだし…難しいと思うから。
だからこそキーリはずっと怯えて、今巻では信じてもいない神様に祈りさえ、する。刹那。痛々しい。淋しい。
キーリはキーリのお父さんかもしれない人に会いに行く。そこでの、困惑、敵意、…迷い。
誰にも彼にも試練がありまくって、例えば教会を疑い始めてしまうユーリ、荒れるビー、おかしくなってゆくヨアヒム。
自分が間違いを犯すとハーヴェイが悲しそうな顔をするから、と踏み止どまるキーリが痛々しくて切ない。
本当に普通の女の子で、それはキーリの場合足を引っ張るだとか駄々を捏ねるとかそういう形で現れやすくて
本人も自覚しているから余計に、今回もまた入り込む反面、辛かった。

電撃文庫 / 2007.09.04.



壁井ユカコ

キーリ\ 死者たちは荒野に永眠る(下) / ★★★★☆

長い長い旅も、これで終わり。
近付けば近付く程淋しいってどんどん思うようになっていたけれど、やさしい、終着点に暖かくなった。
ひとり、またひとり、欠けていくのが辛くて仕方なくて、でも、中盤で活躍したキーリには本当、頑張ったねって言いたい。
たくさん、つらいことに出会って来て、それは自分がつらいのと同じくらい、きっとつらくて、だから、ほっとする場所に辿り着けて良かった。
最後の最後に今までに立ち返るようなエピソードがあったのも良かった。ご褒美、みたいで。
3人はもう、昔のようではないけれど、でも、空気がとても優しくて。頑張ったね。改めて、特別じゃない中で懸命なキーリを愛しく感じつつ。

電撃文庫 / 2007.11.05.



壁井ユカコ

NO CALL NO LIFE / ★★★☆☆

高校生の擦り切れそうなぎりぎりで青春の恋愛小説。
壁井さん作品は、メインが恋愛、で、更に主人公の年齢が上がると途端に生々しくなってしまうのかもしれない。
キーリのストイックさが懐かしい。私にはあっちが合っている。
ずっと昔の日付で録音されていた留守番メッセージと、
その、今は使われていない番号の使われていた過去へと電話をかける、っていう
すこし不思議で軽くホラーでミステリアスな部分はとてもすき。
春川と有海のイマドキな恋愛じゃなくてそっちがメインだったら、多分、とてもすきだった。
有海の幼少期の記憶は取り戻したもののだからどうしたがなく、結局そのままで、ちょっと引っ掛かる。昔の段階でちゃんとしてたのかな。
憧れてた従兄弟の航兄そっちのけで進む展開もちょっとあれ?と思った。
そのお相手の日野ちゃんの、有海がそんなことないって自分を誤魔化せなくなってからのうざさは凄い。徹底的。
一気に転がる学校での殺傷事件のシーンは迫力があってとても良かった。
怪我とかの痛々しい描写が本当リアルで全然違うけどやっぱりキーリの人だあって実感した。
あとがきの、不思議留守番の元ネタなエピソードに笑った。歪んだ妄想素敵すぎっ!本当、紛れ込ませずに丸ごとそのお話なら、なぁ…

メディアワークス / 2008.08.31.



茅田砂胡

放浪の戦士 デルフィニア戦記1 / ★★★☆☆

刺客に追われる漂泊の戦士ウォルと、異世界からの迷子リィの出会いの物語。
折り返しのコメントの全てはここから始まった、にこれ1巻だよね、と不安になったりもしたのだけれど
これの前に、倒産した別の出版社で同一構成のシリーズを出してらしたらしい。
再開するに辺り新しい幕開けにした為上記のようなことになった模様。
新たな幕開けの言葉通り、新規の読者を置き去りにすることなく迎え入れてくれる構成にほっとした。
やがて獅子王、姫将軍と呼ばれることになるらしい2人のまだむき出しな個のらしさが素敵。
男の子だった筈なんだと言う、故にぼくっ子でおれっ子のリィは歪じゃなく真っ直ぐに可愛いし
ウォルとのコンビも凄く健全で爽やかで読んでいて心地好い。
人じゃないリィに対する恐怖心の描写と決着の着け方も重くなくかと言って軽すぎずで良かった。
この巻の締めになっている、中身は男勝りな令嬢シャーミアンの登場の仕方にとても痺れた。
理解した瞬間一瞬でたまらなく掴まれてしまった。
会話の多さはとてもラノベ的だけれど彼らのやり取りはひたすら軽快で楽しかった。
悪側の登場人物のしっかりとした把握は気持ち難しかったけれど
伯爵やら侯爵やらが沢山でややこしくなりそうなところをつらさを感じずに読めたのも良かった。

C★NOVELS Fantasia / 2010.03.18.



茅田砂胡

黄金の戦女神 デルフィニア戦記2 / ★★★☆☆

玉座奪回の為首都へ向けて旅をするウォルとリィ、山賊イヴンと合流してリィが黒主をゲットして
更に途中の城に火をつけてチャンチャンバラバラ、の巻。
確実に進んでいるのはわかるのだけれど、どうも印象に残りづらい巻だった。
整っているけれどだからこそ派手さが足りないような感じかもしれない。
物凄く長いシリーズみたいだし仕方ないのかなあ。
おれモードになると好戦的でどこか凶暴になるリィに違和感が相変わらずないのが素敵。
豹変、にへんに浮ついたり作者が振り回されたりしていないのはきっと凄いことだと思った。

C★NOVELS Fantasia / 2010.03.27.



茅田砂胡

白亜宮の陰影 デルフィニア戦記3 / ★★★☆☆

人質に取られた養父の奪還、更に戦、それから前巻から忍び寄っていた疑惑がついに、の巻。
ウォルの養父であるフェルナン伯爵の背に忍び寄った最後の一手のシーンの描写にゾッとした。
シンプルなのに丁度ページのラストなこともあって凄まじい。
緊張感が半端なくて一瞬間を置いて不謹慎にも感動してしまった。
戦のシーンは人が多すぎな上説明もすぎて少し勢いが落ちてしまった気がしたけれど
終盤のバルロのギリギリさと次巻でコーラル奪回編完結とのあとがきを受けて、ここで止めるのを考え直した。
ウォルがダークサイドに墜ちるのはあまりすきではないと感じているけれど
こういう展開でどう決着を着けるのかはやっぱり気になる。
たまに飛び出すリィの脅し染みた飾りっ気のない本気発言が相変わらず和んですき。

C★NOVELS Fantasia / 2010.04.07.



茅田砂胡

空漠の玉座 デルフィニア戦記4 / ★★★☆☆

ついに着いた王都コーラルで罠かもしれないとわかりつつ僅かな供と城へ赴き
そこで明かされる新たな真実、なコーラル奪回完結編。第一部ラストの巻である。
特にいまいちとも良いとも感じない無難な流れが続いていたこともあって、今巻終盤のエピローグ的な部分が凄くすきだった。
ナシアスと爺やが結託して嬉しそうにバルロに意地悪したり
ウォル他一部の物好きなひとたちがリィを引き止めるのに必死になったり、いきなり和やかになっちゃって笑った。
戦なら人が死ぬのは当たり前だろうし、殺さずっていうのは綺麗事になっちゃうんだろうけれど
敵を死なせることに躊躇せず、動揺せず、どころか
登場人物の心情としてではないのだけれど何処か作風的にそれらを誇っているようにも見えちゃう描写に、若干抵抗があったから
平和を取り戻した後のやり取りには、ほっとしてしまった。
見事すぎた女官長のカリンのお手柄も気持ち良かった。切れ者って感じで感服した。

C★NOVELS Fantasia / 2010.05.04.



香山リカ

眠れぬ森の美女たち / ★★★☆☆

タイトルだけじゃなくて目次にも、オーロラ姫を始めかぐや姫にジュリエットにティンカーベル…と並んで更に「眠れぬ」のおまけ付き。
童話とちょっと不健康な単語。精神科医さんの著書。そりゃ、惹かれるってばよ。
女の人の同居話。私は読んでてそれに魅力を感じないでもないけど、やっぱり怖い。
お家に人が来る、ってだけでもやたら苦手なのに一緒に住むだなんて。
主人公も元精神科医で「積極的無関心」が大事、っていうのに納得。分析も一歩下がっているからこそ。でもそれが私は苦手だ。
品定めされているような感じとか、望んでいる答えを、って態度だとか、苦手。
湖陶子さんはでも仕事から離れると途端気持ちの分析とか出来なくなる。んー…どっちもどっち。なんて、高望み。
私が勝手なことを言う人、と不快に感じるような人相手に、暖かい、可哀相にと慈悲で包む流れに
嬉しいんだか悲しいんだか、複雑になった。
更に、それも仕事柄から、癖で、と思ってはやるせなくなって。そんな風に考える自分、に呆れるやら情けないやら。
ジキルとルー・ザロメとジュリエットの話がすき。CDをイヤホンできいてて思わずはずして確かめる瞬間、の件がリアルで凄い。
あと、ケンカしてても食事ができたら休戦で、“ねぇ、粉チーズ取ってよ”、が可愛くて大すき。

河出書房新社 / 2006.04.14.



川上弘美

センセイの鞄 / ★★★☆☆

「先生」でも「せんせい」でもなく「センセイ」なのだと主人公の月子さんは言う。その拘りが可愛くて惹かれた。
浮かぶのは、小悪魔な学生さん。実際の月子さんは、37、だったけれど。
月子さんはセンセイと呼び、センセイはツキコさんと呼ぶ。カタカナが、妙に鮮やか。
更にセンセイは、妙に丁寧な言葉で話す。おじいちゃんだから。
女のくせに、とか言っちゃうけれど愛嬌のある人で2人の会話が本当に可愛かった。
ツキコさんの年とか忘れてファンタジーのようなイメージで和んだりした。
でもそうして油断していると、リアルがどかんっとやって来る。
恋愛、になってしまって、そしたらそれまでの美しさほのぼのさが一瞬で消えてしまった、気がした。それが、淋しくて切なかった。
小島孝はすきじゃないけれど、あれがまあ所謂普通でだからこそ、センセイとツキコさんには
俗に染まって欲しくなかった、なんて、2人には酷な話だけれど。
わざわざ会おう、っていうのじゃなくて飲み屋さんで、たまたま会って、一緒に飲んで、
馬鹿丁寧な口調とどこか子供っぽい口調でありふれた何てことない話をする、って繰り返し、が何か、すきだった。

平凡社 / 2007.03.21.



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