樹川さとみ

暁の王国 東方幻神異聞 / ★★★☆☆

ヒロイン至上主義、ヒーロー不在と仲間内で言われているらしい樹川さんには珍しい、ふたりの少年の物語。
本来女性として乱れた現世に遣わされる筈の幻神、綵姫は、何故か男子に宿って生まれた。
綵姫が宿る麟とその髄身となった直情型の千夜の旅の物語。
ヒロインはいないけれど(綵姫はそういう風に出張りはしない)、男くさいような雰囲気は皆無である。
千夜は結構男々したキャラクターであるのに野蛮な印象は受けないし、可愛い感じの麟は麟で性別の次元を越えたようなイメージがある。
魔や妖虫がわらわらと出て来たりそれらとバトルをしたりするのが新鮮だった。
特に首だらけの妖怪の迫力にはドキッとした。樹川さんってこういう方向でもいけるのか。
続き物と知らずに借りて、続きはいつもお世話になっている図書館にはないようだったのが残念。
麟と綵姫の目的とか、まだまだ謎を残したまま、というかまだ始まったばかりという雰囲気だから、もう少し先まで見守りたかった。

WINGS NOVELS / 2011.08.16.



樹川さとみ

穢土 / ★★★☆☆

絵の天才で繊細さの塊みたいな天野誠二が
がさつなルポライターの細田康にかつての恋人であり死んだ筈の川上美弥子は存在しないと告げられはじまるオカルト話。
美弥子の遺品の黒髑髏や怪死した占い師の壺をキィに、死んだ人が動いていたり
女神を呼ぶ為の巫女を奉って楽土を目指す奴らが絡んで来たりする。
シリアスモードの樹川さんだけど、少女小説やラノベの中のシリアス、ではない真正面からの真面目さが前半は良かった。
その時点ではどこに向かっているのかをいまいち飲み込めていなかったけれど
展開が気になるとかいう理屈じゃなく引き込まれるものがあって、期待した。
でも後半は細かく描写されなくて乗り切れない動きと、それが誰なのか的な部分の描写不足のせいで把握の追い付かないキャラが
ぽんぽん出て来るようになってしまったことなんかによって、よくわからないうちに終わってしまった。
私がこれまで知らなかった樹川さん、って雰囲気で掴みは良かっただけに残念だ。
ノリ始めると転がっちゃうタイプ、みたいな感じなのだろうか。後半でももっとわかり易く丁寧に書いて欲しかった。
元気な今時女子高生の麻奈やオネエ言葉のヤスヒロ、忍者の修行なアイザックに
ちょい役なのに明るくてやたら存在感があったソープのしょうこおねえさん等々
キャラクターがいちいち鮮やかなのは最後まで一貫して素敵だった。
盗聴中の警察を発狂寸前のパニックに陥らせそうになった細田とヤスヒロのBL茶番とかおかしすぎた。
元気そうだ樹川さん、なんて勝手に嬉しくなっちゃった。

EX NOVELS / 2010.09.29.



樹川さとみ

エネアドの3つの枝 それでもあなたに恋をする / ★★★☆☆

幼い頃ブスでデブでグズだと陰口を叩いた相手に復讐する為、屈辱をバネに美しく成長した領主の孫娘ミシアの物語。
グズはあってもブスにデブって中々少女小説にはない陰口ではないだろうか。実際にはそうじゃない、とかでもなかったようだし。
それでも陰気なところも嫌味もなく、素直に純粋なミシアが可愛くて良い。復讐相手であるアドルファに対してだけツンケンした思考になるところも可愛らしい。
別人のように礼儀正しく成長したアドルファはアドルファで最後の最後の吹っ切れた感、開き直り感が凄くて一気に好感度が上がってしまった。
なんだろうあの子供のような悪党王子。胸焼けしない甘さベタさが絶妙で素敵だった。
あとがきによると、曰く、うじゃじゃけたお話、らしい。
言葉の意味はわからなかったのだけれど、つまりはさっさとくっつけやと思うような、身悶えするような恥ずかしさを目指されたのだという。
王宮や領主や先の戦なんかの細々した事情も絡めつつ、ミシアの友人のララの根明っぷりや同じくミシアの友人で謎めいた治療師のシーリアの存在感が何より素敵だった。
樹川さんもののキャラクター小説的な面がわたしはやっぱりすきなのかも。
特にシーリアは楽魔のサラからおちゃらけ成分を抜き取ったようなクールキャラで訳ありっぽさや素直じゃない感じにとてもそそられた。
サブタイトルがついているように、同じ舞台で違う主人公の話が続くらしい。シーリアの話が読みたいです、先生!思わせぶりな描写からもついホイホイと気になってしまった。

コバルト文庫 / 2011.09.01.



樹川さとみ

366番目の夜 / ★★★☆☆

樹川さん、2冊目の本らしい。まだデビュー間もないのに素敵な完成度、とか偉そうなことを思いつつうっとりしてみる。
美人さんなのにお互いには憎まれ口ばかり叩いている金髪金目の麗しいディフリート、エルシーラ兄妹の物語。
行き倒れていたところをエルシーラに拾われて家庭教師となったマウリーノの視点を要所要所に入れ軸にして、兄妹の秘密に触れていく。
これぞ少女小説!という感じの本だと思った。
どこまでも浄化されるような澄み切った空気と花の香りを纏ったような華やかさに
世の女の子方が恋物語を支持して憧れる気持ちがわかるような気がした。凄まじく貴重である。
兄妹は勿論、彼らとは対照的に見るからに激しいウィラールのエルシーラへの一目惚れまで
メイン勢の誰もが純粋でそこにあざとさもわざとらしさもないのがとても良かった。お綺麗だけど嫌らしさがなくて、素直に委ねられる。
マウリーノのお相手であるシルヴィアーナのことが最後まで明かされず触れられずで終わってしまったことだけはちょっと残念だ。
描写があんまりふわふわしているものだから芸術方面の神様とかかとも思ったけれどよくわからなかった。
マウリーノが別作品では主役で、とかいうことなら納得なのだけれど。
ディフリートの気持ちの確認がないことにも少しモヤッとしてしまった。
読者や一部登場人物にはわかり易くても、お相手の方は、知っていたのだろうか…?

コバルト文庫 / 2011.07.22.



樹川さとみ

太陽の石 月の石 / ★★★☆☆

あとがき曰く、サスペンス調ホームドラマファンタジー、らしい。個人的には最初と最後の印象が強いかなと思う。あと一応ラブ。
黙っていれば美人さんで、世の殿方に憧れをこめて「憂い姫」とか呼ばれちゃうような見た目に対して
中身が詐欺なノーダゲッツの族長の娘ディアラが、婿探しの筈だったのに、用心棒として戦いながら連続猟奇殺人の犯人探しをする話。
闘うヒロインだけれど、それでも礼儀作法を完璧にマスターしたりと健気に頑張ったりしちゃう。
なのに報われない。すぐに地が出ちゃう。そこらの男じゃ敵わないし、むしろ畏怖の対象になっちゃう。
これもあとがきにあるように、男の子キャラといても色気皆無なヒロインだったけれど
でも用心棒として側にいるリリスと一緒のシーンはしっとりした口調のせいか個人的には色気もあるような気がした。
さすが百合くさいと言われる作家さんである。妙になんかドキッとする。
相手役と思われるのがギィなのが、最後まで少し不満だった。初ちゅーが最悪である。
世のコバルトなお嬢さん方は危ない男が好きなのかなあ…。
個人的には従者のウェイの方が誠実だしまともだし、
面白みがない、と切り捨てるようなタイプじゃなくしっかりしているしちゃんと強いしで、すきだった。
ついでにジェナーも親父殿とセットで可愛くてすきだった。女側が喧嘩っ早いのは遺伝なのかな、なんて思いつつ微笑ましかった。
登場人物がさり気に多くて、終盤は少し把握がし辛かったのが残念。
でも進行形で混乱する程ではなかったし基本的に本筋から置いてきぼりは食らわなかったから、楽しく読めた。

コバルト文庫 / 2011.03.12.



樹川さとみ

時の竜と水の指環(前編) / ★★★☆☆

亡き兄に代わって薬師の生業を引き継ぐ為に、男と偽って暮らしているアイリの話。
突然訪れた騎士に、ずっと出たことのなかったノーマ・カーの森から連れ出され、果ては王都まで連れて行かれる。
冒頭で魔術師に女性になりたいと告げてから、ラストでそこに辿り着くまでが前編である。
メインの真ん中部分は気弱なアイリが騎士ク・オルティスとすったもんだどたばたする話。
不運なヒロインも脳みそ筋肉なヒーローも嫌味がなくてむしろ微笑ましい。
アイリが男勝りじゃない分、男装していてもやたらか弱い少年という感じで可愛かった。
変にシリアスすぎず、かといって過剰なコメディもなく、極々静かな雰囲気が落ち着いていてすきだった。

コバルト文庫 / 2011.02.02.



樹川さとみ

時の竜と水の指環(後編) / ★★★☆☆

水の指環を使って三度だけ正体を知られずに女性に戻れることになったアイリ、その姿でいよいよク・オルティス様に会ったりするの巻。
前半でコメディ分が少し増えた気はしたけれど基本はしっとりで、クライマックスは派手にファンタジー的な流れ。
どれも過不足のない風なのが素敵だった。
話すと術が解けてしまうというのは人魚姫を連想する。
森と妖精は白雪姫っぽくて、ゆったりとした童話的な雰囲気がお話として切り離されることなく映えていたのが良かった。
年増と何だかんだで見限らない侍女のコンビが結構すき。
自分が女主人だったら何を言ってもマイペースな彼女には思い切り苛々するだろうけど(笑)、人事だと上手く出来ている感じで可愛い。
最後も、森にいるアイリがいちばん素朴に可愛く感じられてすきだと改めて思わされて良かった。
脚本のようとまではいかないけれど映像作品っぽい展開はちょっと小説っぽくなくて、何となく勿体ないような気もしたけれど、
昔の作品の方がシリアス面もすっきりとしていて分かり易くて、そういうストレスがなかったのも良かったと思う。
あとがきの、友人に常々「あんたの書く話はどこか百合くさい」と指摘されて来た、な話には笑った。
女難なアイリで失うものはなくなったらしい。それが後々書かれる楽園シリーズで大爆発したのね!と納得した。

コバルト文庫 / 2011.02.04.



樹川さとみ

ねじまき博士と迷い猫 / ★★★☆☆

少年博士のアレックスが引き取ることになったのは動物に育てられた野性児リーだった、なお話。
出て来るキャラが揃って子供っぽいというか、実際執事さんとか家政婦さんを除けばみんな若くて平均年齢が低くて
極め付けはカボチャ頭の機械人形の存在で、やたら可愛らしい、微笑ましい雰囲気の本だった。
それでいてあざとく感じさせずに、あくまで当たり前、自然体、なところが素敵だった。
博士がばかだったりひねてたり、リーが騒動を起こしながらも天真爛漫タイプじゃなかったりしつつ
その上で賑やかにコメディをしているところがすき。丸ごと楽しめた。
葬儀屋の、ぞくぞくするくらい強気、あれで女ならほっとかない、な発言に直前のアレックスの発言を見返して、物凄く納得してしまった。
男の子なアレックスは微笑ましいけれどあれで女の子だったら凄まじく魅力的だ。
葬儀屋とは趣味が合いそう、なんて思わず思ってしまった。
凍ったスープで問題ない博士とか、温めたら活きが良すぎたとか、雪のかき氷はお腹を壊すまでなおおらかオリビエとか、
ピアノカバーにくるまるリーとか樹川せんせのさり気ない描写や着目点が、やっぱりすきだ。

コバルト文庫 / 2010.07.14.



樹川さとみ

ねじまき博士と謎のゴースト / ★★★☆☆

16歳の天才少年博士アレックスと彼を生ぬるく見守っているたぶん12歳くらいのリーの騒動物語、第2弾。
登場人物紹介にある上記のリーの紹介文に物凄く納得してしまった。正に生ぬるい。いいな。
家庭教師と幽霊騒動、オペラとアレックスママ、オリビエのお見合いデート、漂流で遭難なアレックスとリー、の4本立て。
パパママエピソードがいやにリアルで完璧を目指したママのプレッシャーとかドキッとさせられた…。よくあるパターンなのだろうか。
1つ目のお話でリーに特殊な力があるって出して最後のお話でそれが爆発するのに打たれた。
どちらも派手じゃないけれど、最後のエピソードでの使い方にやられた。悔しいなあ、もう!素敵。
変人アレックスの不器用っぷりと、振り回しつつも庇護されるだけに収まらない
むしろお世話したりもするリーのでこぼこな対等さが、相変わらず微笑ましかった。

コバルト文庫 / 2010.07.20.



樹川さとみ

ねじまき博士とガラスの時計 / ★★★☆☆

ひねくれ博士と野性児少女の騒動物語、これにて完結…かな?多分。
ゴシップ記事に追われながら、素敵執事なロレンスの秘密とかカボチャ頭のジャックの生い立ちとか果てはリーの真相まで語られちゃう。
どれも実は、があるなんて思わずに極々素直に読んでいたものだからちょっとびっくりした。
おじいちゃん博士の方はわざわざ行方不明にするくらいだから、と思ってはいたものの
あまりにケロッと可愛く登場されたものだからこっちに関しては顔がふにゃふにゃになるような気持ちになった。
生き生きしすぎているよおじいちゃん。あっぱれだ。大すきだ。
これまでずっと凸凹家族すぎて色っぽさとは無縁だったのに最後の最後の博士にはドキッとしてしまった。
それまでとの良い意味でのギャップにキュンとした。凄く自然な変化が当たり前のように良い変化と感じられて、嬉しかった。

コバルト文庫 / 2010.08.07.



樹川さとみ

箱のなかの海 / ★★★☆☆

古いラジオから聞こえて来る不思議な物語全8編+1編の連作短編集。
模型おたくの雅之は風変わりな独身建築家のカズおじさんにラジオを貰う。
現実の、可愛らしいほのかな青春パートをのりしろに、基本的にメルヘンな物語が淡々と可愛らしく何となく微笑ましく語られる。
白梅の精が花を鈴に変えたり、砂漠を舞台に薬の石を探したり、
妖精は羽根をなくし、戦争の終わった国では敵だった人間の中で豆が語る。
珍しく現代調で日常のやましさと幸せを描いたり、影月祭りで影をなくした女の子だったり、
無神経な奴に苛々しながら穏やかになっちゃったり、役目を終えた船と置き去りの娘の物語だったり。
+カズおじさんの本業のお話。あまりにもマイペースで楽しそうな様子に嬉しくなった。
ラジオの謎は謎のままで全く触れられないのが少し残念なような、これで良いというような、複雑な感じだ。
特に好きだったのは豆の話。ちょっと前まで敵だった、に対して単純すぎるような気もしたけれど、豆の幸せさがすごく素敵だった。
挿絵を見るまで主人公を女の人と思っていたのは、多分口調に対する同著者の楽園〜シリーズのサラの影響。

コバルト文庫 / 2011.01.20.



樹川さとみ

ブラインド・エスケープ / ★★★☆☆

誘拐犯の少年と誘拐されたお嬢様のロマンティック逃避行。隠し味は走れメロス。
由貴の世間知らずな箱入りっぷりがおかしくて可愛くて良かった。いきなり聖エルモさまには笑った。
命を狙われまくる中、合間合間で彼女に振り回されている要も微笑ましい。
押し掛け協力者である盗聴オタクな立古白雪の力の抜けるキャラクターもいい味だった。
…名前に最初は騙された!なんだその可愛い名前!(笑)
人質に取られた土屋の、再会した時のあまりの状態にはゾッとしたし、阿呆なやり取りを挟みつつも変に間の抜けた雰囲気になりすぎず
基本はシリアスというか、真剣な気持ちで読めたのはバランスが良かったからかなと思う。
終盤の動きは把握が少し難しかったけれど無茶にも手錠を外してくれたスーツ男にはハッとさせられた。

富士見ミステリー文庫 / 2010.05.12.



樹川さとみ

予言の守護者 女神の刻印1 / ★★★☆☆

夢の中に繰り返し現れる自分と同じ顔で同じように成長していく少女を求める漂泊の女剣士シィンの話。
楽園の〜シリーズでもツボだった為、同著者の作品を選ぶ際にあまりに百合百合しい紹介だったこれをチョイスした。
案の定会いたい連呼等濃くはないのに妙にプッシュされているシィンとウィーアが微笑ましかった。
でもまだ会ってもいない2人故に
鷹を連れて謎な術を操るラダストールに振り回されるシィンのがさつさの方が印象深かったかも。可愛くてすき。
転生と、元は1つの魂の物語である。根底にあるのは月の女神の気まぐれと、太古の昔の娘と獣の物語。
伝説の獣であるイーグの像の描写に物凄く打たれた。何というか、理屈じゃなかった。荘厳で、清らかで、素敵。
拾われ子のシィンが琥珀石を手掛かりに自分の過去を探る、基本はシリアスめなシリーズのよう。
たまに入るおちゃらけた部分が可愛かったりしつつも、中々入り込むという感じになれずにいたから
読みながら、樹川せんせの真面目モードは私にはあまり合わないのかなあと思ったりしていたのだけれど、最後の最後で挽回してくれた。
殺されていく人たちと捕まったウィーアの迫力が半端なくて締め付けられて、不謹慎だけれど、嬉しかった。
まだ始まったばかりだし、続きでもっと化けてくれることを期待。

C★NOVELS Fantasia / 2010.05.29.



樹川さとみ

永遠の誓い 女神の刻印2 / ★★★☆☆

生まれ変わりふたつの別個の人間になってしまった2人と人間に生まれ変わった獣の物語、姉妹再会編完結の巻。
ウィーアを助ける為館に乗り込みチャンチャンバラバラなシィン、がメイン筋で
一方ではラダストールが呪術で戦っていたりしつつもあまり脇道には逸れずにまっしぐらだった。
故に入り込めないと単調で、私は上手く乗り切れず、残念な読後感だった。
シィンとウィーアの絆も、あざといというか、少し余計に感じられた。
百合的な雰囲気は個人的にすきな筈なのにこの巻の場合は無理矢理入れて来られたように思えて残念。
込み入ったシーンになると把握が難しくなったり前巻冒頭に続き巻末の伝承が雲を掴むような感じなのも健在。
特に伝承は上手いこと作者にシンクロ出来ればきっと綺麗な世界なのだろうと思うと、ちょっと淋しかった。

C★NOVELS Fantasia / 2010.06.08.



樹川さとみ

楽園の魔女たち〜賢者からの手紙〜 / ★★★☆☆

魔術師見習い募集の呼び掛けに集まった、冷静すぎてちょっとおかしい秀才のサラ、無邪気でお馬鹿なマリア、
高飛車王女様のダナティア、唯一常識人な美少年風のファリス、のかしましい修行の日々。
男性陣も、むきむきなのに暑苦しくないご飯係のナハトール、我らがお師匠様の鷹揚なエイザード、
構って欲しい小型犬みたいなアシャに何故か訛りまくっている部下さん、と個性的な方揃いで
シリーズ1巻目で初読でもキャラクターの把握に困ることが全くなくスラスラ読めたのが良かった。
苦労性なファリスがしっかり地に足の付いた描写でいちばんすきかな。
でもエピローグのあのシーンを踏まえたらサラもすきかも大事かも。
魔術は大仰には語られなくて、見習いっ子たちがさり気なくさり気なく手に入れているのも素敵。
まともな修行よりこれ何の意味があるのっていう課題に明け暮れたりしていて、けどその日常の生活感がすきだった。
4人が大暴れした初級試験も次から次へと無茶なクリアの仕方をしていく面々が良い。
新鮮味とかはなかったけれど、微笑ましくどたばたとコメディしている様は楽しめた。

コバルト文庫 / 2009.05.13.



樹川さとみ

楽園の魔女たち〜とんでもない宝物〜 / ★★★☆☆

表紙がサラで、中身もサラが異様に目立っていた第2巻。単純にもダントツでサラスキーになりそう。素敵だったあ。
夏の訪問者はサラの元同級生たちが手紙を届けに楽園へやって来る話。
ジンジャーマンクッキーの一団を操るマリアがらしくて可愛い。
サラを嘘つきと怒るダナティアも愛しい。直接問い質せないのがまたらしくて。
メインのサラは淡々と動じなくて淡々と謎な感じが良かった。何考えてんのかわかんなくてちょっと怖いっていうのも映えていた。
表題作は王子様の依頼で紛争を止める為マリアとサラが砦に、ファリスが軍に侵入する話。
置いていかれたダナティアの王子へのお説教が厳しくも真っ直ぐでカッコイイ。
マリアが捕虜になりつつもわんわん泣いて相手をたじたじにさせているのは微笑ましいし
ファリスが美少年発言を当然のように自分のことと捉えてカップを取り落としたのも可愛かった。
んでもってこっちのサラちゃんは凄まじかった。普段もすきだけど豹変にも痺れてしまった。
不敵に女の武器で迫って1巻に続きまたやらかしたらしい様とか迷いがなさすぎて何かもう神々しい。
エイザードを頷かせた方の依頼主の正体は別に不満とかないのに何故か何となく拍子抜けした。演出か構成のせい…?
それからあとがきの怪我ネタは読んでいて痛すぎた!うわあん気をつけてせんせー!

コバルト文庫 / 2009.06.01.



樹川さとみ

楽園の魔女たち〜七日間だけの恋人〜 / ★★★☆☆

第三弾である今巻はファリスの弟の代わりに島流しで婚約で偽者で所により薔薇風味なお話。
アルケイドに対しては普段からガラリと変わって厳しいファリスが新鮮で素敵。結局どっか詰めが甘いところと苦労性さはらしかった。
男色家なフレイ少佐のお芝居は鳥肌ものだったけれど(いい意味でなく)最終的には憎めない、むしろすきだあ、に落ち着いて嬉しかった。
わざとらしさがなければ良いキャラだ。ファリスとの友人で愛な様子がすきだった。
ふいに始まった提督とのやり取りも提督があまりに間抜けで可愛くて良かった。
ファリスとごくちゃんのやり取りも新鮮で和んだ。敵わないけれど手下って感じじゃない関係性が良い。
ファリス優位(?)って珍しいし何だかトキメキポイントだ。ごくちゃんも甘えてるっぽいのが可愛い。
それから後日譚の部下さんの、アシャに対する「捨て身でいってみるだか?あんましおススメしねえだよ」発言が凄くツボだった。
捨て身でいってしまえ支部長どん!とか思った私はいつの間にやら薔薇も結構有りになって来ているのかもしれないー

コバルト文庫 / 2009.06.26.



樹川さとみ

楽園の魔女たち〜銀砂のプリンセス〜 / ★★★☆☆

第4巻は負けず嫌いのダナティア姫のお話。砂漠で巨大砂ナマコで兄皇子と犬猿。
サラから殿下への百合ギャグ的な愛が素敵。
ベタかもしれないけどどこかさり気ないというか、厭味がなくて良い。サラ大すきです。
新キャラな殿方との絡みも2人分あった殿下は、物凄く健全な子な印象。だからバランスがいいのかもしれない。
けどラストでやらかしたヤトゥルはちょっとイヤ。確信犯とかイヤ!
大体殿下は姫君な訳だから死罪とかなってもいいと思う…。とか過激なことを結構真面目に思ってしまった…。
いい人っぽいのにちょっと複雑怪奇なリーン・イプスは結構すき。正しく命懸けな関係とかただれてなくて良かった。

コバルト文庫 / 2009.07.14.



樹川さとみ

楽園の魔女たち〜ドラゴンズ・ヘッド〜 / ★★★☆☆

またの名は外伝―すごいよ!!支部長どん―なシリーズ第5巻。
見習い魔女さんそれぞれにスポットが当たるって巻がマリアだけしれっとないのがちょっぴり不憫。
彼女は第1巻で家庭環境(?)とかやっちゃったからなあ…
そんな訳でいきなり支部長どんが主役にされてドラゴンにされてぬいぐるみにされる話。すごいよ!ってより、がんばれ!って感じかも。
声そのものは意外な程に男性的、だというエイちゃんが想像出来ない。まじか。
ついでにアシャのビジュアルもちょっと意外だった。もちょっとひょろっと細身なイメージだった。
漸く脱いだ、もとい背景がちょっぴり見えたお師匠さまも意外な感じ。
シリアスっぽくなると何だからしくないと思ってしまう。和やかにあほあほに暮らしてるみんながすきです。
相変わらず愛はあるけど何だか言いたい放題な部下さんたちが可愛くて優しくて良かった。大すき。
アシャの元婚約者なリィラ嬢も妙に魅力的で良かった。口が悪くて自分勝手で我儘でとことん強い。更に奔放。なのに何故か憎めない。
出番はさして多くないのにその鮮やかさと来たらっ。素敵っ。
サラとかダナティアまでアシャを気にしてあげているラストにはふわあとなった。優しい。…うるさいから、とかじゃないよね!
勿論エイちゃんも良い。何だかんだで仲良しなの良い。あれで愛されてる、な支部長どんに和んだ。

コバルト文庫 / 2009.07.25.



樹川さとみ

楽園の魔女たち〜この夜が明けるまで〜 / ★★★☆☆

久しぶりの楽魔女。軽くてくだらなくておかしくて、久々だからか余計に何だか癒された。
読みながらにやけちゃった。特にしれっとぶっ飛びっ放しだったサラに。大すきっ。
もしかしたら初?なマリアがメイン(…多分。きっと前半は。少なくとも表紙は)の今巻は呪いの壷と妖怪ヘビ女と霊感少女なお話。
マリアは家政婦さんとして騙され潜入。
感覚的に書かれたみたいなフワフワした描写で難しいとは無縁な感じなのに終盤は若干わかりにくかったりもしたけれど
ダナティアに愛をひたすら語り通しなサラをここまでな娘だっけ?一体何があったのか?とか思いつつも満喫した。
本気とも冗談ともつかない微妙な絶妙なスタンスが凄くすきだ。何気に全方向じゃなくてダナティア相手のみの仕様なのも素敵。
殿下は疲労が激しいかもだが、愛だよ、愛。

コバルト文庫 / 2009.11.18.



樹川さとみ

楽園の魔女たち〜スウィート・メモリーズ〜 / ★★★☆☆

全4話の短編集、…というよりは、超短編+中編、か?相変わらずサラがすき。
でも初期をあまり覚えていなくて豹変とは初対面みたいな気分になった。
前巻辺りで本格的にサラ&ダナティアに目覚めたものの、それまでは今じゃもう曖昧なんだよなあ…。
図書館本はこれが淋しい。いっそ再読したい。
聖霊の贈り物、は弟子たちの一切出ない、ふわふわとした番外編然としたお話。超短編その1。
酔い潰れた花嫁の父親と妖精さんとエイザードのあやふやで曖昧で不思議なちょっとした1シーン。
ごくちゃんのしあわせ日記、はごくちゃんについてのレポート的視点のお話。超短編その2。
サラの腹部をメスでひらいて〜な知的欲求にきゅん。…仕方ない。だってすきなんだ。
無邪気な聖母、はダナティアのお母さま楽園へ来たる、なお話。中編。この巻のメイン、な印象で1番すき。
ダナティアを気遣うサラとか、でも何か違う…ずれてる…とか、あとお師匠様に迫るダナティアにめろんと来た(笑)
有り得ないからこそ良い。有り得る方向なら多分ガッカリした、サラ派として…!
このコンビがやっぱりすきだああと実感してさり気なくじわじわ来てニヤけた。さり気なく、にさせる絶妙さが良い。
彼らの楽園、はじじい年に七人のじじい来たる、な運動会話。
久々登場な豹変サラ、よりそれを面白がるエイザードとか
別件で、憤慨してそうで面白がっているダナティアのことをわかって来たファリスに目がいった。
怒れば怒る程蒼白になるとか、そういうわかるまで時間のかかるダナティアがすきだ!

コバルト文庫 / 2009.12.15.



樹川さとみ

楽園の魔女たち〜大泥棒になる方法〜 / ★★★☆☆

ファリスと支部長どんと泥棒人情話。
愛馬で跳ね橋を飛び越えるとか博打とか、細かいところでファリスの素敵を満喫しつつ
でも彼女の魅力は他にメインがいてこそのそれかもしれないと思ったりした。
真面目な子がメインだとやっぱり派手にはいけない運命なのかな、って印象が、若干。
しっかり者な12歳のエリナがやたら可愛かった。あとはどうしても楽園サイドへ目が行ってしまった。
凄く少ないのだけれど、その分もなのかたまに出て来ると嬉しいのなんの。
相変わらずの無表情でマリアを泣かせる(語弊が…)サラとか意地のように彼女をフルネームでしか呼ばないダナティアにニヤけつつ、
サラのへっぽこ限界論と不憫な支部長どんにうぷぷと笑いつつ
サラが殿下との間に求める関係はそれか、そうかそうか、とか、おばあちゃんみたいな気持ちで頷きつつ、
…サラとダナティアのやり取りばかり異様にキラッキラして見えるのは私がそれが大すきだからだろうか?
ゲストキャラは何だかいつも、その巻のお話の本筋に関わる大事な位置にいてもどこまでも脇役って感じがしてしまう。
シリーズに限りがあると思えば尚更、楽園の娘さんたちのやり取りをもっと見ていたいと感じてしまった。

コバルト文庫 / 2009.12.17.



樹川さとみ

楽園の魔女たち〜課外授業のその後で〜 / ★★★☆☆

サラ、問題児だらけの男子校に教師として赴任するの巻。
単身乗り込みネタだから殿下との素敵漫才はなかったけれどでもやっぱりサラは素敵で
読み始めてさして経たないうちから小躍りしたい心境になったりした。どんだけ。
舞台が男子校なのが個人的にはアレだけれどかと言って女子校じゃなんか違うから良いのだ。
問題児たちのセクハラにも無表情で勝ち続けるサラが頼もしい。格好良い。
個人的に1番萌えたのはサラが博打で負けたら一枚ずつ脱ぐと宣言したシーンである。
もう何だか女捨ててると自分で思いつつ、でも無表情にそんなこと言えちゃって
絶対脱ぐようなことにはならないだろう、もしあってもサラにとって屈辱な形ではないだろう、っていう
しっかりとした確信が持てるところがたまらなくすき。
さり気にとんでもない〜から再登場したティルティスは、
とち狂ってプロポーズしかねないとか言いながらもいい感じの距離感を保っていたのが良かった。
個人的に、娘っ子たちには楽園にいる間はあんまり恋だの何だのして欲しくないんだ…。なんか淋しくて。だから嬉しかった。
問題児な生徒軍団もサラが上手く乗せたりするものだから段々可愛く見えて来たりしてこれまたほっとしたりした。
1巻丸ごとかけて見習い娘の内面に迫ったのはもしかしたら初じゃないかなとあやふやな記憶で思う。
シリアスモードは、エイザードの時は何だかいまいちに感じた気がするけれど今回は違和感も抵抗もなく入り込めた。
そこにひたすらスポットを当てるのじゃなくて、でも同時進行のメイン軸っぽく、だったのも多分良かった。
夢の中のちっちゃいみんなにほっこりしつつ、ちっちゃいアシャのへっぽこと叫ぶ様を想像して可愛すぎる!ときゅんとしたりした(笑)
にしても毎度、寒いダジャレを寒くなく披露するサラにはニヤけそうになって困る。
だが勿論それがいい。無表情パワー全開、心臓破りのダジャレ万歳っ!

コバルト文庫 / 2009.12.26.



樹川さとみ

楽園の魔女たち〜不思議の国の女王様〜 / ★★★☆☆

ちょっと趣向を変えてのエイザードとナハトールのお話。
クマのぬいぐるみにさらわれたヒロインは見習い娘たちの護衛をしていたナハさん、
天の邪鬼の意地っ張りなお師匠さまは助けに来てくれないから娘っ子たち、奮闘する、の巻。
女王様とお呼び、と言いつつ段々明らかになる内面はちいさな女の子でしかないフェメティと
いい男すぎると振られっ放しらしいナハさんのいい男っぷりが可愛かった。
あなたがお父さんならいいのに、によろめくナハさんもまた良し。
今回サラとダナティアは年長コンビって感じの賢さで終始安定していたからその分マリアとファリスの素直さが映えていたと思う。
特にファリスが何だか今回やたら素敵だった…!泣きながらとか、間抜けな感じだったりとかしながらも振るう剣が一流とか、もう。
サラの魔手がファリスにまで伸びているのには笑った。何故わざわざ髪を解かせたのかと…!
おかげでご令嬢に女と知っている上で迫られてしまったファリスの全力な拒絶っぷりが可愛くておかしくて笑った。
そうだよねえ、王子様を割り当てられたら困惑しちゃうタイプだよねえ、なんて。(そういう問題だけじゃない…?笑)
ナハトールの過去とかエイザードとの少年時代へも触れられたりして
何ていうか、楽園のうさん臭くない楽園さを改めて暖かく感じたりした。
永遠はない前提で、ずっとそのままであって欲しいと願ってないのだけど願いたくなった。

コバルト文庫 / 2009.12.27.



樹川さとみ

楽園の魔女たち〜薔薇の柩に眠れ〜 / ★★★☆☆

棺桶で送られて来たのはヘタレ系吸血鬼、さり気なーく薔薇も有?の巻。
コウモリさんを気に入っちゃったごくちゃんが可愛くって、さり気に今後への伏線ちっくなあかずの間への触れ方にちょっぴりドキッとした。
再びゲストさん出張るの巻だったから娘っ子たちは薄め。
師匠に冬の王様な仮装をさせたマリア、師匠の身長を越してしまったことを気にするファリス、
吸血鬼のストーカーと化すサラ、と満遍なくらしさは披露しているもののやっぱりちょっと物足りない。
協力はしないと言い切って1人だけ加わらずにいながら裏でいちばん世話を焼いているダナティアが微笑ましくて良かった。
ひょいと再登場したリーン・イプスも懐かしい。私は記憶力あんまり良くないし覚えているうちに再登場してくれると何か嬉しくなっちゃう。
終盤の記憶を取り戻す辺りの描写ではまた例によって把握が難しいことになっていた。…私の読解力がお粗末すぎるせいかなあ…。
最後が近付いて来ているのを妙に感じさせられる雰囲気が何だか漂っていた気がした。そこはかとなくではあったものの、淋しくなるう…。

コバルト文庫 / 2010.01.15.



樹川さとみ

楽園の魔女たち〜ハッピー・アイランド〜 / ★★★☆☆

不幸な探偵ルーファスくんと、やたら元気なそのおばあちゃまと
謎の手紙とサボテンと何がしたいのかサッパリないかがわしいドクター・カプラーの話。引き続きちょっと低迷気味。
表紙にダナティアだけいないことが不満だ…!…いないよね…?何故だ!少ない出番でなんか凄かったのに!
登場の仕方にとてもびっくりした。何てぶっ飛んだことをなさるの殿下!
死にたがりなデッカードさんとの攻防とか、短気起こして壁殴っちゃったりとかさり気に色々披露しているファリスにもドキドキした。きゃー。
マリアの行方不明な大好きな人とかお別れ会にならなくて良かったとかシリアス方面からの攻めも新鮮で良かった。
サラは、良くも悪くもいつも通りだったかな…結構痛かった、は結構すきだったけれど。
ゲスト組ではコンパニオンさんの調教師発言が良かった。突っ込みにシンクロは貴重。
投げっ放しネタが幾つかある気がしたのが残念。別にその中身が気になるとかじゃないのだけれど、でもやっぱりもやもやしちゃう。
美少女シルヴィアさんの正体にはさすがに途中で気付いたものの指輪の手はわからなすぎた。
ラストで加わるリーザレインはもっとわからない。1冊通しで見てもますます着いて行けない理解不能さに磨きが掛かっている印象。
頼むからもうちょっと説明して欲しい…。考えるな感じろ!と言われている気分だ。難しい…。

コバルト文庫 / 2010.01.20.



樹川さとみ

楽園の魔女たち〜星が落ちた日〜 / ★★★☆☆

虹の谷に隕石が落ちて、魔術師の塔も崩れ落ち、楽園、崩壊。
いつになくシリアスで、展開も大きくて、懐かしい人たちがやたら再登場しつつも
頑張る娘っ子たちがしっかり出張っていてそのそれぞれのらしさを堪能した。
半裸で登場してまで必死に伝えた言葉を全然真面目に取って貰えないエイザードに笑い、怒っちゃったファリスの本気の剣に痺れ、
それを賭けの対象にしたりみんなで脱げば怖くないでアイコンタクトしたり(若干一方的)
間接ちゅーだとじゃれたり(語弊が)な、ダナティアとサラにニヤけ
何よりどうして殿下みたいにしゃんと出来ないんだろうと泣きながら思うマリアに打たれた。
健気でいじましくて、眼が熱くて開けていられないのシーンとか引き込む力が半端なかった。
落ちて来た星も、エイザードの罪も、よくわからなかったけれど
もうガキじゃないなナハトールは勿論、いつも通りな支部長どんにぐっと来た。
お師匠様、すっごい愛されてるよ、って、今更だし、分かり切っていたことだけど、改めてじんわりきた。
落としどころとしてのごくちゃんもたまらない。
ちゅーは個人的にはファリスに一番ドキッとした。さらりとしてのけたら多分一番洒落にならない光景になる…。
いや美少年風だからとかでなく、なんか、なんかっ。何だろうこれ。マリア風に言うならきっと、ひょええええっ。

コバルト文庫 / 2010.01.30.



樹川さとみ

楽園の魔女たち〜まちがいだらけの一週間〜 / ★★★☆☆

新天地編、始動。
あまりの動きように纏めやら畳みやらに入っている…?と感じたりもしていたけれど
舞台を変えて、エイザードから離れて、でもいい意味で今まで通り逞しくも賑やかに生きている面々に嬉しくなった。
高級住宅街に魔術師の塔を構え、お客様を待ち、家出娘を抱え、正義の味方をしたりする。
エピソードは細かく色々あったけれどその一つ一つがさり気なく生きていて良かった。
新しい場所であーだこーだ言いながら協力し合っている娘っ子たちが素敵。
庶民みたいにしていてもやっぱり身分は皇女なダナティアの、ちゃんと結婚はすると言い切って自分の未来から逃げない姿勢と
サラの初お披露目な人格のセスくんを通して匂わされた、一生結婚しないつもり、の対比にドキッとした。
だからサラは殿下に惹かれてて、憧れとか、あるんだろうな、と思う。殿下は本当強い。
鈍いとか無神経に傾かない、いい意味でのそれが眩しくて同時に危なっかしいにはならないもののひんやりとした、
諦観っていうと言葉が悪いけれど、…何だろう、上手く言えないけれど、似た感じのものも感じたりした。それ込みでとにかく良かった。
平気なんじゃなくて、でも無理をしているのでもなくて、真っ直ぐな一本線さというか。
サラに春が来たと無邪気にきゃーきゃー喜ぶマリアとか正義感の塊でまたキレちゃったファリスとか
いつも通りはいつも通りなのに、ダナティアは勿論他の3人にもどこか成長というか重ねた年月が見えるような気がして、感慨深かった。
シリーズ物のこういう緩やかな変化っていいな。

コバルト文庫 / 2010.01.31.



樹川さとみ

楽園の魔女たち〜月と太陽のパラソル(前編)〜 / ★★★☆☆

シリーズ初の前後編は最近旦那様の存在を思い出させる描写の多かったマリアがメイン。
お姑さんの危篤の報を受けて館へ向かい、騙されたと知り、海賊さんやら女戦士さんやらと愛を探す旅に出る。
頑丈で前向きで能天気な普段の明るさと無邪気でお子様だけれど根っこの部分は妙にどこまでもひとり、を感じさせるシリアス面が
どっちも無理なく、嘘じゃなく在る様がすき。
何度も出て来るエイザードへの手紙もほのぼのだけれど何だかさみしくなっちゃう。
前巻のサラのエピソードでは結婚やら恋愛やらにはマリアが多分いちばん大人だと思わせられたりしたけれど
物凄く自然に受け入れていることに、遠さを感じさせないのも、良かった。読んでいてちゃんとマリアに寄り添えた。
ひたすら王道に見えて、ジェイルさまが中々現れなかったりな予想外がさらっとあるのも侮れない。
ファリスは押し付けられて王子様のお守り、サラは砂ナマコ事件の時の砂漠へ、
ダナティアはお留守番で相変わらずの勘の良さっぽいものを覗かせつつラストでユーマに呼び出され仕事を命じられる。
崩壊以来しおしおしていて引っ込みがちな我らが師匠も後編ではメイン入りかな?そろそろ掬い上げてあげて欲しいところだ。

コバルト文庫 / 2010.02.28.



樹川さとみ

楽園の魔女たち〜月と太陽のパラソル(後編)〜 / ★★★☆☆

ペンギンさんと戯れつつひたすら進む海の旅、月蝕で繋がる世界と人ならざる者たち、の巻。
1度に色々ありすぎて、更にお師匠さまの過去ネタは大事なのはわかるものの
個人的にいまいち入れなかったりするから、前半は凪な印象が強かった。
エイザードの過去はメイン級のエピソードの癖に引っ張りすぎの小出しすぎだと思う。逆に勿体ない。
そこにちょっかいを出すことの多いダナティアは作中にもあるけれど本当貧乏くじだと思う。意味がちょっと違うか。
何だか正にお守役って感じだ。ダナティアがピンとかメイン級でお仕事するの、もっと見たいなあ。
調停者とか、世界の構想的なものが、相変わらず把握しづらかった。エイザードのシリアスモードに入るといつもそこに困る。
一方で、後半は次々合流する楽園の面々とかジェイルさま返せ!なマリアとかで盛り上がって良かった。
後者なんてさり気にゾクゾク来たりもした。素敵だ。ファリスとマリアのすっかり一人前、な描写に何だか嬉しくなったりもした。
でも顔を黙って殴られるファリスには女の子に何てことを…!とかなり本気で思った…
カッコイイのにどこまでも困った柴犬なところには和むけれどもでも!
終盤はマリアルート最終回☆な雰囲気が半端ない。幸せお裾分け気分をこれでもかと味わわせてくれる。
マリアは絶対幸せになれるの信頼をこれでもかという程感じさせる子だと思う。素敵だ。
マリアの髪を結ってあげる殿下に感慨深い気分になった。
ひとりだけ騙さないファリスとか大すきだっ。きれいだよ、にはドッカンと来た。恐ろしい子!
個人的にマリアの声がメゾソプラノで殿下の声がソプラノ、なことを意外に感じつつ(逆かと)
やたらしつこい親切が凄まじい金銀の斧の女神さまが、さり気にツボでした(笑)

コバルト文庫 / 2010.03.02.



樹川さとみ

楽園の魔女たち〜天使のふりこ〜 / ★★★☆☆

時間軸がバラバラで、物によっては結構昔が舞台だったりする中短編集。
表題作はさり気に正義のパトロールをしていたダナティアと永久機関な時計と詐欺師のお話。
何だか久しぶりな気のするサラの殿下ラヴな発言にのほほんとした。
時計を前に、無表情なのに異常に嬉しそう(具体的には手つきが)なサラにも和みまくった。可愛いなあ。
しっぽの音楽会、は犬とコンサートな話。
クロさんが異様すぎる。アシャが断トツで不憫すぎる。どうしてそうなったと小一時間問いたい。
別に嫌いとかではないけれど、樹川せんせ、疲れてらしたのかなあとかつい。舞台が魔術師の塔なのが懐かしかった。
ごくちゃんの小旅行、は家出して男の子を助けたごくちゃんの話。
色んなことをすぐ忘れてそれ故にやたら平和なごくちゃんは意外と出来る子だった。わお。
騎士と卵、は半分くらいを占める新米騎士なアシャ18歳の子守話。
無茶苦茶言語を操るちびっ子幼女と何だかんだで仲良くなるアシャが可愛い。
ぶち切れちゃったアシャにもさり気にグッと来るものがあった。基本はお呑気を貫いてくれているからこその素敵さだった。

コバルト文庫 / 2010.04.03.



樹川さとみ

楽園の魔女たち〜ミストルテインの矢〜 / ★★★☆☆

楽園メンバーをモデルに書かれたでっちあげ小説たちとそれが原因の災難&さり気に国の危機、の巻。
初っ端から飛ばしまくりなサラ×ダナティア百合小説にのっくあうとされた。そのままひたすらどんちゃん騒ぎな今巻。いい勢いだった。
ちょこっとだけ出て来たサラの兄貴が素敵すぎるっ…誰かと思えば…!
ところでジュゴンは左側なんでしょうか。表記があれだけど違うよね、多分。なんて。
というかジュゴンて結局何だったんだろう…?人としたらあまりの扱いだから追求するのはやめよう…。
今回はBサラは勿論新たなサラの人格も結構なメインで出て来たのが新鮮だったりしつつ
(素のサラがすきだから出張られるとちょっぴり残念なのだけれど)
前巻に続き登場した支部長どんサイドのオルランドとレティシアにびっくりした。続けて読めて記憶も鮮やかでナイスタイミングだ。
でっちあげ小説の兄弟は賑やかだし、お嬢さんな騎士隊は姦しく、原住民な皆さんの純朴さは可愛すぎた。
総合して、やたら元気になれそうな巻だった。
オチがいまいちよくわからなかったのが若干残念だけれどお師匠様の曰くちょっと復活、な様子がひたすら嬉しい。
気になるのはサラがずっと引っ込んでいた理由だけれどあれは次回に続く、なのだろうか…?
確か次のエピソードはついにのラストだった筈。…淋しくなるなあ…。

コバルト文庫 / 2010.04.03.



樹川さとみ

楽園の魔女たち〜楽園の食卓(前編)〜 / ★★★☆☆

ついに始まる戦の匂いと、その中心へ向かい指揮を取らざるを得ないダナティアとその影響を受ける楽園メンバーの話。
シリーズ最終章である。もう、おわりの雰囲気がバリバリで淋しすぎて悲しすぎてつらい。
でも最後まで阿呆なやり取りがありつつぐいぐい迫る進行には凄く掴まれた。
前半はダナティアの兄の婚約者奪還でのファリスのナチュラル王子っぷりとか彼女へのダナティアの指示とかファリスの鈍感さとか
一生懸命頑張る再登場のフレイ少佐とかサラの愛のハゲ云々とか、相変わらずいちいちニヤけた。
フレイを無意識に警戒しているらしいファリスに何だかきゅうっとなったり
聖獣やらガーガちゃんやらすっかり人外の強い者と仲の良い無邪気っ子と化したマリアに和んだりしつつ
過去を思い出しつつな一方でいつになく真面目モードのサラとか、
彼女にやたらダナティアとのシチュエーションが多かったりしたところにああ狙われていると思いつつも思い切り狙撃されたり、した。
厳しかったり静かに激しかったりしながらも自らをコントロールし尽くす様に呑気に惚れ惚れしたりする一方で
これまでのことがあるから、自分から離れてもその意思に関係なくどうしようもなくみんなを巻き込んでしまうダナティアが、悲しい。
楽園は本当に楽園で、ゆりかごみたいだった。
そこにずっと浸かるのはやっぱりどこか違ってて、でも離れたらこんなにひとりにならなきゃいけないんだって
きつい環境でダナティアが凛としていればしている程、浮き彫りになるようで。
サラの言葉はだからこそ出たものなのかなって、思う。曲がりなりにも最年長、予期していたのかなって。
…にしてもそろそろ自他共に認めるになるんじゃなかろうかとか思うくらいサラとダナティアのコンビが大すきすぎる私、
表紙を見た瞬間思い切りニヤけそうになったのは当然かもしれない。

コバルト文庫 / 2010.04.28.



樹川さとみ

楽園の魔女たち〜楽園の食卓(中編)〜 / ★★★☆☆

大すきなひとたちが戦う事態を止める為、ファリスとマリアとフレイがひたすら頑張る話。
いよいよシリアス染みて来て、頑張って頑張ってでもどうにもならなかったファリスに泣きたくなった。
意地を張っているとかじゃなく本当にどうしようもなく引き返せないダナティアは突き進み続けるしかなく
それを真正面から受けるはめになったマリアの、素朴な言葉が胸を打つ。
何がいけなかったとかじゃなくみんなつらいのが、凄くつらい。
一方でひとり残ったサラは謎の行動に勤しんだりしている。タコとか訳がわからない…。
意味があることはわかるのだけれど、一体何をしているの…?
相変わらずの虹の谷で相変わらずにへっぽこと叫ぶアシャがとても胸に迫った。変わらないって、平和って、いいなって泣きそう。
さり気に推されているファリスとフレイの恋愛模様には珍しくもうっかりドキドキしたりしちゃった。
さり気なくさり気なく、でも確実に届く描写が多くて、つらいんだけど、満たされた。
表紙は前編と対のようなファリスとマリアのコンビ。見つめ合っても怪しさゼロの微笑ましくて優しい絵。大すき。

コバルト文庫 / 2010.04.28.



樹川さとみ

楽園の魔女たち〜楽園の食卓(後編)〜 / ★★★☆☆

本当に本当の、最終巻、である。
今回の前中後編はずっとずっと淋しかったのだけども、正直なところこの巻の中盤辺りは少し失速したように感じてしまった。
エイザードの過去&罪&調停者&異界ネタにどうも入り込めないのは最終巻まで健在だったよう。…残念。
とはいえ、ハッピーエンドを疑う余地もなく信じて、あとがきで約束されていたのがそれに拍車を掛けていたにも関わらず
やっぱり今まで通りは難しいと思っていたからごくちゃんを追っかけ回す殿下にはぽかんとしてしまった。
結果として、最終的にはそりゃ今まで通りではなくなったけれど
今は離れていても、とか、普段は離れていても、を物凄く感じられたのが嬉しい。
あっちでこっちでと命を狙われ続けるダナティアにつらくなって
後で判明した彼女のあまりの覚悟にマリアと一緒に何てことをーっと叫びたくなって
前編の負傷に続き今度は単身乗り込んで捕まったりしたサラに怒ってるよ怒ってるよと思いつつ無茶してってつらくなって
はじめてしっかりと真正面から描かれた過去の曖昧でクラクラしているのに誤魔化しのない直球な雰囲気に、のまれた。
ミストルテインの時点でもうかなり思い出していたのかな。それで瞑想後人格交代…?
シンプルで、靄がかかって、でもどストレートで、別離とその後の変化に凄くきゅうってなった。
シリアス展開が続いていたからアディくんのコンサートの落差にはかなりやられた。
一気に緊張も何もかも崩れる破壊力。半端ない。ああもうそれでこそ!って気分。
…一瞬サラか?!とか疑ったのは内緒。ごめんアディくん忘れてたんだ。
瀕死なナハトールをあっさり放置したサラにもああ楽魔だああ!と嬉しくなった。
大事なシーンでひいいとか思っちゃうファリスとかね!へっぽこ通貨も大すき!
元気で前向きで逞しくてつよくてよわくてな娘さんたちが、大すきだった。
男性陣のおちゃらけた雰囲気も、作品そのものみたいな虹の谷のひとたちも。
自分のことは自分でするしかなくて、誰も肩代わりなんか出来なくて、だけど支えて貰うことは出来るってスタンスも眩しかった。
すごくしあわせなシリーズだった。…終わっちゃったの、やっぱり淋しいなあ。

コバルト文庫 / 2010.02.29.



脚本:君塚良一、ノベライズ:丹後達臣

踊る大捜査線 / ★★★☆☆

今更ながら個人的ブームが来てしまった踊るの、連ドラ版のノベライズである。
シリーズとして知っているつもりでいたけれど、基本映画版のみしか見たことがなかったようで
最初から最後まで新鮮な気持ちで読めた。
ああこれはあれだって画が浮かんだのはストーカー事件の囮とお見合いでの振袖回し蹴りのみ。後者のすみれさんが大すき!
元々ノベライズ版にはあまり良い印象を持っていなかったのだけれどこれはちゃんと一小説として楽しめた。
ドラマの1時間というのは活字にすると結構短いらしく、淡々とした風でもあったけれど
シンプルすぎるくらい無駄のない作りには、読み易さも相俟って飽きさせずに次々と頁を捲らされた。
新人刑事の青島俊作が湾岸署に来たところから始まる、現場の、下っ端な刑事たちの話である。
青島くんとすみれさんのやり取りがカットされたのかそもそもこんなものだったのかあまり多くなかったのは、ちょっと淋しかったけれど
1話1話語り手が変わるのが意外でさり気なく自分をいい男的に描写する青島に笑ったり
室井さんがあまりに不器用ですごく人間で微笑ましかったりした。
すみれさんの印象が若干薄い気がしたのはすみれさん役の深っちゃんの存在感が凄すぎたからかもしれない。
台詞も飾り気がなくて、それが逆にどこか独特だったりもして
あれがあんな風に鮮やかなキャラクターになると思うと改めて役者さんって凄いなあと感じた。
室井さんと青島のやり取りにはいちいちやたら腐的ポイントなんじゃないかと思わされたりしてびっくりした。
青島→雪乃さんとか、青島→すみれさんとか、すみれさん→青島とかな心理描写にも
曖昧なりにそのものズバリで書かれると何だか意外というか、びっくりしたりしたけれど
ラストエピソードが室井、青島メインだったこともあってフラグを全部持って行かれたような気がした。
青島が元営業マンな経験を活かして企業に潜入するエピソードが素敵。大胆で、過去が無駄になってなくて。
青島に手錠をかけた回のすみれさんの若さが妙に新鮮だったり、
室井さんについて、あんまり寂しそうだからバスケットに誘ってやろうかとも思ったりしたとか言うすみれさんが
おかしいやらたまげたやらだったり、
すみれさんは最初青島さん呼びで、青島くん呼びになるのにきっかけなしですか!が意外だったりもしつつ、地味に何か、良かった。
最終話で青島に犯人を穏やかに託す和久さんが物凄く素敵だった。踊るは和久さん在ってこそだと物凄く感じた。

扶桑社 / 2010.07.13.



ポール・ギャリコ

七つの人形の恋物語 / ★★★☆☆

ミュージカルを見て興味を持って、原作も読んでみた。
少女、と言いつつムーシュが22歳なことがちょっと違和感。22ってまだ少女と言える歳だろうか?
だったら、嬉しいのだけれど、でもやっぱり変な感じ。
少女と言いつつ、無垢だと言いつつも、ムーシュの人柄に無理がないのが好印象だった。
基本は美女と野獣的な、荒ぶる男とそれを掬い上げる女の物語だけれど
キャプテン・コックの多重人格を具現化している人形たちが微笑ましくて、やさしい色合いになっている。訳もとても読み易かった。

王国社 / 2008.10.15.



銀色夏生

夕方らせん / ★★★☆☆

曖昧にあやふやに和やかに綴られる全16篇の超短編集。
全体の印象としては瑞々しくて、でも派手な動きのある物語じゃないからいつの間にか擦り抜けてしまったように感じた。
けどそういう淡い雰囲気の中でも私にも少しはしっぽを掴めた気がした、残った作品が幾つかあった。
小夜鳥姉妹、は小夜子姉さんと鳥子とじいの話。たまに突然忍者になって遊ぶ、じいとの2人の秘密が微笑ましくて可愛い。
草むらの中 星がでて、は3人兄弟と縁談の話。兄弟それぞれの個性としょうもないやり取りに和んだ。
ピース・ツリーは二重人格の彼と彼の裏の人格に振り回される彼女の話。
ベタかもしれないけれど展開があんまりで、でもまあ幸せなのかなあ、な終わり方が何とも言えない良さだった。
船のしっぽ、は船上で会ったキャルとロイとロイの彼女のリズの話。
小さくても女の子でおませでレディなキャルと、しっかり対等扱いするロイが良かった。
ハーバービュー、は父親のいないシリルと、パパかもしれない人に会うわよと言うママの話。
いつもならどうしようもない人って思いそうなママがでも憎めなくて、2人切りでも濁りのない姉妹みたいな母娘にしんみりほんわりした。
若草のつむじ、は独特な距離感のトウタとサリの話。
これも波まかせで良いとは言えなそうな親子になるのにそれがしっかりしあわせに見えるところが素敵だと思った。
彼らはあれが幸せで、それでいいって素直に思えた。
真空広場、は沈黙の真空と、やっぱり独特な距離感の名穂子と人見さんの話。
2人の会話が何だか良かった。自由さも含めて下品にならないのが不思議で素敵。
夏の午後、はトマトとオリーブオイルでパスタを作って、それから旅行と大の字の下の地球を考える話。
それだけだけれど、過不足なくキラキラした描写にとても惹かれた。

新潮社 / 2009.09.24.



草野たき

猫の名前 / ★★★★☆

普通でイマドキな中3の佳苗の誰かと一緒にいないと不安だった、な日々。
この年頃の女の子が主人公の話によくあるテーマだと思うけれど、私の知っているそういうお話とはちょっと毛色が違ったというか
独特って訳じゃないのに何だかあまりないタイプのお話に感じた。
不登校ネタが入っているのは知っていた。
だから冒頭では何となく家族と繋がっていない風な佳苗にむしろ彼女が馴染めない方の子だと思った。
ベランダからお隣りの紗枝子さんちの屋根に飛び移って、紗枝子さんの部屋に遊びに行く、っていうのにときめいた。
でも読み進めてみれば佳苗はどっか不安定に感じられるのにしっかり普通で
仲良しの絵理とじゃれたり紗枝子さんに付き添ってもらって夜遊びしたり、イマドキだ。
お母さんと同い年なのに猫のぬいぐるみを集めて、佳苗を子供みたいに独り占めしようとする紗枝子さんに
自分は便利だから利用していただけだと思ったりする所なんかは中々に黒い。
自殺未遂をした不登校の女の子へのお見舞いを脅迫されて強要されて更に件の春名が癖のある子だった時には
自分は関係ないのにって燻る。お見舞いとかそんなのってダサい、と思う。でも小心者だから通ってしまう。
前半は特に読んでいて苦かった。
でも佳苗が、自分で自分をコントロール出来なくなって、紗枝子さんとも絵理とも仲直りが上手く出来なかったり
自分に復讐したいと言う春名にその理由を聞いたりとかの辺りからは少しずつ馴染んで来て
一筋縄でいかないお話だけれどなんか嫌いじゃないかもって、思うようになっていた。
出て来る人みんながどこか駄目で、しょーもなくて
だけどそれを殊更甘やかしたり厳しくしたりする訳でなく淡々と書かれているのが、多分何か、良かった。

講談社 / 2009.03.12.



倉田英之

R.O.D / ★★★☆☆

とにかく本がすきな、読書マニアな、愛書狂(ビブリオマニア)な、読子(ヨミコ、と読む)さんが主人公。
一応、恐れ多くも本好きを自負しちゃってる自分、読むしかないでしょう!と手に取った。
筋金入りの読子さんには全然敵わないけれど、敵ったら敵ったで問題有り、ってことで
まず、ページをめくると漂ってくるかぐわしいインクの香り、だの、純白の紙は文字たちが美しくワルツを踊るステージ、だの
冒頭の一連の文章にのっけからめろめろになった。共鳴。
一店買い、とか羨ましすぎる。同じ本を何冊も、な心理はわからないけれど。
読子さんもそうだけれど、さすがにねねね、って名前はぶっ飛びすぎているかなぁ…。イラストもちょっと媚びすぎな気がする。
でも最初から最後まで読みやすかったし、内容にしても文章にしても色々と甘い部分はあったけれどとりあえずは許せる範囲。
2巻も読んでみたいかな、と思わせるものだった。

集英社スーパーダッシュ文庫 / 2007.03.29.



倉田英之

R.O.D 第二巻 / ★★★☆☆

本好き小説第二巻。相変わらず最初から最後まで本まみれな内容に陶酔。
地上四〇階、地下六階の本屋さんだなんてもう。夢。住みたい。
前巻に引き続きぽんぽん読めて、でっかい本屋さんでダイ・ハード、私は映画は知らないけれど楽しめました。
ところで、ナルニアってあのナルニア?

集英社スーパーダッシュ文庫 / 2007.04.13.



倉田英之

R.O.D 第三巻 / ★★★☆☆

表紙のウェンディさんがカワイイ第三巻。ねねねもすきだけど。読子さんのビジュアルは残念ながらあまり好みではない(聞いてない)。
ウェンディ初登場なウェンディ篇、続いてねねね篇、読子篇、+プロローグ&エピローグという、つまりは短編集。
探偵ごっこなウェンディ、サイン会なねねねと来て、面白くなくはないけれどそろそろ引き際かなと思っていたら、読子篇で、やってくれた。
読子、ロビンソンクルーソーになるの巻、な訳だけれど
さり気なくドニーとの過去バナとか続くエピローグではラスト、次回いよいよ!な引き。…まだおさらばは出来ないようだ。
今回、数あるおまぬけシーンの中でも読子の特殊な、そういう、本(…?)への対応が淡泊で可愛かった。カッコイイよ読子!

集英社スーパーダッシュ文庫 / 2007.05.10.



倉田英之

R.O.D 第四巻 / ★★★☆☆

3巻では少し落ちている印象だったけれど4巻では名誉挽回してくれた。
前半は特にぐいぐい引き込まれて、ヘイ・オン・ワイにもわくわく。本の町。本だらけの町。住みたい…。
私はどうにも無知故に、どこまでが実在ネタでどこからがフィクションなのか毎回いまいち判断出来ないのだけれど
あとがきで、ヘイ・オン・ワイと大英図書館、大英博物館は実在すると知って
大英のふたつはフィクションだと思っていたから特にびっくりした。
ストーリーに絡むエピソードのどこまでが本当なんだろうと考えると、きらきらでくらくらな目眩すら覚える。何か素敵。
舞台は英国、中国の読仙社やら不敵なファウストさんも登場して勢い付いて来た感じ。
それにしても、連蓮のラストシーンは痛かった…
軽そうに見えてそういう描写が結構ざくざくと痛々しいのが、この作品のスパイスなのかな。
アニメ版はそんなに興味ないけれど、CD版なら借りてきいてみたいかもな今日この頃。

集英社スーパーダッシュ文庫 / 2007.06.04.



ゲーテ

ファウスト 第一部 / ★★★★☆

有名な外国文学…シェイクスピアとか、を、ちゃんと読んでみたくて、けど戯曲って難しそうで手を出せずにいたのだけど
これは大きさもそこそこだし、思い切って挑戦してみた。まともに読むのは初の戯曲。
長台詞は想像しにくいけれど、その代わりやたら舞台上のお芝居として照明の暗さとか声の感じとかが浮かんで新鮮だった。
ある程度進んで、特にグレートヘンの登場後は掛け合いぽくなって、一気に読みやすくなる。
きちんと理解することは1回読んだくらいじゃ私には難しかったけれど、でも註とか解説に助けられて、ちんぷんかんぷんは免れた。
昔の女の子像なのか、グレートヘンにオペラ座の怪人のクリスティーヌをちょっと連想したり
雰囲気的に、美女と野獣とかノートルダムの鐘が浮かんだりした。
思ったより読めた…かも。不思議な面白さがあって、何か良かったです。

ワイド版 岩波文庫 / 2006.06.09.



ゲーテ

ファウスト 第二部 / ★★★☆☆

完結編。長かった…。
何日かおサボリな日があったことを除いても、やたら時間がかかった。
基本的に雲を掴むような描写が多くて、なかなか飲み込めない。第一部より更に難しかった。
集中力が続かなくて、1日に読めるページ数も少なかったりして。でもその分入れた時は物凄く嬉しい。
ラストの、第一部のグレートヘンに通じるようなファウストの最期が印象的だった。
広くて、優しくて。柄にもなく全部委ねたくなった。許しがあんなに魅力的だなんて。メフィスト−フェレスは、何だか淋しかったけれど。。
咀嚼に時間のかかる、1度読んだくらいじゃとても足りない難しさがあった。でも全部が新鮮で、読み切れて良かったと思う。
…第二部にも解説があったら良かった、何て第一部より更に、解説の有り難みをひしひしと感じました;

ワイド版 岩波文庫 / 2006.06.21.



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