松本侑子

海と川の恋文 / ★★★☆☆

大学の演劇部の話っぽいと興味を持ったものの
最後に残ったものは芝居、としているように見えて最終的な本当は恋愛が一番な話だった。
大学に入学して誘われるままに芝居に触れてそこからスカウトされて女優になる遥香の話。
始めから芝居がすきだった訳ではなく段々とという課程があって、スカウトって形があったから
恋愛がまずあることは、期待とは違ったけれどそこまで嫌じゃなかった。
先に恋があったから芸能界でのデビューを控えて無理矢理に別れさせられる展開には同情も出来たし
その原因になった、遥香に片思いをしていた修平にはかなり反発した気持ちになったりもした。
でも遥香はデビューして、子供を堕ろして、病気して、命の恩人だから拒めないと修平と結婚をして、
その癖友人が亡くなったことを利用して徳明と再熱する。
結局修平とも徳明とも別れることになるけれど、別れの時に自分と徳明を織り姫と彦星に喩えたり、結ばれない運命だったとか語り出す。
挙句の果てには徳明と奥さんの子を、徳明の子ならと自分の子のように扱う。子供の方も何故かいきなり懐く。有り得ないと思った。
不倫を一途と崇めて最終的に奥さんにまであなたには敵わないと背中を押させてどうする。
周りのせいの別れでも、結婚するなり新しい恋人を作るなりしたならもう自分の決断でしょう。
文体がしっかりしているから一瞬気付かないけれど、堕ろす以降は薄っぺらい携帯小説のようだ。
遥香が18歳の頃はまだ可愛げもあった。
恋を知りたてみたいな生々しさも淡々としていたからそこまで嫌悪感を引き摺らずに済んだし
無駄にそういう描写が入るなあとは思っていたけれど、それがその年頃の当たり前なのかなと思わないこともなかった。
でも後半になるにつれて、フラフラしたところもその結果を一途とか最終的に周りが褒めるところも気持ち悪くなった。
著者は翻訳家でもあるらしい。はじめはそれも納得のどこか脚本染みた客観的で淡々とした描写に若干違和感があったりした。
でも読み進めるうちに慣れて、むしろ変に熱の籠らない雰囲気のおかげで苦にならない風にも思えて来た。
なのに最後の最後に思い切り主人公に甘々なべったりした物語で落ち着くなんて思ってもみなかった。
客観的もどこかへ飛んでいっちゃった。
冒頭の遥香の描写には、未来のスターって雰囲気が強調されていて、つらいようなキラキラなような不思議な魅力を感じたのになあ。

角川書店 / 2010.10.31.



三浦しをん

天国旅行 / ★★★☆☆

心中をテーマにした短編集。著者の名前は知っていたけれど読むのははじめてだった。
とても読み易かったし、テーマがテーマであるのに変に湿った雰囲気がなくて、自然体な空気が心地好かった。
自殺する為に樹海に入った中年男と謎の青年の「森の奥」、あのとき死んでおけばよかった、が口癖の奥さんへのおじいさんの遺言な「遺言」、
不思議なお客さんがやって来たのだと民族学の調査に来た学生さんに奥さんが語る「初盆の客」、
子供の頃から江戸時代の夢を見て、それがもうひとつの生になっている女の「君は夜」、
片思いをしていた先輩が学校で焼身自殺をして、彼の彼女だったクラスメイトと共にその理由を暴く女子高生の「炎」、
急死した彼女の幽霊と同居することになった大学生の「星くずドライブ」、子供の頃に一家心中で生き残ってしまった男の「SINK」の7本立て。
遺言の長い間共にあって当たり前になった愛の在り様と、SINKの新しい可能性の泣きたいような希望が、すきだった。
特に後者は余韻で痺れるみたいになって、久しぶりに当たり作家さんを引き当てた感で嬉しくもなった。
4つ星までは突き抜けなかったけれど、同著者の別の本も読んでみようと思うには充分な本だった。

新潮社 / 2011.09.25.



三雲岳斗

少女ノイズ / ★★★☆☆

病的なくらいの正義感の持ち主と彼女のお世話係に任命された大学院のバイト講師のお話。
高須賀克志と斎宮瞑の出会いとスカの曖昧な記憶の真相のCrumbling Sky、
アガサ・クリスティと色彩連続殺人鬼と毎回一部が切断された死体の四番目の色が散る前に、
自殺未遂の経験があって、今は自殺志願者じゃないけれど真似事はする矛盾なFallen Angel Falls、
幽霊を刺してしまったストーカー被害者と足のない犯人のあなたを見ている、
スカが容疑者になって更には殺されかける静かな密室、の全5話。1話完結タイプのミステリー。
両親を離婚させないように優等生で頑張っている、だから塾にいる時は死体のように休んでいる瞑がしっくり来なかった。
自分の希望だけで両親を繋ごうとすることも、それで疲れちゃうこともベタだけれど理解出来ない。
自分がその状況を経験しているから、その上でそうはならなかったから
実際にそういう健気な子だっているかもしれないのに何だか薄っぺらく上っ面のように感じてしまう。
瞑がいつもしているプラグを繋いでいないごついヘッドフォンって小道具もいまいち活かせていないように感じた。
瞑のバックボーンもそれも、物語と上手く繋がっていないように思える。
スカの殺人現場の写真を撮ることに対する執着は読んでいてちゃんと馴染めたのだけれど。
メインの推理劇と瞑とスカのやり取りは安定していて良かった。同性愛が当たり前みたいに平然と書かれているのもちょっと新鮮。
ただ、ショタコンは行き過ぎだと思う。一気に気持ち悪くなってしまった。
スカに瞑のお世話係りのバイトを紹介した梨夏さんがミステリアスで颯爽と助けに来たシーンもかっこよくて素敵だった。

光文社 / 2009.06.03.



水月郁見

護樹騎士団物語 螺旋の騎士よ起て! / ★★★☆☆

近代史学者が露天商から偶然手に入れたノートに書かれていた、事実とも物語ともつかない少年の話。
独白か、あるいは記録か日記に近いものだというけれど、物語として素直に受け入れられる文章ですんなり入れて良かった。
父親と生き別れたことから始まる、貧しい巡礼の子供の振り回されっぱなしの冒険。
神出鬼没でけど説明はしてくれない喋る猫に助けられながら
本来なら公子じゃないと動かせないようになっている筈のロボットみたいな守護騎に乗ったりして
鍵を探す黒い鎧たちと戦わざるを得ない方へ追い込まれるリジューの必死さが痛々しい。でもその分終盤は腹が立った。
商人が売れるものを高く売るのは道理だろう。いきなり何を言い出すんだ。
いや、言ってることはこれまでの暮らしを考えたら理解出来なくもないかもしれないんだけど、でも何か、違和感。
それまで散々関係ないのにって言いながらもやって来たのに
自分は関係ないとかいきなり思い切り主張を始めて逃げ出すのも、そんな子だったの、っていう勝手なガッカリが押し寄せる。
更にはそこで終わっちゃうもんだから後味が悪いったらない。続き物だと思って読んでなかったしガクリと来た。
でも終盤があれだっただけでそれまでは楽しめたと思う。終盤のあれも次巻で挽回するのだと思うし。
ずっと領主の城が舞台だったからか、ばたばた人が死ぬ重さの割に小さな冒険って雰囲気で
全体的にそんなに詰まってはいない風なのにそれと感じさせないのが不思議だった。
入り易いファンタジーさと過剰でも軽くもない生き死にの描写が好ましい。
ガンダム+ラピュタ、みたいな話だけれど、それに影響受けました!みたいな浮ついた雰囲気がなくて安定していたのも良かった。
著者紹介が妙に自信過剰でやたら鬱陶しいのが残念。

TOKUMA NOVELS Edge / 2009.05.28.



水月郁見

護樹騎士団物語U アーマンディー・サッシェの熱風 / ★★★☆☆

著者紹介はやっぱり著者の言葉なのかと思い変わらない自信過剰さに鬱陶しくなり
本編は本編で主人公の前巻終盤のノリでますます鬱陶しくなっている様に困った第2巻。……。
でもリジューも今巻散々逃げ回った結果としてまあ結局そこで腹括るのかよっていう薄っぺらさではあったけれど
どうにか決意してくれたみたいだし、次巻はもうちょっと大丈夫だといいなと願う。今巻は多分山場だった。
リジューの青いっていうよりガキ臭い正義感が、実際12歳だから全然、本当に仕方ないんだけどでもとにかく全開で
自分は見捨てて逃げる癖にそういうの棚に上げて偉そうに説教するような心境でいるのが、とても癇に障った。
拒否する権利はあっていいと思うけれどリジューは生意気すぎて同情出来ない。
当時の僕は、とか現在の僕は、とか手記の書き手であるリジューが登場するようになってしまったのも残念だった。
形式が形式だから必然かもしれないけれど
個人的には書き手が出て来ると台詞として書かれた台詞をどうしてもわざとらしく感じてしまうし
元々苦手な地の文の「…」は更にやたら寒くなってしまう。
効果音は物凄く間抜けになった。これまでは何故かバンバン出て来る割に気にならなかったから本当に残念。
何度も出て来るフィトゥとトゥールの悲鳴がやたらお綺麗なのも軽くて嫌だった。もっと悲惨な筈じゃないのか。
それでも文章は易しくも勢いがあって好感を持っていたのだけれど
最後の3分の1は何故か物凄く入り辛くて、私の問題かなあと思いつつもしんどかった。
オゾンの再登場でグッと上昇して持ち直してくれてほっとした。それで何とか星2つは免れた。

TOKUMA NOVELS Edge / 2009.06.07.



水月郁見

護樹騎士団物語V 騎士団への道 / ★★★☆☆

図書館にあるのはこの巻がラストだけれど、このシリーズはもっといっぱい続いているらしい。展開が遅いのはそのせいか。
描写は詰まっているから読んでいてそうは感じないけれど始まりから大して経っていないとか結構愕然とする。
トゥールとフィトゥとか、助ける助ける言ってるけどあれからどれだけ経ってるんだよって凄い思ったし。
だから諦める、とかにするのは勿論違うけれど。
今回は終盤でやっとシリーズタイトルに触れた。でも上記理由の為ここまでだ。
ほぼ戦闘だらけで、拘りをもって書かれたことは感じるものの単調な印象が拭えなかった。
私にバトル云々への興味がないこともあるだろうけれど、理屈っぽいのに文体は軽いからどっちつかずで熱くなれない。
うわあ系の内容のない台詞と擬音には冷めさせられる。
貴族連中より自分の方がマシだと思ったり、でも相変わらず切りのいい所で逃げるつもりで残る気は全くなかったり
目の前で知人がさらわれれば助けに行くって燃えるけれどその後はさっさとサヨナラする気でいたり
んなこと言って、その場は良くても、リジューがいなくなったら近いうちに結局どっかに落とされるんじゃないんですか、っていう。
自害しようとしたトゥールに対して正気って言葉を多用するのも何となく嫌だった。正気だからそうしたいんじゃないの?
いや、そうしたいっていうのが正常じゃないと言われればその通りかもしれないけどでもさ…!
細かく書き込まれているのにいまいち入り込めないお話だった。

TOKUMA NOVELS Edge / 2009.06.22.



光原百合

銀の犬 / ★★★★☆

こう見えて、物凄く西洋ファンタジーな本である。
タイトルも表紙も特別主張してはいないけれど(特に表紙は、私的には長野まゆみさん的ファンタジーのイメージ)
日本人作家の本では珍しい(…と思う)、西の善き魔女シリーズとか
外国人作家の作品ならあとがきにも出て来る指輪物語、あと最近読んだ妖精王の月、を連想するようなファンタジー。
ケルト民話に触発されて生まれた物語、らしい。…気になるな、ケルト民話。
声を失った楽人(バルド)のオシアンと、相棒の生意気ちびっこブランのお話。
基本は童話のような、ファンタジー独特の雰囲気を漂わせつつ、さり気なく可愛くて間抜けな会話を挟みつつ、凄く純粋。
今さっき読み終わったからか、三つの星、がどうにも濃く残ってる。
いきなり一番怖いことじゃなくて、楽しいことから、思い出してみれば?ってブランの台詞が印象的。
縛られていて、行くべきところに行けずにいる魂を、ほどいてあげる二人。優しさが凄く自然で純粋で良かった。
続編はもう出ているのかな。結構新しいみたいだしまだかな。読みたいな。気になる。

角川春樹事務所 / 2006.12.23.



光原百合

最後の願い / ★★★★☆

主人公をくるくると変えて、神出鬼没に関わって来る度会と共に彼らが身近に起こった、
あるいは今現在(も)抱えているミステリを解明してゆくのを描き
一方で、メインストーリーとして、劇団φ(ファイ)の旗揚げ公演に至るまでを描く。
キィになる度会が本当に自信家な男で、猫被りで腹黒で皮肉屋ででもどうしようもなく魅力的で、参った。完全にノックアウトだ。
物語の中の自信家はちゃんと自信過剰ではなかったりするから尚更。
度会は、役者で演出でリーダー。
それからお調子者の癖に深い目が特徴の相方・風見。各エピソードで知り合う原作者や女優さんやスタッフたち。
三人称の形を取りつつ度々乱入する突っ込みモノローグは可愛いし軽快なテンポを生み出していて、とても良かった。
どのキャラクターもすごく、チャーミング、なんて言葉が似合いそうな好印象な方々で
ちいさな劇団が少しずつ固められてゆく様はワクワクした。芝居に生きる人間ってやっぱりカッコイイな。

光文社 / 2007.12.15.



光原百合

十八の夏 / ★★★☆☆

花をモチーフにした4編の連作。
どれも読み終えてみるととても王道に思えるのに読んでいる最中はやたら魅力的で
特に浪人生の信也と妖精ちっくでスケッチ好きな紅美子の表題作と
周りに悲劇の絶えない史香と元担任の浩介のイノセント・デイズがすき。
不倫だの義理の兄妹の恋だのと胸焼けしそうな小道具に溢れているけれど全く汚くなくて、清々しくて良かった。
兄貴の純情の勘違い馬鹿なおにいちゃんも可愛かった。芝居好き、な所にも妙に惹かれてしまったりして。

双葉社 / 2007.07.19.



光原百合

遠い約束 / ★★★☆☆

浪速大学文学部に入学して憧れのミステリ研究会に入った吉野桜子の出会った、幾つかの不思議とその解明。
表題作は3部作になっていて、間に3つのエピソード。
桜子の一人称で進む物語は推理物とはいえおどろおどろしいものではなく
不思議はむしろ微笑ましいタイプのもので、桜子の等身大さもあって少女小説、って雰囲気。
三者三様な先輩たちの中では堕天使こと若尾先輩がすきだった。冷たい美貌でどこまでもつれない所が涼しげで良い。
お話の中では「無理」な事件―関ミス連始末記がすきかな。
自称シノブ様のナイトとしてばたばた落ち着かず活躍してる筋肉担当アホ担当の黒田先輩が良かった。

創元推理文庫 / 2008.08.18.



光原百合

星月夜の夢がたり / ★★★☆☆

光原さんの文章に、鯰江光二さんの挿絵。
絵本のような、というよりは画集とか詩集とかの方がニュアンス的にイメージに合っている気がする。
たくさんの幻想的な絵と32編のちいさなちいさなお話たち。何だかとても夢のある本に思えた。
ファンタジックなものから和風ホラー、幻想的なもの、それから昔話のその後の話。
「春ガ キタ」は季節の訪れの桜前線の笑い声がとても可愛く、「塀の向こう」は童謡的ホラーな隣の女が悍ましくも美しい。
「ぬらりひょんのひみつ」は女の子の作文な語りが微笑ましく、「いつもの二人」は作家さんのうやむやになった現実な日常に和む。
「遥かな約束」は蛾とマツヨイグサの果たしたそれが透明で綺麗で、「萩の原幻想」も同系統の待っていた彼女が淋しい。どっちも切ない。
「かぐや姫の憂い」は綺麗で透き通ったその後がやっぱり淋しくて、「エンゲージリング」は自立したヒロインがカッコイイし清々しい。
「隠れんぼ」の子供の頃の唯一の友達の正体にきゅんとなって、「天馬の涙」は神話の女神が清らかに澄み通って染み透る。
「大岡裁き」は親のない子と子のない親がしんみり来るし、「天の羽衣捕遺」は天女が小悪魔ちっくな女の子しててカワイイ。
「目覚めの時」のパステル画の中のやさしいスナックにときめいて、
「遥か彼方、星の生まれるところ」の僕と彼女の美しすぎる再会で綺麗に幕を綴じた。
…気に入った作品を羅列してみた。軽く読めるしどれもキラキラしていて観賞用みたいにしても素敵かもと思った。

文藝春秋 / 2007.12.05.



皆川博子

倒立する塔の殺人 / ★★★☆☆

ファンタジーっぽさを連想するどこか幻想的な表紙とタイトルの字体に惹かれた第一印象とは打って変わって
戦時中の日本を生きる女学生の当たり前さがつらかった。
普段なら苦手だからこの手の本は読まない。日常として語られるとリアルさに目を瞑りたくなる。
とはいっても時代背景がそうなだけで、メインはミッションスクールで回し書かれている小説に隠された謎の解明である。
小説は彼女らの通う学校がモデルになっているし、みんなして一人称形式で語るから、読んでいて度々混乱した。
ややこしい話だけれど、その分更にミステリアスになっていると思う。
その時代、女学校では憧れている上級生をお姉様と呼び
お姉様の方からも妹と認められる関係をsisterのイニシャルを取ってSと呼ぶ、らしい。Sの語源てそうなんだ。
というか実際にあった制度なんだっ!?と驚いた。リアルリリアンだ。
作中たくさん出て来る絵画とか小説とか歌が情緒があって素敵。残念ながらわかるのは物凄く一部だったけれど。
幻想的だけれど重くって、きらびやかだけれど暗さの拭えない、でもしっかり同居しているお話だった。

ミステリーYA! / 2009.03.21.



宮木あや子

雨の塔 / ★★★☆☆

現代を舞台にしているのにどこまでもファンタジーな印象を受ける、岬の、陸の孤島のような塔の寮に隔離された女の子たちの物語。
現金のいらない(遠くのパパママ持ち)お店とか、ラプンツェルの塔とか、煙草、カフェのケーキ、グミベア、手作りオムレツ、
冷凍物なのに何故かどこかお洒落に感じられるお部屋ごはんに、段ボールに無造作に詰められて届く普段使いの難しそうな服とか
外国の新聞、と小道具とその描写が凶悪なまでに素敵。
舞台は女子大の寮だけれど学校は殆ど出て来なくて、授業なんか出なくてもお金で当たり前に卒業出来ちゃって
食べ物はやたらたくさん出て来るけれど生活感のない、前半の明るくて甘くて幻想的な雰囲気が凄くすきだった。
それぞれの事情で島流しにあった彼女たちはダウンタウンで無計画なショッピングをしたりしながら
ゆらゆらと幻みたいに、でも普通の女の子みたいに、過ごす。
少年みたいな物凄い短髪、マネキンみたいなおかっぱ、舶来のお人形みたいな奴隷、腰を越える黒髪ロングの主、と
登場するのは眩暈がしそうなくらいファンタジーな女の子4人なのに、甘さはどこか控え目。甘い煙草とかがあるなら多分そんな感じ。
閉じ切った世界で外の情報を与えられずに過ごす女の子たちの話、って言ったらとても好みっぽいけれど
後半の百合が私にはあまり馴染まなかった。
越えてしまうとせっかくの崇高だった繊細さが消えちゃう、とどうにも思えてしまう。
この本の場合元々そういう部分が魅力ではなかったけれど
でも同じことを繰り返しそうになる矢咲を見せられれば尚更それまでのファンタジーな甘さが崩れてしまったと感じた。
確かにそれで崩れた部分もあったから敢えてかもしれないけれど
私にとってのこの本の魅力は薄っぺらくても読み込めてなくてもいいから、表面だけの、甘い軽やかさだった。

集英社 / 2009.05.09.



宮木あや子

太陽の庭 / ★★★☆☆

日本地図に載っていない、一夫多妻制の永代院に住む、神と崇められる由継と戸籍のない人たちの話。
雨の塔と同じ世界で、岬の学校も一部の章では舞台になる。
妙になまめかしい描写も出て来るけれど、生々しい癖に根っこがファンタジーだからか嫌悪感は薄かった。
由継と、彼の妾で最愛の人だった織絵に似た幼い息子である駒也、の組み合わせとか居心地は悪くなったけれど
別世界を描き切ってくれているからかそういうものとして異様な設定の説得力にすら変わってしまった感じ。
堅苦しくないけれど変に柔らかくもない、入り易いけれど徹底した世界の描写が絶妙ですきだ。
駒也や和琴の章は男の子特有の独特さで直接的な描かれ方になっていたから
個人的には岬の学校が舞台になる葵の章に少し救われる思いがした。
やっぱり女の子目線の物語の方が綺麗で良い。岬の学校の様子が懐かしくて嬉しかった。
気付かなければ、見ないふりをすれば楽園、っていう甘さがたまらない。毒々しさも。
ずっと上流階級の人しか知らなかった永代院が後半ではマスコミに晒される。
ネットの書き込みの様子があまりにも場違いで笑った。著者さんはこの世界ではお澄まししているのにこういうのも書けるのか。
延々と続く出口のなさがロマンだったから、終わり方は不完全燃焼的で少し不満だ。
現実から地続きでいて異様で異質な世界は浸かり込んでずっと見ていたくなるものだった。
ここまで徹底した上で置いてきぼりにならないって、相性も多分にあるのだろうけれど、貴重な気がする。
永代院は東京にあるし、外には普通の現代の人たちがいて、岬の学校は人身売買と言われる。
だけど西の家は時間の進み方がとてもゆっくりだし、そこには長く長く生きている女がいて、
神は人を殺さないから偶然のように奇跡も起こる。
ファンタジーでありながら現代調が入って来て、それでいて壊れない世界がすきだった。

集英社 / 2011.04.06.



宮沢賢治

銀河鉄道の夜 / ★★★☆☆

2011年06月06日、再読。
ひたすらに綺麗であり、真っ暗な穴を覗くようでもある、難解なお話。
覚えている限り、はじめてまともに全編を知ったのは桑島法子さんの朗読夜でのことだ。この本もそこで購入した。
タイタニックをモデルにしたと思われる氷山にぶつかった船の話が
当事者からリアルに語られるエピソードであるせいかやたらと胸に迫って痛い。
双子のお星さまを語るたあちゃんが可愛くて微笑ましく大すき。ちょっとした会話だけなのだけれど、1番すきなシーンだ。
ジョバンニの、不意に臍を曲げたりする難しい子っぷりと周りの幸いを願う純真と自己犠牲の精神が、アンバランスで面白いと思う。
わざとらしさがなく当たり前のように描かれる多感さが興味深かった。

星の手帖社 / 2002.08.25.



宮部みゆき

ICO 霧の城 / ★★★☆☆

プレステ2のソフトを元に作られたノベライズ作品。
ゲームは評判もいいし地味に気になっていたのだけれど
基本がパズルゲーム的な、プレイヤーの想像に任せる部分が多い作品だってことで躊躇し続けて早数年。
ならば小説版を、と今回やっと読んだ。長かった。とにかく長かった。
第一章の舞台であるトクサの村は霧の城の幻想的なイメージに対して凄く素朴で意外だった。
トトの冒険とか村長の誤解、城の崩れる様子、の辺りの描写は鮮やかで入りやすくて良かった。
城の内部の描写も、ゲームが元なだけあってRPG的で面白い。
でも、中弛みって程ではないけれどいまいち、ちょっと、盛り上がりに欠ける印象。特に第三章のヨルダの過去話は長すぎて疲れた。

講談社 / 2007.05.27.



宮部みゆき

ブレイブ・ストーリー 上 / ★★★★☆

やたら分厚いから大変かなと思っていたけれど意外にもかなり読みやすくてサクサク進んだ。
映画版では大幅カットだった、ワタルが幻界に行くまでの現世での描写だけでまず第一部が終わる。それだけでこの本の半分くらい。
普通に考えたら何をもたもたしているんだ、って感じだけれど、この第一部が、上巻では一番面白かったというか引き込まれた。
ルウ伯父さんとか、父さんが母さんと別れて結婚したいと考えている女の人とか
いちいち、引っ張り込んでくれてでもやたら悲劇っぽくなっているとか、苦いとか、そういうものではない。
無駄に鬱々とした雰囲気を売りに攻めてはこなかったから、単純に、目が回るような展開、として良かった。
逆に、ワタルが幻界に行ってからの描写はエピソードが細かく細かく区切られていていまいち乗り切れなかった。
一見個性豊かっぽいキャラクターたちも、現世の人々に比べたらかなり薄いと思う。下巻で化けてくれたらいいな。

角川書店 / 2007.06.03.



宮部みゆき

ブレイブ・ストーリー 下 / ★★★★☆

3分の2くらいは、可もなく不可もなくで進んだけれど、皇都ソレブリアの崩壊からラストまではぐいぐい引き込まれた。
ワタルに、入り込むことはあまり出来なかった。どうしてもミツルやオンバの方に寄ってしまう。
それでも、カッツは素敵だった。最後の最後まで格好良くて強くて泣きたくなった。
真っ直ぐすぎる正義がどこかお子様向けのお綺麗な理想論に思えることもあったけれど、でも鳥肌も、何度も立った。
捕えられた2羽の小鳥を逃がしてあげるシーンが綺麗で綺麗で
カッツとロンメルさんも、歯痒かったり切なかったりしつつもそれぞれのラストがとてもらしくて、良かった。
悲しいことは、尽きないと言い切ってしまう潔さに打たれた。

角川書店 / 2007.06.21.



村山由佳

すべての雲は銀の… / ★★★☆☆

彼女の浮気相手は実の兄だった、な大学3年生の大和祐介が、言ってしまえば田舎に逃げて来てそこで癒される話。
変な押し付けがましさも、身体を使っていっぱい働くことを良しとする妙な鬱陶しさもなかったのが良かった。
祐介が東京で身に付けた色々をいちいち砕くおやっさんたち、なエピソードは何度か挟まれていたけれど、そこまで圧力は感じなかった。
祐介は、宿舎に住み込みで畑仕事的なことを頑張ったりしながら色んな人たちと関わっていく訳だけれど
自給自足な感じに変に執着することなく、人との繋がりがあっさりと紡がれていく。
身近なネタである筈の小学5年生の桜ちゃんの登校拒否エピソードより
花屋になりたい花綾ちゃんのパパである寅彦さんの分からず屋さに反発したり慄いたり忙しかったのが、自分で少し意外だった。
花綾ちゃんの時折挟まれる女の子〜って感じの口調は少し苦手だったりもしたのだけれど。あれは恋のせいか。
桜ちゃんのエピソードに対しては、いつか治って平気になって馴染めるなら確かに休憩は優しさだ、と思ったりした。
そうでない場合もあるって話。
終盤はいきなりちょっと直接的になったりしたけれど、生々しさはさほど感じなくて殆ど抵抗なく読み進められたからほっとした。
未亡人である瞳子さんの悪戯好きの子供みたいな、その癖慢性的な淋しがり屋な魅力が凄く自然で、
ゆっくりと近しくなる、というとニュアンスが少し違う風になる気がするのだけれど
そういう部分も、読み手をいつの間にか祐介とシンクロさせるというか、引き込んでいて良かったと思う。
瞳子さんの息子のちびっこ健太が地味に可愛かったのも和んだ。総合して、とにかくひたすら自然、なところが魅力的な本だった。

講談社 / 2010.05.19.



村山由佳

天使の卵 エンジェルス・エッグ / ★★★☆☆

途中で間を空けてしまったからかもしれないけれど、
4分の3くらいはとても勢いに乗って読めたのにその後からラストまでは置いてきぼりだった。
この作品で小説すばる新人賞を取って、超本格女流作家として注目されたとか、期対の新鋭だとか紹介されているけれど…わからない。
確かに前半の読み易さとか引き込む力はかなりのものだったけれど
文章が簡単だからだけじゃないと言い切ることの出来る太さはないし、ラストは鍵盤で指が転びまくったような突っ走りっぷり。
着いて行けなかった。終わり良ければ、の逆バージョンな印象。もうちょっと丁寧に終わらせられなかったのかなぁ。。

集英社 / 2007.08.27.



村山由佳

天使の梯子 / ★★★★☆

綺麗なタイトルの本には気をつけろ、って、いつからか思っていた。
昔の私、綺麗でメルヘンで優しいタイトルの本だと合わなかった時の失望も大きかったらしい。
これは映画のCMを見ていたから何となくチャレンジ。
実は映画化してる卵の方のつもりで借りた。続編って気付いたのは帰って来てからだった。
だから、慎くんは市原隼人、だっけ?のイメージになって、夏姫さんはこにたんのイメージになってしまって
ええと、卵のメインは春妃さんと歩太くん、で良いの、かなぁ?
よくわからないけれど…でも、良かった。凄く良かった。
綺麗な話。梯子の光が、眩しくてでも余計な暖かさはなく、しんしんと透き通って優しく。
宮沢賢治の「告別」は恥ずかしながらはじめて読んだ。すごく、きれい。うん。すき。

集英社 / 2006.10.14.



村山由佳

星々の舟 / ★★★★☆

意外と、すきだった。
兄妹の、しかも生々しい恋だとか、戦時中の話とか、テーマだけ見ると苦手な類だと思うのに
読み終えてみると、悪くなかったなあと、むしろすきだったかもと思う。
娘息子とか、孫とかをそれぞれ追った連作。
恋、以外の部分でも苦手っぽいリアルなところはあったけれど
結局は、何故か汚くは見えなくて、別に美化している訳でもないのに、なんて不思議だった。
おじいちゃんの…ていうか、お父さんの、回想がメインな名の木散る、は特に
珍しい、戦時中を生きた人間の微妙な心情を追ったお話で
こうして物語として読んじゃっていることに矛盾を感じつつも美化しないお年寄りのお話に思えて嬉しかった。

文藝春秋 / 2007.04.03.



村山由佳

野生の風 / ★★★★★

アフリカとか、暑くて埃っぽいイメージの国は苦手意識があったのに凄く惹かれた。何て綺麗。頭の中がきらきらになる。
一部、天使の梯子とかその中に回想として出て来た卵のエピソードを連想する箇所があって、それはあんまり、だったけれど
全体の醸し出す空気感とか、少し読んだだけで一気に引き寄せる文章とか、凄くすき。何度も切なさに泣きたくなった。
染物の描写も、色のひとつひとつとか素敵すぎて今までになく惹かれて、興味を持たせる風で
飛鳥の染物と一馬の写真が、物凄く見たい。今度何か写真集、探してみようかな。

集英社 / 2006.10.29.



O.R.メリング

妖精王の月 / ★★★☆☆

外国のファンタジーはふいに読みたくなる瞬間がある。
木の実に植物がカントリーテイストを可愛らしく添えていて
そういう描写は日本人の書いた話にはなかなかない気がして、それだけでわくわくしてくる。全体の纏う空気がひたすら心地よかった。
只、何度かシーンが唐突に変わるのは少し違和感。
最初の分裂な飛び方は納得できて、むしろグウェンに入るのに役立ったけれど、ラストはちょっと、うーん…
でもファンタジーの空気を楽しむのに余計な考えは邪魔になる気もする。
ふいに現実に引き戻されたのは確かだけれど、わくわくしたのも確か。
それが昔、例えばピーターパンをはじめて知った時の感覚に似ている気がして
そういうのって、やっぱ幾つになってもいいな、何て思った。

講談社 / 2006.11.19.



O.R.メリング

夏の王 / ★★☆☆☆

著者の妖精物語シリーズ第4作であり、第1作妖精王の月の後日譚。
同じ登場人物もいたらしいけれど覚えていなくて気付けなかった。
志半ばに倒れた双子の妹オナーの夢を叶える為に彼女と同じ試練に挑むローレルの冒険。
オナーは妖精を信じていたけれど、ローレルはそういったものを信じられない子で、そのこともあって、オナーの死に責任を感じている。
そこへクラリコーンがやってきて、夏至のかがり火を燈させるため夏の王を探して欲しいと頼まれる。
それをしたらオナーにもう1度逢えるかもしれないとローレルは葛藤しながらも信じる方向で頑張る。
現実にいるまま妖精国の罠に嵌められたりいきなり過去の海賊女王に逢ったり、今の海賊女王とも協力したり
境目が全くないのが不思議で、でも多分ローレルの視点に沿ったナチュラルさなのだろうなと思った。
炎みたいに激しい海賊女王のグレイスが格好良かった。

講談社 / 2008.09.21.



森 絵都

アーモンド入りチョコレートのワルツ / ★★★★☆

2007年05月20日、再読。
美しく、可愛らしく、おしゃれなお菓子のように軽やかで上品な本。クラシックの曲に乗せて紡がれる3篇の物語。
子供は眠るは、悪口、の描写のせいでちょっと苦手だけれど、彼女のアリアの虚言症は、有りだ。
表題作はずば抜けてすき。優しい空気と、切ない変化と、でも変わらない、人たち。
絹子先生の、ピアノを弾きたがらない日の奈緒への対応とか(意味不明の和む話たち)
それでも、自然にピアノを絡ませて来るところとか(でも押しつけはしない)、すごく、すてき。
サティのおじさんと絹子先生と君絵、のメトロノームのエピソードはそれまでが優しかった分応えて、痛かった。
それからの目まぐるしく飛び込んで来る展開には相当入り込んだ。
宝石箱に大切にしまっておきたいような、時々取り出してはきゅんとするような、
派手さはないけど可憐で、大事に大事にしたい本だと思った。

角川文庫 / 2006.01.27.



森 絵都

いつかパラソルの下で / ★★★★☆

はじめての、絵都さんの児童文学じゃない作品。
多少、だからこそな描写はあったものの、全体的に凄く綺麗で透き通った感じがして、前半は特にパワーストーンのイメージが強かった。
つるつるつやつやした、淡い色の、小さな…宝石より素朴で純粋な可愛い石。
野々がバイトをクビになるシーンが痛かった。淋しすぎる。でも、フリーターってそういうものなんだ…。ちょっとショック。
花ちゃんが親近感があって、且つイヤな所が似てる気がするとかじゃなくて、良かった。すき。
愛ちゃんも可愛かった。その分、「だから子供」なんていう野々さんのセリフはぐっさと来たけど…
優しくて、ふわって包んでくれるような綺麗なお話。読み進めるのにきついとか抵抗とか微塵もなくて、すらすら、な感じで。
パワーストーンがほしく、イカが食べたく、なりました(笑)

角川書店 / 2006.05.20.



森 絵都

宇宙のみなしご / ★★★☆☆

正に児童文学って感じの、ほわんとした優しいお話。ハードカバーで字が大きいこともそのイメージに拍車をかける。
でもしんとした、夜の澄んだ空気みたいな静けさはひたすら心地良かった。
ちらちら出て来るちょっと間抜けな喩えとか、言い回しとか、童話に当てはめる文が可愛い。
優しいのに、隣りに人がいるのに、何故かどこか淋しくて、切なくなった。

講談社 / 2006.03.15.



森 絵都

カラフル / ★★★★☆

中学生の頃、よくきいた本。
以来、私的読書ブームが起こる度図書館とか本屋さんとか探してたけど中々逢えなくて、5年以上経って、やっと読めた。
…何か、感慨深いかも。
児童文学特有の優しい空気。何となくぼんやりした雰囲気。甘い…とは少し違うけど、近い?
でも、主人公の年齢を疾うに越えた今でも、しっかり響いた。
母親が苦手で、途中の手紙では不快度一気に70%。…まあ、いい方か。来るぞ、って反射的に構えたけど、思った程じゃなかった。
生々しい話が出て来ても、何となく和やかな微笑ましさが消えなかったのが印象的。
ひろかが愛しい。プラプラ大すき。オチは最初からきっとそうだろうって思ってたけどそれでもプラプラの様子にはぐっときた。

理論社 / 2006.04.12.



森 絵都

DIVE!!1−前宙返り3回半抱え型 / ★★★☆☆

表紙通り、高飛び込みのお話。
主人公はちょっと気弱な等身大の中学生知季。モノローグがいちいち可愛い。同級生とのやり取りも、擦れ違いすらどこか微笑ましい。
オリンピックを目指しちゃったりするスポコンで、あまり斬新さは感じられなかったけれどどこまでも爽やかだった。
最後の方で明かされる知季の武器も、少し意外で。
ただ、良くも悪くも和やかだから、今後知季が恐らく化けるように、物語自体も化けるといいな。

講談社 / 2007.05.11.



森 絵都

DIVE!!2−スワンダイブ / −−−



森 絵都

つきのふね / ★★★☆☆

2007年05月18日、再読。
表紙通り、ふわふわしたお話。童話のようで、でもシビアな単語もゴロゴロ出て来る。
過激すぎる単語は、なくてもいいと思った。それらを省いたって、きっと甘くはならなかったと思う。
中学生の会話に、行動に、切なくなる。本当にあれが普通なのか、って。よくあることなのか、って。
初読時の方が素直に受け取れたかな…今は、駄目。
傷つきやすく生まれた人は、それでも生きていけるように同時に強さも持っている、とか。
露木さんが智さんに、昔智さんに貰った手紙を贈るとか。
後者は、物語の流れとしては必要だけれど、私が智さんだったら、と考えると痛くなる。
ラストの手紙は、前半がとてもリアル。小学生の男の子って、本当にあんな感じだ。あんな風にぶつけて来る。そのまま、素直に。
だけどいろんなことが、簡単すぎる気もした。
確かに何かが治る時ってちょっとしたことがきっかけかもしれないけれど
さくらも梨利も勝田くんも、露木さんも、というのは些か単純すぎないか。
グループだの人の為だのも、くだらないと私はどうしても思ってしまう。でも物語だから、それらが希望ってものに繋がって、なのだろうか。
みんな曖昧にどこかおかしい、とは言っても、やっぱりそれぞれ深度が違うよ、と思う私は甘えているのかな。

角川書店 / 2006.01.14.



森奈津子

地下室の幽霊 / ★★★☆☆

子供向けの少女漫画とか少女小説とかみたいなイラストで、児童向けの文庫シリーズみたいな内容で
だけれどしっかり楽しめてしまった。何だこれ。
小学6年生の女の子2人の探偵ごっこのお話。
クラス替えで知り合った衣緒と一子が、
衣緒のおばあちゃんが昔幽霊と遊んだというお屋敷でどこか謎なおばあさんとお友達になる(主に衣緒が)お話。
イラストの一子は男の子みたいだけれど冷静で頭のいいカッコイイキャラクターが女の子だと単純に微笑ましくて良い。
これが男の子だとありがちだけれど私は子供が色ボケおってって心境になってしまいそうだから。みっともないけど。
ランドセルの描写が、特別なことは何ひとつない筈なのに物凄く懐かしくて良かった。
クラスメイトとのやり取りも、特にラストの一子と玲子とかすんごい可愛い。良いツンデレだよ玲子GJ。
真相については、それ周りの大人気付いていたのじゃないの、って思ってしまった。そうとしてそれを描かない優しさ…なのかなあ。
3人の思った通りだとしたら、あまりに子供向けでちょっと突っ込みたいかも。

エンタティーン倶楽部 / 2009.04.21.



森 博嗣

悪戯王子と猫の物語 / ★★★☆☆

実物を見ずに取り寄せをお願いした為届いた本が薄くってびっくりした。
どこか哲学的だったりする大人の為の絵本、な印象。余裕を持って散りばめられた3ページずつの短編集。
たまにくすりと笑えたり、真意を読み解くのが難しかったり。
プロローグは文字が溶ける、イメージが凄くすきで、海岸を歩くは何故か掴めない色彩が独特で、ゴミたち、ラッキィ、にどこかで共鳴。
泡の連絡のオチにこれといった理由もなくけど強く惹かれて、月の缶詰の月まで猫まっしぐらがツボにハマる。
美智子さんの筆入れの可愛らしさがすきで、ボート・ラボのそこはかとない恐さがすきで、クリスマスイブの微笑ましい優しさがすき。
私には読解力が足りないけれど、たまにはこういうのもいいかな。
ところで森さんとイラストのささきすばるさんはお2人共飼ってるわんこの名前が一緒なのですか…?
同一人物だという意味だろうかと過ぎり、出身地が違うからそうじゃないのか、と結論。
(※ささきさんは森さんの奥様らしい!ああ、なるほど…!!)

講談社 / 2008.01.12.



森 博嗣

堕ちていく僕たち / ★★★☆☆

軽い。凄く軽い。びっくりした。新しい森さん…って集英社文庫で出たのはこれが最初か。じゃあ、はじまりはこれなんだ。新鮮。
地の文に、「わからないかな?」「うふふ」「ごめんあそばせ」。随分とまた飛んだ…と思いつつラーメンずるずるな感じで読んじゃう。
オムニバスだけど、繋がりつつ離れつつ真相は闇の中、なんちゃって。
男が女に、女が男に、ラーメン食べたらなっちゃって、なのに淡泊。中でも「どうしようもない私たち」の和子さんの明るさときたら。
すきだなあ、この感じ。…解説が私の感じたこと全部言っちゃってて何だか似ちゃった…ありゃ。

集英社文庫 / 2006.09.13.



森 博嗣

カクレカラクリ / ★★★☆☆

コカ・コーラ120周年記念作品、らしい。それで120年前の絡繰りで、登場人物がやたらコーラを飲むのか。
主人公は大学生の郡司と栗城。同じ大学の真知花梨は田舎の村に帰省、一緒に行った二人は、村に伝わる隠れ絡繰りを探す。
途中でだれるとかそういうのとは違うのだけれど、いまいち上手く入り切れなかった。最後まで興味が持てなかった、というか…。
でも丸くて四角くて三角、な仕掛けにはちょっとドキドキした。
あと、花梨の妹の玲奈がおてんばで可愛かった。花火と浴衣、なんて小物も綺麗。
最終的に辿り着く、人間って凄い、を素直に受け入れられなかったことが、いまいち楽しみ切れなかった理由だろうか…。
各章毎にある文章は、何だかすきだった。大学教授らしく堅い感じなのに、どこか身近で興味深くて。

メディアファクトリー / 2007.05.01.



森 博嗣

銀河不動産の超越 / ★★★☆☆

不動産屋に勤めるぼんやりした男のとぼけた日々ととぼけた結末。
特に盛り上がるような箇所はなくて、でも淡々とした風でもなくて、不思議な和やかさを以て展開する物語はとても心地好かった。
とにかく大きくて大きすぎてむしろ不便な家(と言えるのかもそもそも謎)を売る筈が何故か成り行きで借りることになってしまって
1人で住んでいても淋しいとかはなかったのだけれど、色んな人と、一時的に同居とかするようになってしまう、というお話。
そらいろのたね、…だっけ?だんだん大きくなるお家にだんだんみんなで住む、とかっていうストーリーの絵本を思い出した。
マリア様批判にはちょっとハラハラした。ラストは何と言うか尻窄みっぽくて、それまでが良かっただけに少し残念。

文藝春秋 / 2008.11.09.



森 博嗣

女王の百年密室 / ★★★☆☆

スカイクロラシリーズ以外では初の森さん作品。
図書館の本の消化を優先する中で、期限がないから後回しにしがちだった母の本の中からこれをちょいす。やっと読めた。
ミステリー、なのかなと思っていたけれど解説曰くSFとごっちゃになっているらしい。
私はそういうジャンルには疎いけれど、雰囲気を大事にしている、っていうのは頷けた。
記号的なキャラクターとか進行が印象的な、やっぱりストイックな話、だと思う。作者の色が少し見えてきた感じ。
感想を書くのがやたら難しい。でも面白かった。うん、面白かったんだ。

新潮文庫 / 2006.07.11.



森 博嗣

迷宮百年の睡魔 / ★★★★☆

森さんの作品の評価にはよく会話がどうこう、と出て来る気がする。
私はこの本ではじめてそれをこういうことか、と実感した。ミチルとロイディの間抜けで優しいやり取りが凄くすき。
ミチルはやっぱりどこか中性的だけど、女王の〜の時より何だか素直で可愛かった。可愛い、には認識として少しズレがあるけれど。
…相変わらず、森さんの本の感想って私にはやたら難しい。
面白かったのは確かなのに、理由とか場面とか曖昧すぎて、近いのは雰囲気が面白い、なのかな。
何とも言えない素敵さを身につけたロイディが本当素敵すぎました。
…それにしても、私はやっぱり解説、ってやつが苦手だ。何で著者でもないのに解説なんだ。
戯曲の場合は有り難かったけれど(訳者が書いてたからってのもあるかもだけど)小説、しかも日本のじゃ、さ…。
ものによっては、感想、として書いている感じのものとか、肯定的に捉えることが出来る場合もあるけれど…
この本の綿矢さんはダメでした。…著書からの先入観もあるかもだけど。

新潮文庫 / 2006.08.20.



森 博嗣

少し変わった子あります / ★★★☆☆

登場人物の女将みたいに、整っているが故に印象の薄い本として終わるかと思いきや、最後の最後にやってくれた。
つまり、いつから?最後だけ?2個前から?注文の多い料理店みたい。
〜終わりました、は最初どこかで読んだ気がちらちらして、気付いてからは戻って確かめるかそのまま進むか少し悩んで
そのまま進みつつ考えるうち確信に変わってきて、ラスト、証明されて、更にオチ。うん、少し変わった本あります、て感じ。
危険も背筋の寒さも感じられなかったことは私の場合救いだ。
ホラーとか苦手だし、不思議、で終わるのはちょっとだけ物足りないけど好感。

文藝春秋 / 2006.11.16.



森 博嗣

ZOKU / ★★★★☆

難しい話ではないのに、何故か最初は取っ付き辛い。堅い話に見える。
でも入り始めればもう、面白いエンタテイメントでしかないのだ。
下品になりそうな会話が品位を失わずに在るのがいつも不思議。艶っぽさもさらりさらり。間抜けにすらしてしまう。
それが森さんの軽めの話の色、て感じで、とても好み。
今回ならロミさんがもう素晴らしく、何ていうの?チャーミング?なのだ。野乃もお馬鹿さが可愛くてすき。
森さんは大学教授さんなのにそういう子を本当可愛く書いてくれていて優しくて、何だか安心する。
会話の面白さと、どこか間抜けで純粋な悪戯の数々も楽しかった。

光文社 / 2007.01.01.



森 博嗣

ZOKUDAM / ★★★☆☆

前半はあまりにもお馬鹿な作風が新鮮で星4つー!!とか思っていたのだけれど、内容に対して、長すぎた…。
読み易くはあるのだけど後半はたるんでしまった。
前半のロミ・品川とケン・十河河の会話とか、永良野乃と揖斐淳弥の会話は、にやけそうなくらい笑えて良かった。
ZOKUの続編(?)、ロボットに乗って戦う話らしいがそういう描写は皆無。
ロミがケンを狙ったり野乃が揖斐妄想をしたりロミと野乃の女の子バトルがあったり
ひたすらゾクダムの説明書と格闘したり雨漏りと格闘したり、まあそんな、しょーもない話。
どっちにしてもラストはぶつ切りなのだし、前半の続くかもしれないをしなければなぁ。。

光文社 / 2008.03.11.



森 博嗣

そして二人だけになった / ★★★★☆

巨大な海峡大橋を支える〈アンカレイジ〉内部に造られた建物に集まった、男女6名。
海水に囲まれて完全な密室となった中で起こる、連続殺人事件。
盲目の天才・勅使河原潤の弟である僕と、勅使河原潤のアシスタントの森島有佳の双子の妹である私が交互に語る、ミステリィ。
どちらも兄の、姉の、振りをして《バルブ》で他の4人と一緒に実際に生活をする、という任務につく。
いない筈の誰か、の恐怖が地味に堪える。
それがメインだと思っていたら次にはやけに臨場感溢れる地震だか、爆発だか、戦争だか、に遇う。
このシーンは一人称だからこその、訳のわからない当人のリアルが凄く迫った。
更に、監禁。この辺りはちょっと単調な印象。
だけどたどり着いた真実に、驚いて、続く、最後の最後に2人以外の人間からはじめて明かされた真実に、星4つー!!と思った。
驚愕を伝えるのに星の数かよ、とは自分でも思うけれど難しいのだから仕方ない…。
真実を知って、その上でもう1度読みたいと思わせる本だった。

新潮社 / 2008.06.23.



森 博嗣

探偵伯爵と僕 / ★★★★☆

面白かった!
厚めの本だけど、字も大きめで1頁の文字数が少なめだし文章も易しくて読みやすくて、一気読みした。
新太と伯爵の会話が可愛くて良い。新太の幼さが微笑ましくて。
ミステリィとしての感想は、普段あまり読まないのもあってよくわからないけれど
会話のテンポとか凄く引き込まれるものでとても良かった。
ラストの手紙は、そうする意味はよくわからないけれど不思議な余韻を残す感じで一捻り、な印象。
易しい分児童文学的で、森さんてこういう本も書くんだって新しい発見でした。

講談社 / 2006.10.23.



森 博嗣

どきどきフェノメノン / ★★★☆☆

細かく言えば、3寄りの3.5、かな。森さんてこういう本も書くのかぁ、が最初の印象。
ユニークな軽い文章は、文庫で…、タイトル何だっけ、ラーメンの話…で、読んだけれど、今回のはそれ以上の独特なユーモア。
新しい、と感じる一方で、森さんらしい、とも思う。
女の人らしい女の人を、メインに、というか…、その人側から見た文章、っていうのも、新鮮だった。
水素とか、しっかりメインの時は中性的だったと思うし、ミチルも訳有りだし。
日常系、なのかな。少し変わった子〜タイプでもないし。会話が等身大ぽくて可愛かった。
後半は珍しく少し生々しい気もしたけれど、抵抗を感じる程ではないしどこか独特で、冷めていてユニークな、感じ。
ちょっと馬鹿馬鹿しいくらいの、連想ゲームみたいな佳那の思考もすき。
登場人物それぞれの、ちょっと危ない人?な行動も、さじ加減が絶妙、かもしれない。
引く一歩手前で、また引いた次の瞬間に、とか、最終的に、何となく可愛く思えちゃうような、嫌悪の残らないトリック。
勢いがある上で、上品、上質。見事なり。

角川書店 / 2006.12.13.



森 博嗣

ナ・バ・テア / ★★★★☆

よく聞く森さんの本の中から、表紙に惹かれてのチョイス。夕焼け空が何とも言えんのです。
シンプルで無駄を削ぎ落としたような文章。意外と読みやすいと思いきや入り辛かったり、やたら飲まれたり、気まぐれな本。
戦時中の話だけど遠くなくて、不謹慎にも本当にダンスのように感じてしまったり。。
不思議な純さ、子供って描写とか、大人、地上…、でも流されてるとか染まってるとは感じなかった。ラストは只々きゅんとした。

中央公論新社 / 2006.03.20.



森 博嗣

ダウン・ツ・ヘブン / ★★★★☆

読めた。また、読めるようになった。
読めなかったらきっと物凄くダメージを受けた、でも読める可能性が1番高かったこの本が読めて良かった。
本当に良かった。戻って来れて良かった。
グレーの空。内容そのもの。悲しくなる。
汚れてて、汚れてて、汚れてて、そういう地上と関わってくスイトが悲しくて仕方ない。スカイクロラのラストを予感させるお話。
前半、大人に少しなりかけなスイトを感じて、後半、それとは比べ物にならないくらい強い大人の抗えない波を感じて、淋しい。
スイトの大人さ何て可愛いものだよ。悔しい。…悔しい。
改めて、時間軸順に読み返したくなった。まだこのシリーズ出るらしいから、全部出たら、そうして読み返したい。

中央公論新社 / 2006.05.07.



森 博嗣

フリッタ・リンツ・ライフ / ★★★★☆

4章の途中まで凄い勢いで一気に読んだ。このシリーズは時間をかけるのが常だったから、自分で驚いた。
4章の次はエピローグだっていうのに、時間に負けての中断。良くなかった。少し、後悔。ラストまで突っ切っていたらどんなだっただろう。
クリタがわからない。前にも出て来た?もしかして、水素にラスト関わったのは彼だったっけ…。こういう時図書館で借りた本は切ない。
水素の一挙一動が鮮やかですき。読む度想像する世界は、いつか何かのドラマで見た色褪せた基地、車、兵隊さん。
戦争、ってやつを書いている筈なのに痛々しくないのが不思議。真っ直ぐ、前だけを見て。真摯に。やっぱり、すきだなって思う。

中央公論新社 / 2006.10.06.



森 博嗣

クレィドゥ・ザ・スカイ / ★★★★☆

スカイクロラシリーズの最新刊であり、最終巻。…ややこしかった!
前巻を読んだのが暫く前なこともあって前後関係がまずあやふやな上
最後の最後まで今回の主人公の名前が出て来ないというあたふたな本作。しかもその最後の最後のそれすらちょっと怖い描写。
前者は読み進めるうち前巻のラストを曖昧ながら思い出したりしたのだけれど(あの人があの人を撃った、のだったよね…?)。。
今回は病院からの脱走に始まり、自分の名前すら忘れた「僕」が
クサナギの幻を見つつ、最初はフーコと、その後殆どはサガラと、あちこち逃げるようにして、実際逃げて回る。
ラスト辺りまで飛行機にずっと乗らずに進む展開が新鮮で、このシリーズの「僕」はどの人もやっぱりどこまでもシンプルで、
何かが抜け落ちたような純粋な不完全さが、本当に美しく映る。
クサナギに似ているとか、亡くなった筈の本人が別人のようだとか、エピローグには疑問符乱舞。
全部引っ括めて文庫版でもいいから集めてやっぱりまとめてじっくり…読みたいなぁ。

中央公論新社 / 2008.02.02.



森 博嗣

スカイ・クロラ / ★★★★☆

ナ・バ・テアではルビがなかったから、まず、ミナモ、って読んだ。それから、スイソか?と思った。
草薙水素。クサナギ・スイト…って読むのか。
パイロット時代は中性的で、少年みたいだった。これの方が先に出たんだっけ。
私は逆の順で読んだから(つまりは時間軸順)、再登場気分。
ストイックな世界が、彼女が出る度鮮やかになった。はじめてのシリーズじゃないからか、前より読みやすくて入りやすかった。
けどだからこそ突然ハイスピードで動き出した5話には戸惑った。
昔の日本が舞台なのか、ファンタジーなのか。判断は前者に傾いていたから、余計に。
たくさん出て来る専門用語は相変わらずよくわかんないけど、わかんないなりに、何となく、飲み込めて来たと思ったらいきなり凄い設定。
クサナギ氏が、大すきでした。本当に。苦しめと言いたくはないけれど、どうしても、…淋しい。

中央公論新社 / 2006.04.06.



森 博嗣

スカイ・イクリプス / ★★★☆☆

スカイクロラシリーズの番外編集。
私にとってこのシリーズのキャラクターというのは本当に記号的で
だから久々に触れた今回も、クサナギとティーチャと妹以外はあやふやなまま読み終えてしまった。
これがあるからこの人なんだ、っていう把握が難しい。どの人も印象が似ていて。
ただ、そういう読み方は本来褒められたことではないと思うけれど
その曖昧さとどの人でも一貫してる空気感が、やっぱりすきだなと思う。
しっかりまとめて読んでそれぞれのキャラクターをちゃんと受け取りたいって欲求も生まれるけれど
わからないままでも、何となく心地好い。ふいに入る何だか微笑ましい会話のやり取りもすきだ。

中央公論新社 / 2008.11.24.



森 博嗣

もえない Incombustibles / ★★★☆☆

クラスメイトの自殺らしき死から始まる、高校生の淵田悟の日常の傍らの死の話。
前半は燃えずに柩から出て来たという淵田の名前入り金属板の意味に曖昧に悩み
後半は温室に遊びに行ったことから殺人事件の目撃者になって、そこではじめてああこれはミステリなんだ、と把握した。
それまでは何の話なのかわからないまま、あやふやなまま軽やかな文章を軽やかに読んでいた、みたいな印象。
だからってどう受け取って良いのかわからないような難解さはなかったからストレスは感じなかった。
一人称形式でどれが大事と明確にされていないから展開として記憶をキィに感じつつもいい意味で軟体っぽい感じがした。

角川書店 / 2009.12.14.



森内俊雄

十一月の少女 / ★★☆☆☆

星は、正直を言えば評価出来ません、として表示なしにしたい。ここまで難しい本ははじめて読んだ。
入るのに苦労する本はたまにあるけれど
それでも読み続けてラストまで耐えれば何となく輪郭くらいは勝手な解釈でもとりあえず掴めるものだと思う。
でもこの本は、何かもうそういう次元じゃなくて、本当にわからない。
何が書かれていたのか、どういうお話だったのか、何だか全く…
まずいなあと思いつつ、読み切ればきっと、なんていう読み進めている最中の希望は砕かれた。どうしよう…。
ヤとウって名前が斬新で最初は惹かれた。二人の口調も、〜かナ?とかこれはネ、とかちょっと独特。
ウの母であるハルカのなくした指輪が、ファンタジー的にあちこちに現われては別の人へと渡っていって
それとメの王国という絵本とが微妙に絡んだりしつつ、
…とりあえず指輪の行方探しというか何というか…指輪追い物語?が、多分、メインストーリー。
登場人物の名前が親世代は漢字で、けど脇野有朋とか土手永遠とか一般的ではない風で
子供世代はみんな片仮名でフミューとかフニューとかジョーヌとかランディとか、何かもう、不思議。
ラストの、フミューとフニューが絵のモデルを務めるシーンはあまりすきでなかった。
一文がやたら短い作風は一見わかりやすそうなのに、いちいち明らかにはしていかない文章がとても難解だった。

新潮社 / 2008.07.06.



森橋ビンゴ

チョコレートゴシップ / ★★★★☆

生々しかったり軽薄だったりもするのにどこまでも爽やかな短編集。どの話も流れる空気が物凄く澄んでいて心地よかった。
メンソール・ベイベ、は同性愛者のフリーターなボクと大学生の一馬のカップルとボクと仲良しになったヘビースモーカーな元村千早の話。
ボクはゲイの筈なのに一馬と同じくらい千早を好きになってしまう。
その結果と、彼らの出した結論は酷いものだけれどそういう感情をオフにすれば微笑ましいラストだった。
夕焼けブランコ、は女装癖があって被虐趣味にも目覚めた男と嗜虐趣味な12歳のサワコの話。
ボクとサワコの関係は歪んでいるのに何故か純愛に思えて仕方なかった。狸親父は粘着質で気持ち悪さしか感じなかったのに。
アメ車とグルメと太陽と、は片や吐瀉癖、片やリスカ癖な大食い女子2人と彼女らにご飯を奢るボクの話。
周りの心配をよそに仲良くなった伊藤勇気と菅原潤が微笑ましくていい。同じ男をすきになっても基本が崩れなかったのが嬉しかった。
スナヲナキミト、は彼女を横から同性愛者の女の子に取られたボクと取った当人である桐嶋砂緒の話。
砂緒に彼女を取られた別の男子の喚きがたった一言なのに気持ち悪くて仕方なかった。
逆にとにかく軽い砂緒はしっかり魅力的だった。彼女の出した結論は、何だか淋しかったけれど…。
冷めたとかじゃなくて、大丈夫なのかな、って思った。
各エピソードの間には短いボクの話、があって、それはチョコレートケーキを作るボクの話で、彼は、最後のエピソードのボク、なのかな。
それまでのエピソードは作家である彼が書いた物語、なのかな?
つらつらサラサラ澱みなく紡がれる一人称の文体が可愛くて間抜けで微笑ましくてすごくすきだった。

角川書店 / 2009.06.17.



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