永井するみ

さくら草 / ★★★☆☆

清純で高級感のあるジュニアブランド、プリムローズと、その服を着た少女の連続殺人事件の話。
ブランドを守ろうとするゼネラルマネージャーと女刑事のシーンが交互に語られる。
お洋服や小物の華やかで上品な描写と、事件に揺り動かされる女たち、として描かれる登場人物たちの寄り添うような親近感が良かった。
出来る女風なのに不倫をしている晶子も、幼少期のトラウマを抱えた理恵も、へんに卑しくも嫌らしくもなくてそれでいて高潔すぎない感じが新鮮だった。
筋金入りのロリコン男の描かれ方には恐れ入った。過剰には書き込まれていない風なのに優しげな言葉の悍ましさったらない。
幼少期のほわほわとした描写は安易に同情に繋がらない、でも突き放してもいないかもしれないような不思議な雰囲気で興味深かった。
途中途中で、帰っては帰らないでって意味だとか、何故わからないのかとか、勝手なことを思う晶子には若干落胆したけれど
ラストのお店の様子が淋しくて甘くて爽やかで哀しい、余韻の素敵な雰囲気になっていて、それが晶子や全体の着地点にも通じて効いているのがすごくすきだった。

創元クライム・クラブ / 2011.08.03.



中島京子

TOUR1989 / ★★☆☆☆

文章や内容がどうこうではなくて、何というかつまりはわからなすぎた為星2つ。
とても難解だった。結局どういう話だったのだろう?雲を掴むみたい。
迷子つきツアーとその迷子からの手紙を軸に、主人公を変えて全4編の連作。
実在したツアーかはわからないけれど実在したのかも、と思わせるものだった。
昔の香港がとてもリアルに迫る。色んな、生活の匂い、みたいなものさえ伝わりそうな。
外国は怖いな、と竦む。別にそういう描写がある訳じゃないけれど、妙にリアルで。
よくわからない執着、にくるくるする登場人物たち。着地点はどこだったんだろう。何だか何もわからないまま終わってしまった。

集英社 / 2007.10.28.



中島らも

空のオルゴール / ★★★☆☆

よく、わからない話…。。
独特な空気は感じられるし奇術ってスパイスも綺麗なんだけど、いまいちよくわからない。
結局どういう話?って、流れもオチもちゃんとあるのに思っちゃう。けど、不思議なユニークさは嫌いではなかった。

新潮社 / 2006.10.31.



長野まゆみ

時の旅人 / ★★★☆☆

表紙に強く呼ばれた気がして、長野さんの作品は独特さが私には難しいと思って暫くご無沙汰だったけれど、直感に賭けてみた。
今までに読んだ本より大分読み易くて入り易かった。連作だし、1話1話が短めでそのせいかもしれないけれど。
浦島ネタで、SFネタで、だけどやっぱり長野さんだなって感じのキラキラお星様的幻想な雰囲気。今回はお星様、出てないけれど。
玻璃、瑠璃、金時、翡翠に紺珠とか…登場する単語、漢字、言葉…がいちいちそういう連想を誘う。
1話目のリュウグウノツカイは大正12年を、2話目のタマテバコは昭和48年を、ラストのトコシエノタビは2069年を舞台にして
江ノ島なんか、今のままの駅とか出て来るのに、それでも尚、文章がファンタジーを主張する。
ストーリーから不思議生物とかを抜いても、きっとそう感じるのだろうなと思う。
独特で強烈な雰囲気。何となくぴるぴるした字体。万華鏡のような華やかさはこの本でもやっぱりしっかり健在だった。本当、綺麗。

河出書房新社 / 2007.09.24.



長野まゆみ

少年アリス / ★★★☆☆

真綾さんのアルバムに確か同じタイトルのがあったな、ていうのと、
開いた途端飛び込んで来た透けた白越しのしんとした夜の絵に惹かれて、借りてみた。
透き通った、蒼い…天の川を連想したのはやっぱり宮沢賢治の影響かなぁ…?
銀河鉄道の夜のエピソードだとか挿絵だとかが何度か過ぎった。ちょっと冷やっとくるような怖さには、注文の多い料理店。
ちっちゃい頃は凄く苦手だったなぁ。…今も、ちょっとだけ(笑)
著者さんは宮沢賢治すきなのかな?それっぽいタイトルの本、図書館に一緒に並んでた。大人のおとぎ話風の、独特な空気。
最初は現実の現代風な舞台なのかファンタジーな異世界が舞台なのか、そもそも蜜蜂てあだ名?とか…
色々判断できなくて戸惑ったけど、そのうちどっちでもいいかなって気になった。
さらりと馴染む不思議なお話。幻想的で純水て感じで、息が出来るようになるような、清々しさを感じた。

河出書房新社 / 2006.03.30.



長野まゆみ

三日月少年漂流記 / ★★★☆☆

文章にも個性があるのだとここまで思わせる作家も珍しいと思う。少なくとも私は知らなかった。
言い回しとか癖とかじゃなくてもう、世界が完全に出来上がっている感じ。
掴み所のない、澄んだ、異世界の不思議なお話。何にも喩えられない幻想。

河出書房新社 / 2006.05.23.



中山可穂

天使の骨 / ★★★★☆

手に取ったきっかけは、「天使に導かれ、あてのない旅に出た〜」とかっていう別の本の中の紹介文。
その時想像したお話とは全く違った世界に、最初は少し驚いた。
ぼろぼろの天使は増殖を繰り返すし退廃的で、主人公のミチルは演劇のヒトで女の人がすき。
でもどれだけ荒れても弱くても流されても、ずっと、綺麗だった。
…ちょっと違うかな、つまり、イヤな汚さがなかった。ずっと真っ直ぐだった。
前半はちょっと違って、戸井が本当嫌いで嫌いで仕方なかったけれど、ミチルが旅に出てからはそういうものがなくなって。
リアルに醜く汚いヒトが出て来る、出て来っぱなしな本は苦手だから嫌悪感でいっぱいになるから
前半の戸井はともかく、後半はそういうものがなくて綺麗に終わってくれてとてもほっとした。
ミチルと一緒に、久美子に浄化されたのかもしれない。
戯曲を書く時の感覚が、とてもわかる気がしてそれも嬉しかった。
上手い下手は置いといて、お話を書く時の感覚、は共通しているのかもしれない、なんて。

朝日新聞社 / 2006.10.08.



中山 咲

ヘンリエッタ / ★★★☆☆

日常から乖離したやさしさが、でも物凄く素朴で、日常的な話。
著者はこの時点で高校3年生、本作で第四三回文藝賞を受賞。
きっとこのお話みたいに繊細で、ナチュラルで、物凄く素朴な方なんだろうなと思った。勝手なイメージだけれど。
主人公のまなみが著者の写真の雰囲気と凄く重なるから。
ヘンリエッタはお家の名前。その中に守られてまなみはあきえさんとみーさんと一緒に暮らす。
学校が苦手だったり、母親と上手くいっていなかったり、父親はいなかったり、外出が出来なかったり、人に会うのがとても怖かったり
だけどそういう部分をさらりと流していちいち説明しない所が、すごくすき。
あきえさんもみーさんも優しくって、けど危うい傾向があって、だけどそれをいちいち否定しないでただ泣いちゃったりする所が、すき。
地味だけど地味だから良かった。
素朴すぎて0.5は切り捨てた星3つ評価だけど素朴な所が良かった。
素直で微笑ましくて、攻撃的な鋭利さを持たない繊細さがあって、これからにも期待な作家さんとなりました。

河出書房新社 / 2008.06.05.



名木田恵子

海時間のマリン / ★★★☆☆

名木田さん作品をまた読みたいなと思って児童向け〜って感じの中からそうでもない物を探したつもりだったのだけれど、
児童向け、だった。ちょっとしょんぼり。
現物を見ないでの予約だったけれど、幻想的なタッチで描く、異色のサスペンスファンタジーと折り返しにあったから
手にしてからもちょっと期待してしまった。
残念ながら子供向けを大人的に楽しめる程まだ私に読書力はないのだよ…。
全ては書かず、説明せず、感覚だけで語られたような物語が新鮮だった。
人間と人魚のハーフだってわかったマリンが
同じくハーフなプーカとケンタウロスと一緒に生き延びられるか否かのかかった旅をするお話。
そんな状況で恋愛脳してるマリンは鬱陶しいけれど、まあ、仕方ない…。
それより生きる為に殺すって手段を考えた呂に対する反発とか裏切られたって感情が苦手だった。
差し出せとは言わないけれど理解することは出来る範囲じゃないか?
ラストは意外。いい意味で。でも直前からの剣多の流れはそんなでいいのかってちょっと思った。
作者紹介の、キャンディ・キャンディが著者がペンネーム水木杏子で手掛けた作品ってのには驚いた。凄い人だったのね…。わーお。

講談社 / 2009.03.11.



名木田恵子

air / ★★★☆☆

優しくて、透明で、淋しさの残るでもぽかぽかする、お話。
愛されないのは淋しいけれど、愛することが出来るなら、身体に愛は流れてる?
ちょっと淋しい感じが、しちゃう。けど絵亜にはしっかり彼がいたのだから、ね。
冒頭の家出の描写がリアルで共鳴した。私は絵亜よりずっと歳取ってるけど、情けないくらいそのままだったりする。
今まで何度かあった。未だ解決はしていない。だから、また直来るかも。波みたいに。
行くところがないと思い至った時の失望、は、やるせないし情けなくて涙が出るくらい。
戻って来てしまった時の情けなさも、味わったことはないけれどきっとやるせないだろうと思う。
お金借りまくるサーコに反発しない絵亜が、私にはちょっと不思議だった。でも何故か、広さ、みたいなものを感じたりもした。

金の星社 / 2006.06.01.



名木田恵子

ナイトゲーム / ★★★☆☆

飛び下り自殺をしようとしていた男は、特別止められたとかでなくたまたま出会った少女によって気持ちを削がれた。
彼と、彼を結果的に止めた幻のような女の子と、その仲間たちの非日常の日々。
ご好意よ、と言いながらその場限りの盗みを働いたり、モデルハウスだのデパートだのに住んだりしている彼らには
とんでもないと思いつつも幻想的すぎて疑問や不快は感じない。
夜毎みんなでつるんで、多分大きい、だけどちっちゃな冒険、って印象の日々を送っている。
やることの無茶苦茶さもエンストのちょっと外れた愛も全く違和感なく愛しい。
趣味とかでなく女装したキンコの歌に対する真っ直ぐさも愛しい。
私の読むペースのせいかもとも思うのだけれど、終盤の慌だしい展開とヨットの絵が目印の敵の扱いが勿体なくて残念だった。
それまでは和やかな非日常が鮮やかですきだった。

文化出版局 / 2009.03.24.



梨木香歩

家守綺譚 / ★★★☆☆

不思議な話。…今更ながら、殆どの感想で「不思議」を使っている気がする。本が不思議なのは当たり前なのか?
それとも知らずそういう本を選んでいる、とか??それぞれ「不思議」の種類は確かに違って、でも不思議な、話なんだ。
花とか木がたくさん出てきて、特に竹林のシーンが印象的だった。凄く魅力的。行きたい…。思いっ切り深呼吸して空とか見上げたい…。
よくわからない、植物の…化身?みたいなものが後から後から出てきて
その度、多少戸惑ったりはするものの、よくわからないまま何となく受け入れてしまえる綿貫が素敵だなと思う。
無責任な訳じゃなくて、広くて。
ずっと綿貫を主にして話は進むのだけど、オムニバスとかそういう感じで特別クライマックスとかはないから淡々としていた。
でも不思議と飽きは来なかった。
村田さんの名前がちらほら出て来るのが何だか嬉しかった。別作品との関わり、って、秘密の暗号みたいでときめきます。

新潮社 / 2006.07.02.



梨木香歩

裏庭 / ★★★☆☆

2008年09月03日、再読。
第1回児童文学ファンタジー大賞受賞作。丘の麓のバーンズ屋敷の大鏡から裏庭に入り込んだ照美の冒険。
異世界へ行ってのあれこれ、から可愛らしいイメージも浮かぶけれど、最後まで読むとやっぱり児童文学とは思えないような難しさだ。
子供ならそのままおおーって読み進めればいい、楽しめばいいと思うけれど
そろそろ現実世界との関連性ももうちょっと読み解いていきたいと思うところ。
でもそれには物凄く濃い、長い時間と気力がいるんだろうなとも思う。今回もまだまだだった。またいつか。
最初は、何となくフワフワした雰囲気もありつつ進む。
スナフキンに似たスナッフだとか、テナシとかとのやり取りは微笑ましかったりもする。
だけど後半になるにつれてどんどん重くダークになっていって、急な変貌と暴走とか、根の国での化物とか餓鬼は中々凄まじい。
照美の、多分思春期の少女らしい潔癖さや我の強さがたまに鼻についた。
気持ち悪いを連呼したり、綺麗なものに引かれすぎるのもちょっと。星は、3.5。最初の貸衣装屋のエピソードが大すき!

新潮文庫 / 01.10.04.



梨木香歩

エンジェル エンジェル エンジェル / ★★★☆☆

2008年07月22日、再読。
カフェイン中毒から抜け出す為に安定を求めて熱帯魚を飼うことにしたコウコと、寝たきりに近いおばあちゃんの交流。
水槽のモーター音で覚醒したようなおばあちゃんはさわちゃんと呼んでと言う。
そのさわちゃんと、さわちゃんのばばちゃまとの物語も今の物語と交互に語られて
描かれるのは、さわちゃんがコウコを通して救われるまで。コウコは意識せずしてさわちゃんのしこりを解く。
依存してもあまり実害のなさそうな熱帯魚に惹かれるコウコの描写が切実ですきだ。
ママのうさんくささに対して排他的じゃなくやさしいところは梨木さんだぁと思う。
昔の文体の、さわちゃんの少女期のシーンは
憧れていた翠川先生と山本さんに両方から失恋したような、に至るまでの描写にドキッとした。
コウコの切実さより更に切々と訴えてくるから痛いくらい。全体のパステルのような淡い空気感と限りない透明感が綺麗。
巻末に掲載されている精神科医による文章はラスト1ページとか特に、余計だと思った。

新潮文庫 / 2004.08.05.



梨木香歩

蟹塚縁起 / ★★★☆☆

絵本、だけれど内容もイラストも重々しかった。
とにかく濃くて、何かが宿っていそうなくらい存在感のある木内達郎さんの絵と
ただの恩返しものというには生々しさの残る物語が、ある種異様な程の迫力を醸し出している。
本当に、「だんだん切ないような哀しいような、それでいて温かいような、たまらない」気持ちになる、お話だった。
丁寧に丁寧に美味しい所だけ搾り出したお茶のような、シンプルなのに濃厚な、童話だった。

理論社 / 2008.01.18.



梨木香歩

ぐるりのこと / ★★★★☆

ある程度読み進めてから、「私」は梨木さんなのだと気付いた。つまりは、エッセイだ。知らずに借りた。
だって冒頭読んだだけじゃ、文章の印象は家守〜と似ていたんだもの。
普段、エッセイはぱらぱらと読むことはあってもなかなかちゃんとは読まない。本当、滅多に。
だからエッセイと知っていたら、手に取らなかったかもしれない。実際、何度か見かけてる「春になったら〜」は借りていないし。
でも今度、借りてみようかな。

沢山の、いろんな、ぐるりのことに興味を持ってしかもそれをいちいち調べて消化する、方。
難しい話がいっぱい出て来た。外国のこと、歴史のこと、ニュースの話題。けど入り始めれば惹き込まれる語り口はさすが。
梨木さんの広いぐるりが、いいことも悪いことも一緒こたに受け入れられて、反発されて、そこに在る。
たまに説教染みてきたりもするけどでもそれごと、理解は出来なくても…って、出来ているかな?
あなたはそうなのね、には独特の冷たさを感じる。
けど梨木さんのそれは、とりあえずこの本の中では、今までに読んだ物語の中でも…暖かい、と思う。

知り合いの詩人と小学生の手紙の話、が痛かった。
でも、「本当になりたいのか」って質問がどうして投げ掛けられるのか、の答えの1つをもらった気がする。
とある声優さんが、とあるインタビューで似たことを言っていて
私は私の気持ちを疑われたような気がして、否定されたような気がして、酷く悲しく感じことがあった。
もちろん私1人に宛てられたものではなかったけれど、それでも。
優等生の彼女の行動は、昔自分もやりかねなかったと思う。
なりたいもの、がよくわからなかった頃、小学生の頃なら尚更…。だから、畏縮する。
なりたい、っていう強い気持ちもなく、でも課題だから、と失礼な手紙を出してしまう。
梨木さんは失礼だとは書いていないけれど。フォローもしてくれているけれど。でも私には、恥ずかしくて縮こまりたくなる話だった。
同時に、でも、やっぱり、多少なりとも本気だと思ってる人には失礼、だと思う。
それとも本当に本気でなりたいなら、こんな些細なことは気にならないのかな。

更に、今度は嬉しかった話。学校へ行かない子供たちについての講演での、年配の男性とのやり取り。
年配の男性、の言葉はよくいるおじいちゃん、おばあちゃんそのもの。
それに対し「甘やかな連帯」の快感を指摘した梨木さんと、それを認めたおじいちゃん。
そういう人はそういうの、認めてくれないものだと思っていたから光が差したみたいでそれも嬉しかった。
別に、可哀相と思ってほしい訳じゃない。実際恵まれているし甘えてもいる。…もう学生じゃないからいた、か。
けど、年配の苦労した方々のそれをはっきりわかりやすく指摘する文章に、
あのもやもやを、そう、そうなの!と思ったり(でも考えることを放棄したくないとは思う)、何だか無性に、泣きたくなったり。。

他にもはっとする、指摘…ではないのかもだけどそれに似たもの、がたくさんあって
改めて私はその感受性をすきだと思い、それに言葉を与える力に圧倒された。
折鶴の話は折った側に寄って感動、した直後、結果的に数が増えた皮肉と燃やした側の気持ちを思った。
梨木さんが可能性の1つとして思ったように、千羽鶴ってものの重さに耐え兼ねて、火をつけてしまったのだとしたら、
気持ちは、わからなくもないから。

鮮やかで優しい、生きた描写がたくさんあった。凄く、きれい、だった。

新潮社 / 2006.08.13.



梨木香歩

f 植物園の巣穴 / ★★★☆☆

夢うつつの主人公に作品までシンクロして輪郭さえよくわからないことになっている本だった。
はじめはその上硬いから、読み進めるのに難儀した。
でも梨木さん本は最後まで読めばそういう印象ごと変わる、と経験上確信していたから、信頼を以て読み進めて
実際水の中の深く深くへ坊と行ってからはかなり読み易くなった。
相変わらずぼんやりとしてはいたけれど、少なくとも輪郭は見えたし入れるようになった。
植物園の木のうろから始まる、犬やら雌鳥やらになる人間と、歯と、水辺の話である。
訳がわからないなりに、何だか不思議な雰囲気で統一されていて、道案内に坊が現れてからはぐっと掴まれるようになった。
ただラストに至る課程でまた繋ぎ留めていたものがふっと霧散してしまったのがちょっと残念。
説明はつくようになったのに、坊の存在はやっぱり引き込む要素として大事だった。
坊といる時は、裏庭のようなほの暗いファンタジーさを感じて
全体の雰囲気には、あやふやな記憶だけれど水辺なキーワードも相俟って沼地〜を連想した。

朝日新聞出版 / 2010.07.07.



梨木香歩

丹生都比売 / ★★★☆☆

難しかった…。さらっと読んでしまえば昔語りのようなちょっぴり雅な淡いお話。読み込めば恐らくは、どこまでも深々としたお話。
歴史に疎い…というか無知な私は
天武天皇なんていうメジャーな人が登場するまで実際の人物、出来事の物語なのだと気付かなかった。
下の方に空白を置いて四隅の丸い四角で囲む独特なページの作りを含めて、とても上品な印象。
文章もたおやかで柔らかい。小さな頃、絵本で読んだ日本神話のような。
草壁皇子を主人公に、さり気なく彩られた日々。
どこまでが事実として残っていてどこからが憶測なのか、わからないけれど、後半のおかあさま…鵜野讃良皇女が悲しくて仕方なかった。
キサと銀に至る道もとても綺麗で、幻想的で美しく。
難しいことは放り出してしまったけれど、それや余韻は、少しは受け取れたのか、な。

原生林 / 2007.11.01.



梨木香歩

西の魔女が死んだ / ★★★☆☆

2008年07月16日、再読。
映画を見る前か見た後かで迷ったけれど、表題作は前者を選んだ。
久しぶりに読み返したけれど、多分、年を取れば取る程訴えてくる作品じゃないかなと思った。
初読から何度か読み返しているけれど、今回が今までで一番胸に迫ったから。
中学に進んで間もなくどうしても学校へ足が進まなくなったまい、とか、その辺はとてもあっさりしていると思う。
それがまいには揺るがない事実であって、今更語るまでもないこと、みたいに流して
それよりも思春期のまいが色んなことに影響を受ける様子とか
最初はやたらこれでいい?と意見を求めることの多いことの方が、こまやかに書かれている。
おばあちゃんとの魔女修行は規則正しい日常が基本だからどうにもお説教っぽいところが強いのだけれど
後半になるにつれて、色んなことがリズムを持って展開していって引き込まれた。
野苺のジャム作りとかおばあちゃんのニヤリ笑いとかまいのニヤリ笑いも素敵。
伝言は、反則技だ。タイトルにもある死んだ、な悲しさが悲しいまま終わらないのが木漏れ日みたいで救われる。
その後のまいの物語である渡りの一日は
ショウコから見るともう魔女としてすっかり馴染んで本人も魔女であるべく生きている風なまいがとても微笑ましかった。
ダンプのあやさんも魅力的だし、ショウコとのやり取りも等身大で嬉しくなった。

新潮文庫 / 2001.11.26.



梨木香歩

沼地のある森を抜けて / ★★★★☆

ラスト直前まで、は、凄くすきだったのだけど…2回目の、第三種接近遭遇?で…がらがらと。うー。
でも最後の最後、ラスト2ページはすき。ついでに1回目の第三種接近遭遇はすきでした。
久美さんと風野さんのあのストイックで可愛い感じ、すきだったしあれは有り。
本当に、作者の見えない作品を書く人だなあ、ってつくづく思う。
共通するものと言えば「」を使わない会話くらいで、他は全くと言っていい程裏方に徹する、というか。透明人間のようで。
只、作品だけがそこにすっ、と、在る、感じ。
細胞とか菌とか、難しかったけど、次へ次へ、ってどんどん読めた。読みやすかったし面白かった。
最初はオムニバスみたいにぬか床からよくわからない子が出て来たりするけど
自然に、それ以外の方へ進んでって、でも無関係ではもちろんなくて、凄いなあ。
暫くしてから改めて読みたい、って思わせる本だった。1度じゃ理解が追いつかない。2度目3度目にはまた新しい発見が有りそうです。

新潮社 / 2006.09.09.



梨木香歩

村田エフェンディ滞土録 / ★★★★☆

梨木さんの本をハードカバーで読むのははじめて。読みながら思い出したのはからくりからくさ。
裏庭とか西の魔女みたいな児童文学の空気は全くなくて最初は難しくてちょっと困った。
でも、大丈夫かな、読めるかな、って思いつつも、同時に大丈夫だよ、梨木さんすきだもん、何ていう意味不明な確信。
たまにクスリと笑える雰囲気が救いだった。
第51回青少年読書感想文全国コンクール課題図書。
そのシールを表紙に見た時、梨木さんを選ぶとはなかなかやりおるではないか、なんて思ったけど、うん、やっぱり、堅いのネ;;
けどラストまで読むと、もう、やっぱり梨木さんだぁ…って思う。
だって鸚鵡が。鸚鵡が愛しくて仕方ない。淋しくて縋りたくて愛しさが込み上げて、只胸に抱えて静かに泣きたい。
何度か出て来た神様とか霊のお話が優しくて暖かくて怖くなんてなくて身近で、これまた梨木さんだぁ、って懐かしかった。
難しいお話。難しくて、難しいことは結局私の頭じゃよくわからなかった。でも、すき。
理解出来なかったのは何だかちょっと申し訳ないけど、でもそれでも響くものがあって、やっぱりすきだなぁって、思うのです。

角川書店 / 2006.05.09.



梨木香歩

りかさん / ★★★☆☆

2008年07月17日、再読。
リカちゃん人形が欲しいと頼んだようこにおばあちゃんから贈られてきたのは、市松人形のりかさんだった。
ようこはがっかりする。でもりかさんは、テレパシーのようにようこと話せるお人形だった。
頼もしくてやさしいりかさんを通して知る色んなお人形の記憶のお話。
養子冠の巻は帰りたいのと泣く背守の君の物語、アビゲイルの巻は昭和2年にアメリカから贈られて来た青い目のお人形の物語。
たおやかで優しい文章だけれど小難しいことを語る人形がいっぱい。りかさんの次にはビスクドールが可愛くてすきだった。
表題作の続きとしてまずからくりからくさがある。この本に入っているミケルの庭はそのまた続きの物語。
ようこは蓉子表記に変わって、文章も雰囲気もりかさんの懐かしさから離れてぐっと大人っぽくなる。
大人になった蓉子は、マーガレットの赤ちゃんを同居人である紀久と与希子と育てていた。
1歳児の視点の文章はやっぱり凄いと思う。それに蓉子はすごく魅力的に成長した。
紀久さんが蓉子に救われるシーンはぐっときた。紀久さんの蛇を持つ歪さに悩む描写も、痛々しかったけれど、良かった。

新潮文庫 / 2003.07.17.



梨木香歩

からくりからくさ / ★★★☆☆

2008年07月21日、再読。
文庫の発売はこちらが先だけれど、本作の主人公である蓉子の幼少期を描いたりかさんから続けて読むと何だか感慨深い。
麻子さんのお浄土送りの為のりかさんの不在はぽっかり穴が空いたみたいに淋しいけれど
登美子ちゃんの再登場(本当はこっちが先だけれど)は嬉しかった。
染色の奥行きの深い鮮やかな描写とか自然の中の生活の描写がとても美しかった。
専門的な部分が多いし、全体的にそれまでの児童文学スタイルから凄く外れているから、難しい本だと思う。
再読でもそこは相変わらずだった。
初読時からずっと大人だと思っていた4人が大学生くらいの歳なことには驚いた。
紀久さんの不器用さと与希子さんの明るさがすき。
与希子さんがあの家の4人とりかさんの暮らしに家族を見ている所に、たまらなくなって
それを重く感じてしまう蓉子の描写のナチュラルさがすき。正反対のような紀久と与希子の関係性もとてもすきだった。

新潮文庫 / 2003.07.18.



梨木香歩

この庭に 黒いミンクの話 / ★★★★☆

絵本というにはストーリーは難解で、絵もとてもしんしんとしている。
優しい物語の中に奥行きがあるタイプではなくて、たまたま絵本の形になりました、って印象。
勿論絵本だからこその良さもすごく感じたけれど、私が絵本と聞いてイメージする雰囲気とはかなり毛色の違う本だった。
普通の絵本は私には難しいから逆に有り難い。
りかさん、からくりからくさ、りかさんと同時収録のミケルの庭、と来てその更に続編。
北へ北へと向かった大人のミケルと体の中の頭のないサーディン、ちいさな女の子、
それから黒いミンクと、高熱で多分旅をして来たちいさなミケル。
ややこしいし難しいし比喩は元に気付けないし、だけど凄く魅力的で、読み始めると離さないってくらいの引力があった。
冷たい空気と真っ白な世界と現実と地続きの幻想がとても綺麗だった。ちいさな本の中にきゅっと濃密な時間が詰まっていた。

理論社 / 2008.08.12.



梨屋アリエ

スリースターズ / ★★★☆☆

ギリギリな中学生3人が携帯を通して知り合って、自殺しようとして、それよりテロしようとする、話。
上手くいかないこととかぐちゃぐちゃなことを持て余しての繊細さと
いやらしくない程度に抑えた描写での硝子細工みたいな少女たち、は、どうしようもなくて、でも綺麗だった。
真面目にいい子ちゃんを演じてきて、反動での行動がちょっとうざい水晶と
イマドキな恋愛体質の、けど素直さが可愛い愛弓と、あたしをリスペクトしなさい!が基本の嘘つきな弥生。
ばらばらな3人の、変に馴れ合わない様子が爽やかですきで
でもひたすら弥生に傾倒する水晶とか、三咲季とのことがでっかく根っこに残っている弥生とか
男の人だと思ってたと力の抜けた愛弓にやたら男前に接する弥生とか、ちょっと病的なくらい重くて、
ちょっと乱暴なくらいその実激しくない?と感じるような、少女同士の繋がりにドキ。なのに物凄くさり気なくてナチュラルな所もいい。
男前弥生にはやられた!かっこよすぎダっ!すきです、彼女。
3分の2くらいまでは星4つ。
中心に置かれた筈の弥生をちゃんと拾って欲しかったから、なぁなぁになって更に置いてきぼりなラストで星1つ減の星3つ。

講談社 / 2008.08.23.



梨屋アリエ

空色の地図 / ★★★☆☆

第52回青少年読書感想文 全国コンクール課題図書、らしい。星は、2.5寄りの3。
どうにも易しすぎて、私はそういう作品の深いところとかに気付くのがへただから、さらりと終わってしまった。
更には小学生向き、とかって考えて大人が書いた話だなってあとがきでは特に感じてしまった。
ただ、初音の再会した、男の子みたいに成長した元・泣き虫美凪がきみって呼び名に拘るところは
思い出した上でなのじゃないかなと思うと愛しくなった。

金の星社 / 2008.10.04.



梨屋アリエ

でりばりぃAge / ★★★☆☆

表紙は胃もたれしそうなピザと色だけれど、中身は爽やかな夏のお話。
冒頭は思考の飛び方が半端ない真名子の妙な不安定さに翻弄された。
説明しないで彼女の思った通りの光景が続くから起きていることの把握が難しい。
それでそのあまりのあやふやさに、14歳の視線って尊いなあとか、思う。
私はそんな硝子細工みたいな想像力なんて持っていなかったけれど。
夏期講習を抜け出して、雨の中干しっ放しな洗濯物の救出の為
知らない人の家の庭にずかずかと入って行っちゃったことから、ローニンセイとの交流がはじまる。
ローニンセイと会うようになって、真っ白な洗濯物を潜って遊んだりするうち冒頭の不安定が減って行くのが、とても自然で良かった。
お母さんのご飯に対するケチはちょっとどうなのって思ったけれど
(お弁当に冷凍食品くらいよくある普通のことだろう、とか。ピザばっかはそりゃ嫌にもなろうが)
全体に厭味なく描かれている等身大の中学生は、言葉は悪いけれど微笑ましかった。
小学1年生の弟がオウチモードとか使い分けているのにはきゅうっとした。

講談社 / 2009.03.22.



梨屋アリエ

夏の階段 / ★★★☆☆

5人の高校生の連作短編。
同じクラスの5人のそれぞれの目線が繋がってて繋がってなくて面白かった。連作のこういうところがすき。
表題作は純粋階段と窓辺の少女への一目惚れの話。
喧嘩ばっかしてる両親のオチが物凄く嫌いで、じゃあ散々喧嘩していたのは何だったの、って、青いことを思った。
怒っていても主人公で当事者である玉木の方が私よりずっと大人だ。珠生のキャラが苦手だった。
春の電車は高校生になったもののまだ馴染み切れない千映見の話。
元吹奏楽部に親近感。けどひとりで入部しますと言いに行けない所はわからないなあって思う。
卒業時の卒業生の後輩への心境が変な言い方だけれど勉強になった。珠生が明るいいい子として書かれているらしいと知って困った。
月の望潮は海に恋するシオマネキに自分を重ねた福田の話。
1番すきな話。空回りしまくりの恋とそれを語る間抜けな文章がすごく可愛くて魅力的。
雲の規格はモテ男である河野の情けなかったり健気だったりな実態の話。2番目にすき。どうやら男の子主人公の方が合うらしい。
雨の屋上は件の珠生の話。でも本当のところが見せかけよりずっとナチュラルで、良かった。
その分この話の中でも頑張る珠生に、素の方が素敵なのにって歯痒くもなったけれど。
苦手な明るさもこの話でしっかりフォローして貰えたし、全部の話に共通したピュアな青春は瑞々しくて良かった。

ポプラ社 / 2009.02.03.



梨屋アリエ

ピアニッシシモ / ★★★★☆

人に自慢出来るような特技がひとつもない中学三年生の吉野松葉と
真白の洋館に住んでいるピアノの上手な紗英の、少女同士の友情物語。
ギリギリで繊細な年頃の危うい関係性が無垢で痛々しくて胸を刺す。
松葉の家族に対するやるせなさは妙な説得力があって読んでいて心地好いものではなかったけれど
全体としてのギリギリ感を更に冷たく彩っていた。
母親のさり気ない悪意が凄まじいけれど、あれは15歳の松葉視点だから、なのだろうか。
後半で登場するセトとムゲンの大人組(少なくともムゲンは未成年ぽいらしいが)も鮮やかで良かった。
ムゲンはよくわからない人だし、ナンパ男だし、松葉に入っている私にとっては本当邪魔な登場人物でしかなかったのだけれど
声をきいてはじめて女の人とわかるセトは知的で近寄り難くて根っこは頼りになって
過去にはおっきなものを抱えていそうで、どうしようもなく惹かれた。
一度限界までな勢いで繋がり切ってしまった2人の物語は、健康的に、健全にするには距離を置かせるしかなくて
それを、でも、無神経じゃなく、爽やかに優しく前向きに描かれたラストが、秀逸だと思った。

講談社 / 2008.09.15.



梨屋アリエ

プラネタリウム / ★★★★☆

凄い凄い!ちょっと久しぶりに素敵な作家さんに出会ってしまったかもしれない。わくわくする。
不思議現象が自分の身に起こっている人、起こっている人と知り合う人、起こってゆく人、の短編集。
空に浮いていたり、羽根が生えていたり、現代モノだけどナチュラルに起こっちゃってる不思議。
ドキドキ、キラキラ、でも淋しかったり。壮大だったり。
水に棲むが特にすき。水にとける人魚姫の比喩がいい。私もとけそうになる。
どの話も、不思議現象がいくらキラキラしていても裏には影がちらちらして、それが淋しくて痛かった。
どんなに明るく見えても、どうしてもやっぱり消えなくて。けどたまにくすっと笑える一人称の可愛い文章。
バランスが絶妙、なのかな。淋しくて優しい、素敵な本でした。

講談社 / 2006.06.05.



梨屋アリエ

プラネタリウムのあとで / ★★★☆☆

プラネタリウム、と同じく不思議が身近な人たちの物語。踏切少女はプラネタリウムにもいた気がするけれど同じ子だろうか。
笑う石姫はしこりを石にして生み出してしまう女の子を、地球少女はちっぽけな自分を持て余して身体が膨張してしまう少年を、
痩せても美しくなるとは限らないは脂肪を吸わなければ死んでしまう吸脂鬼を、好き。とは違う、好きは悲しさから脱皮し続ける少女を
それぞれ主人公、または主人公に深く関わる人間として配置して、展開する。
1話目と4話目の不思議の、ひんやりした美しさがすき。3話目はタイトルが基本の主人公の女の子が潔くて清々しくて健気ですき。
吸脂鬼の正体はいきなり生々しくて気持ち悪くなって残念だったけれど。
2話目が、いちばんすきだ。
ひたすら地球の未来を案ずるヒロインの電波少女がうざそうでうざくなく、可愛い。
本当のところ、には哀しくなったけれど、包み込むような母性的な部分と頭の足りないお馬鹿っぽいところが絶妙で、愛しかった。
それはそうと眞姫(まひめ)とか美香萌(みかも)とか愛理衣(めりい)とか久覇(くは)に季羽(きは)、と
名前がいちいちやたらすごいのは、仕様か?

講談社 / 2008.10.18.



奈須きのこ

空の境界 the Garden of sinners 上 / ★★★☆☆

同人界出身の作家さんらしい。本作も元々はホームページ上で発表されたりしたらしい。
それを感じさせない、全く違和感なく普通に読める文章にまず好感を持った。
むしろ硬質なくらいの文で浮ついた感じのしないところがいい。堅すぎて最初は入るのにちょっぴり苦戦したくらいだ。
人殺しに関する軽くも重くもない冷めた感じが強いて言えば同人ぽいかなと感じた。
2年間の昏睡から奇跡的に目覚めた元二重人格者の両儀式の物語。
過去の記憶はあるけれどそれを自分だとは実感できない式と、色々と普通じゃない彼女を普通に受け入れる黒桐幹也と、
眼鏡の有無で口調の変わる魔術師の蒼崎橙子を軸にオムニバスちっくだけれど長編だなって雰囲気で展開する。
人の生死が関わって来る割には終始静かで落ち着いていた印象。
とりあえず、式の着物に皮の上着っていうファッションはどうなんだ…。
人の意識が空を飛んだり人の手足が触れられもせず千切れたりしても
超能力の要素が大きいし妙なリアルさが消えないから、ファンタジーっぽくはない。
魔法使いなんて言葉が平然と出て来るけれど、それもどこか比喩っぽいと感じた。
とんでもないことが起こっていても地に足の付いている風なところは安心して読めていい。
ただ安定している分ハラハラとかドキドキの要素は内容の割にかなり抑えられていて盛り上がりに欠けると思った。

講談社NOVELS / 2009.05.20.



奈須きのこ

空の境界 the Garden of sinners 下 / ★★★☆☆

上巻に比べて盛り上がりポイントが度々出て来るようになって、物語に勢いが生まれたと感じた。
ただその代わり安定し切っていた文章が若干不安定になってしまったように思った。難しいなあ。
上巻からの続きの、生まれては死んでを日々繰り返すマンションでの闘いに
鮮花をメインに据えて学院の妖精さん事件を追うエピソード、それから四年前の時点から仕込まれていた人食いとの闘い、と
それぞれのお話はそれぞれ違う雰囲気で展開するけれど、でもやっぱり続き物としてしっかり機能していた。
殺人を嗜好するとしつこいくらい書かれていたから人を殺したことのない式っていうのが意外だった。
ブレーキが効かなくなると本当にとことん暴走する幹也はすんごい走ってた。薬を試すのも越えてはいけない一線だと思う…。
善悪がとても曖昧な作風だと思う。人殺しはいけないって辛うじて幹也は言っているけれど、それもそんなに強くない。
式はそれに縛られるしその言葉自体は大事にされているけれど、根本的な意味はちょっと違うと思うし
人じゃないから殺人じゃないとかもこれまで結構言っていたし…。妙に乾いた感じ。
式と幹也のハッピーといえばハッピーなのだろうかって感じのラストも何となくすっきりしなかった。小難しい理屈も相変わらず難しかった。
色んなキャラが死んだり死んでなかったり忙しい中、学院のエピソードがとてもすきだった。
兄である幹也に恋する勝気な鮮花がカラッとしていてとても好ましい。
式をライバル視していたり、でも個人としてはすきだったり黙っていればいい所のお嬢様なのにっていうのもカワイイ。
実の兄への恋もじめっとしていなくて、本質はどうにも危うい感じなのに何だか明るくて
だからそのエピソードの彼女の締めもとても清々しくて、良かった。

講談社NOVELS / 2009.05.23.



七河迦南

七つの海を照らす星 / ★★★☆☆

第18回鮎川哲也賞受賞作。装丁がすごく綺麗で表紙借りをした。
児童養護施設「七海学園」の今と昔の七不思議、な連作短編である。
北沢春菜24歳保育士が、小学生から高校生の学園の子供たちとわいのわいのする中で謎に出会い
児童相談所のやたらのほほん印な海王さんとそれらを解いていく。
のどかでのんびりした学園で、春菜もそうかと思いきや若干口が悪いというか子供とやたら対等な人なことに少しびっくりした。
二人称あんたとか、凄いな。
怖がられる少女の元へは慕っていた先輩が蘇り、廃屋の幽霊は指輪物語と二人のロッテが掛けられていた。
珍しく優しいお父さんが出て来る血文字の文子は微笑ましくて、夏期転住を舞台にした幻の新入生は夏全開で爽やか。
学園の子の恋愛禁止に抵抗した開かずの門の浮姫は、浮ついたままで終わらないほろ苦いラストが素敵で
泣き虫少女を助けてくれたトンネルで囁く天使の正体に、痺れた。蘇った先輩と天使様のエピソードが特にすき。
前者は凄く綺麗な少女同士がとても好みで一話目にして掴みはばっちりだし、後者の儚くて繊細な雰囲気にもやられた。
彼女の最後のメッセージは陳腐に感じられたけれど彼女の真っ直ぐな言葉だったのだろうって思える。
そこで、作者のメッセージとならないところはとても凄いと思った。
それらを繋いで、最後に解き明かされる、解決していなかった全てのおまけ的謎については読んでいて意外性はなかったけれど
途中の特に短冊のエピソードが引っ掛かっていただけに、掬い取って貰えたような気がして嬉しかった。
本当は、引っ掛かりそのものは解決していないというか、そんな必死なメッセージを謎のままとか言っていていいの?っていうのが
少なからずあったのだけれど、何だか、上手いこと誤魔化されてしまった。
全ての子供を助けるとか介入するとかいうのは難しいって理屈ではわかっているのだけれど。
施設の子たちのみの行事の描写だけ、受け入れ辛かった。
そんな中でしかも8位でどうして喜べるのか、燃えられるのか、わからない。
所詮小さな箱の中とか、普通になるのってそんな簡単じゃないとか、思うけれど…やっぱり私が駄目なのかな。
手助けは手助けでしかなくて、七海の子たちはああ見えて自分でも普通になろうと必死になって頑張っているのかもしれない。
それはそうと、やたら拘りの感じられる回文については凄いけれどよくわからない、と思っていたのだけれど
最後の最後に明かされたそれに思わず見返して、驚いてしまった。そして喜んだ。全然気付かなかったやられた!

東京創元社 / 2010.06.04.



南条あや

卒業式まで死にません−女子高生南条あやの日記 / ★★★★☆

そういう方面の人の間では有名人な南条あやさんの、亡くなるまでの3ヵ月ちょっとの日記をまとめた本。
これを図書館で借りる前、サイトも少し見たけど、本の方が読みやすかった。飲まれるように暗くもなりにくい。
只、本は本当にほんの一部しか載せられてない感じがして、そこは残念。
サイトでは自殺じゃないんじゃないかって方が強いみたいだったし。。
そういう説明とか一切ないからわからない人は本当わからないと思う。私はとりあえずまたサイトを改めて見るつもりです。

途中出てきたお父さんの注はいらないと思う…。せめて最後にとか最初に入れてほしかった。一気に落ちる。
南条さんの名誉より自分の名誉に見える。だって書いたのは南条さん本人なのに。

南条さんが、たくさん感じて苦しい思いもしてることはたまに出て来るそういう言葉とか薬、リスカとかで分かるのに
それを全面には決して出していなくて、基本は明るくて楽しい文章で、読者の為の日記で、
17日から30日の間に何があったの…?ってくらい、最後の日記も呆気ない。
いつも通りの延長線な文章。軽さ。もっと苦しかったのかもしれないのに。弱音を弱音として、書かなかったのか、書けなかったのか。
ナチュラルな文章はこれを文才というのか、てくらい研ぎ澄まされていて、
自分を傷つける描写は痛くて仕方なかったけど他はたくさん共感した。似た気持ち、私も知ってる。…少しは。多分。
私は普通に生きてるから、痛いの嫌だとも思えるから、本当のところは全然わかっちゃいないのかもしれないけど
いろんなこと、似てるかもと思う度安心するのは何でだろう。

こんなに素敵な人なのに、どうして南条さんにとってこの世は生きていきにくかったんだろう。解説の香山リカさんの言葉に頷く。
精神科医として“手ごわい”相手だという文に、やっぱり、と思う。
私が共感を覚えたりすきだなと思う人は結構な確率でこの“手ごわい相手”に当てはまると思う。
だって、敏感な人、繊細な人がすきだもの。
でもそういう人って、それをそのまま受け入れようとするくらい大きな人とか適合した人から見たら、
やっぱり面倒じゃないですか。重荷になりませんか。
だからってまともに共感するような人は弱いからそんなに広くなれない。受け止められない。結果、救われない。
引用された文が正しいのなら、みんなに支えてもらわなくちゃいけない。みんなに抱っこしてもらわなきゃいけない。
そりゃ、そうしてもらえたら安心出来るかもしれないけど、…やっぱり、難しいんじゃない?と思う。
私はそんなに大事に大事にされるような人間じゃない。
南条さんは、そうされてもいいだけの魅力、力、才能も、あったのに。きっと。それでも難しい。
残念、て言葉じゃ軽いけれど。…切なく、やるせなく、淋しく、なる。

新潮社 / 2006.03.14.



新津きよみ

スパイラル・エイジ / ★★★☆☆

40歳の3人の女の物語。でも変におばさん臭いとか生々しいとかはなく自然に読めた。
不倫をしていた前島美樹と、美樹の不倫相手の妻である沢口暁子と、殺人者で妊婦な岩井雪乃の話。
美樹は元同級生の雪乃をひょんなことから匿い
そのままズルズルと彼女が子供を産むまで警察に捕まらないよう手助けをすることになる。
一方で暁子も、義母や義妹と難しい日々を送っていたり、かと思えば美樹も実家の出戻りな姉と衝突したり。
どちらも雪乃っていうキィを挟みつつも身近な家族との微妙な関係がメインに描かれていた。
その上で明るくはなくてもじめじめしすぎない、嫌悪に傾かない雰囲気が良かった。
物語の基本部分は結局シンプルで終わったけれど、だから物足りないとか薄いとかいった風には感じられなかった。
さすがに20年以上ではなかったけれど、身近に長生きして鯉のようになった金魚がいたことがあったから
その辺りの描写には何だか不思議な懐かしさと親近感を覚えたりした。

講談社 / 2009.12.10.



西尾維新

刀語 第一話 絶刀・鉋 / ★★★☆☆

12本の刀を求めて、刀を持たない剣士と奇策士が旅する大河ノベル第一巻。
面倒臭がりな七花のキャラは割とすきだし、七実は突き詰めたらもっとすきな予感だし
ラストシーンのとがめに対する七花のはじまりの台詞は可愛くてニヤッと来たりしたし
試験後最初の指示の七花ととがめのやり取りには単純でありつつやられたーと思ったけれど、いかんせん、全体がひたすらぬるすぎた。
第三者(作者?)視点で〜だろうか、みたいな語り口が出たのも頂けない。一瞬混乱した。
文句を言うとかでなくこれはこれでって気にさせられたけれど、同時に、続きに手を出したいと思わされるものでもなかった。

講談社BOX / 2010.12.15.



西尾維新

きみとぼくの壊れた世界 / ★★★☆☆

シスコンでブラコンな兄妹と、その友人と幼馴染み、それから保健室のひきこもり、による
学園内密室殺人事件のもんだい編から始まるクイズみたいなお話。
あからさまに問題、解答とあれば、ミステリにまだ馴染み切れていない私でも推理をしようとしたりする訳で
でもそのわかりやすい構成とか煽りに対して、真相は何だか呆気ない感じで
しっかり着地しない終わり方のせいもあって、不完全燃焼な読後感だった。
ただ、犯人を当てて犯人が捕まるとか自首するとかしても、それはそれで興ざめになったかもしれないという気はする。
だから多分壊れているこれできっといいんだろうと思う。
ラストの妹、彼女、好きな人、が同時に在って平和だと言う様刻のシーンがあまりにも平和であまりにも壊れていて
いっそ清々しくてすきだった。
べったべたで大きなお友達の理想の妹妄想のような夜月は若干胸焼けというかよくわからなかったりしたけれど
僕っ娘で理屈っぽいことを延々と喋くる黒猫は鬱陶しいのに嫌いになれないちょっと面白い子で良かった。
色々投げっ放しな気がするけれど、日常に埋もれたヒントを見つけたり
むしろいっそミステリに分厚く塗られたような日常部分を楽しんじゃったりするのが、この本の楽しみ方なのかな。

講談社NOVELS / 2009.11.04.



西尾維新

クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い / ★★★☆☆

どこまでが嘘でどこまでが本当かわからない首なし死体と密室のミステリ。第23回メフィスト賞受賞作であり、デビュー作である。
絶海の孤島に隠れ棲む令嬢が5人の天才女性たちを招待したことから始まる連続殺人。
全体的にあちこちの台詞がどこか独特でラノベっぽくて
特に玖渚友は「僕様ちゃん」って一人称からして個性的とかいう次元をずばーんと超えていて
第1巻である筈なのに続きみたいな始まり方をしていることとも相俟って、馴染むまでちょっと時間がかかった。
語り部たるいーちゃん(♂)が彼女の髪を器用にくくったり、お風呂に入らせたりするのも
気持ち悪い、まではいかないのだけれどちょっぴり似たタイプの違和感だった。
ミステリだから殺人事件が起こるのはいいとして、その始まり方とその時の登場人物たちの反応にも予定調和っぽい嘘くささを感じた。
そういう、読み易いけど軽い…って印象が変わったのが
天才料理人たる弥生さんが追い詰められて自分の突っ走った推理をぶちまけたシーンである。
彼女の不安が物凄く直球で訴えられていてとても引き込まれた。
最後の最後に出て来ただけでしっかり存在を主張していた哀川さんも映えていたと思う。
各章の扉を飾っている登場人物の紹介イラストもポップで、単純な線でくっきり描かれているところとか可愛くてすきだった。
最初の方の印象から一転、次巻も読んでみようと思える本だった。

講談社NOVELS / 2009.06.19.



西尾維新

クビシメロマンチスト 人間失格・零崎人識 / ★★★☆☆

第1巻から2週間後、いーちゃんの大学のクラスメイトたちの連続殺人事件なお話。
いーちゃんと似ている殺人鬼な零崎、和風趣味の隣人みいこさん、潤さんとビジネスライクな関係の刑事な沙咲さん、
今回のメイン事件の被害者となるクラスメイトたち、と新キャラがいっぱい。でもややこしくはなかった。
大学生のいーちゃんがほぼ初対面な女の子たちに対していちいちファーストネームでしかも基本ちゃん付けで呼ぶのは
ちょっと気になったけれど、まあ、そういう奴なのだと受け入れることにする。…ちょっと気持ち悪いけど。
ヒロインな玖渚は今回出番がとても少なかった。
あの口調はいちいち鬱陶しいのだけれどあまり出て来ないのもそれはそれで淋しいみたい。難儀。
笑顔しか知らない、っていう欠けっぷりがわざとらしすぎない絶妙な書かれ方で掴まれる。
あまり書き込まれてはいないから余計に、つい気になってしまう。
何度か出て来た「何々ですか?何々なんですか?」っていう台詞とノリツッコミは一々寒かったりしたけれど、
潤さんが事件の本当の裏をしっかり解き明かした途端
そういうのがどうでも良くなるくらい物語全体が嘘みたいに鮮やかになって、そこがとても良かった。
いーちゃんが零崎に説明した、上手く誤魔化した真相には言うなればあっそうとしか思えなかったのに終章でそれらがひっくり返る。
ミステリの真相にしっくりスッキリするって珍しいから新鮮。
情欲で人を殺した、とかいう理由の部分はつまり結構酷いものなのだけれど
意識出来ないくらいの曖昧さを持ったその前の推理よりずっと納得出来てすきだった。
やたらマゾっているいーちゃんはよくわからなかったけれど(指折りすぎ…!)壊れたむいみちゃんの部屋の描写は来るものがあった。
喋り始めたら駄目だったけれど。
それにしてもいーちゃんの嘘は凄かった。堂々と何してんだあんた、っていう。
潤さんのスッキリとか、こういう驚きがあるから前半はお軽さが拭えないけれど最後には次もまた読みたいって思うんだろうな。

講談社NOVELS / 2009.07.23.



西尾維新

クビツリハイスクール 戯言遣いの弟子 / ★★★☆☆

紫木一姫を救う為、いーちゃん、潤さんと一緒に澄百合学園へ女装潜入するの巻。
いきなり最初から読み易くて、前半と後半で印象もそんなに変わらなくなっていてちょっとビックリした。つまり寒さが格段に減っていた。
主要ゲストの玖渚似な一姫がそんなに特殊口調じゃなかったからとかかな。
いや、とは言っても普通な口調でもないのだけれど
それまでの方々が濃ゆすぎたというか、このくらいなら何でもないというか、なんというか。…染まっている、か?
でもその代わり、最後の覆しがないのはまだしも終盤で少し置いてきぼりっぽく振り落とされてしまったのが残念だった。
潤さん、白熱しすぎダヨ。その上蘇生の軽さがちょっとあまりにもあまりで。いーちゃんもテンション高すぎダヨ。どうした。
そこは勿論全体的にこれまでと違って妙に熱いというか全力でツッコミキャラになっているいーちゃんは
ついには口調すら変わってませんか?ですらあって、基本新鮮だった。
一姫の必死な隠し事と潤さんをやたら大切にしているところには結構掴まれた。
だからこそ潤さんのお叱りも懐くな辺り特にちょっとグワッと捩じ込まれたりした。
…私はとにかく潤さんがすきらしく、いーちゃんと潤さんのじゃれあいとか
潤さんがやたらお茶目だったりだいすき言ってたりでいっぱい出ていて幸せだった。

講談社NOVELS / 2009.08.06.



西尾維新

サイコロジカル(上) 兎吊木垓輔の戯言殺し / ★★★☆☆

前半いまいちでも終盤で挽回することの多かった戯言シリーズ、今回は上下巻構成なのでいまいち…?と思ったまま終了してしまった。
でもガッカリより想定の範囲内だから下巻に期待。
どういうお話なのか、あまり把握出来なかった。むしろまだ殆ど何も起こっていないようなものだし、ラストで漸く動き出した感じである。
作中にあった、半分越えても誰も殺されない推理小説、じゃないけれど。なんかもうぴったり。
上下巻をそれに当て嵌めるのはまあちょっと反則かもだけども。
玖渚のかつての仲間である兎吊木を救出しようと向かった、謎めいた研究所でのお話。
玖渚のことが本当は嫌いなんじゃないかと問われるいーちゃんのお話。
あちこちでらしくなさを発揮している玖渚は、そうでないシーンでも何か違和感な雰囲気だったりしてそっちの方がむしろ気になった。
保護者役で同行した音々さんの、いーちゃんの生き方に対する説教が良かった。ちゃんと叱られる主人公は好感が持てる。

講談社NOVELS / 2009.08.22.



西尾維新

サイコロジカル(下) 曳かれ者の小唄 / ★★★☆☆

登場人物が多すぎた。長い割にいまいち詰まっていないというか入り込めず、けど終盤で挽回、は健在だった。
クライマックスのいーちゃんの頑張りというか暴走というか弾け飛んじゃった、なところには引き込まれた。
石丸小唄と協力して玖渚の為、真犯人を見つける為にいーちゃん、ひたすら奔走するの巻。
ちょこっとだけ再登場した姫ちゃんが嬉しかった。
これまでのキャラも名前だけの再登場なら度々あったけれど、一員としては初じゃなかろうか。…いや一員とは言えないか。
髪と腕の1つ目の真相と紐をどうするのって疑問は考えなくても浮かんじゃう程度のものだったから最初は軽くがっかりしたけれど
それで終わらないのが本当いいところで、けど今回更なる真相があまり明かされなかったから、やっぱりちょっとがっくり来たりした。
赤色の真実は全然考えてもみなかったから驚いた。ヒントには赤色だけじゃないのかーとかしか思ってなかったよー
逆にちゃんと記憶出来てるいーちゃんに、何かあるのか…?と疑ったりしてたよー。前例もあるし。引っ掛けだったっぽいが。
玖渚といーちゃんの昔のことも少しだけ語られて
僕様ちゃんじゃない玖渚はまだ謎っぽいままだけれど、だからもうちょい先が気になる感じ。
相変わらずの潤さんといーちゃんのノリの良いやり取りにニヤけた。でも章の扉イラストでネタバレは勿体ないと思うー!
殴ってやるから寄って来い、わかった殴らないから寄って来い、に素直に応じるいーちゃんが可愛くてすきっ。

講談社NOVELS / 2009.08.27.



西尾維新

ヒトクイマジカル 殺戮奇術の匂宮兄妹 / ★★★☆☆

死なない少女の研究のモニターに誘われたいーたんが、一姫と春日井さんと一緒に診療所跡を訪れる今巻。
玖渚が何だかヒロインじゃない。違ったのか?むしろみいこさんルートなのか…?蒼も出て来てどうにもよくない人物みたいな切り口。
けどいーたんがその直後でも内緒で行動したりしなかったから
それ自体は物語の流れ的にちょっぴり意外だったのだけれど、何だか安心した。
いーたんに妹がいたらしいことが明かされたりもして、情報が小出しだからついつい次巻とかが気になっちゃう仕様。
玖渚の存在がどう落ち着くのかも含めて。
メインの物語としてはラスボスの登場と思わぬ人の死が意外だった。
特に後者はあまりにも呆気なく訪れて、立ち尽くすみたいな心境になった。
傍観者だったいーたんは今回もまた終盤で中心部に突進む。
すかしているから叱られるのはいいことなのだけれど、みいこさんの言葉がスカーンと真ん中に入るのもいいことなのだけれど、
その中身が正しすぎて熱血すぎて今回は大事なところなのに入り込めなかった。
物語の中でこれは物語だと世界を語られるのも、筆者の影がちらつく訳ではないからそんなに気にならなかったとはいえ
アプローチとしては面白いかもしれないけれど、必要性を感じられなかった。
でもそんなことよりいーたんが頑張るようになったら潤さんがあんまり出張らなくなった気がしてそれがとても残念。
いーたんとしてはいつまでも潤さんに頼ってちゃいけないのかもしれないけれど、物語としてちょっぴり寂しく感じる。
パンチが足りない感じ。真相は今回そのままで、潤さんの更なる真相披露もなかったし。
でも代わりにラストにあった、これまで名前は出て来ていたけれど未登場だった崩子ちゃんのちゃっかり登場にはちょっと楽しくなった。
口調に癖がなくてでもキャラクターには癖があって、なんか可愛くて良かった。次巻ではメインの1人を張るかもと思うと楽しみだ。
木賀峰助教授の似非占い師な知ったかには最初苛っと来たのに段々気にならないお間抜けキャラにしてくれた、
いーたんの突っ込みモノローグパワーも素敵だった。

講談社NOVELS / 2009.10.05.



西尾維新

ネコソギラジカル(上) 十三階段 / ★★★☆☆

ラスボスに招かれて再び澄百合学園へ、な最終楽章の始まり。
初っ端はもろにみいこさんルートへ展開していて間抜けにもまだびっくりな心境である。
でも彼女の駄目さの描写とか、いーたんに駄目の理由を真摯に説明してくれる辺りは結構すき。
何だかベタっぽくてこそばゆくもなったけれど。
ヒロインというよりもう因縁な感じの玖渚はまだやっぱり溜めていて遠くにいる。焦らされ気分。
第1巻の懐かしい人たちが結構再登場されたり、なのに若干思い出し切れてなかったり
ラストのビックリに至ってはこの人ビックリな人だっけなんて風に思ってしまうという何とも残念な記憶力で勿体ないことをしたりした。
でもだからって物語自体の面白さがマイナスにまでなることはなく同行することになった崩子ちゃんとか、
そこにいるだけで嬉しくなっちゃう潤さんとか、
へらへらハーレムみたくしていても何故か嫌味なく可愛いというか微笑ましいというかいい感じに力の抜けるいーたんとか、
相変わらずの軽くて勢いのある語り口とか展開に引き込まれて、ぐいぐい読んじゃった。

講談社NOVELS / 2009.10.18.



西尾維新

ネコソギラジカル(中) 赤き征裁vs.橙なる種 / ★★★☆☆

サブタイははじめの章で終わる。求む潤さんの出番。
負傷者が出て、また行方不明者が出て、それから死者が出て、十三階段の面々と順繰りに出会って、あっさり終わって
終わっていなかった、中巻である。
周りの人の被害を考えれば事故頻発性体質ないーたんのヒロインな思考にも無理はないのかもしれないけれど
それでも読んでいる方としてはまだ抜けないのかと苛っと来たりもするから
おばかなやり取りとかハーレムさは、いい具合に気が抜けて、すきだなと思う。
はじめの頃は馴染み切れなかった、玖渚をはじめとするキャラクターの皆さんのぶっ飛んだ仕様も今となっては全部愛しい。
1巻なんかでは違和感だった殺人事件にも人の死にも動じなかったところも、これは今巻でじゃないけれど、段々納得出来たし。
西尾維新は凄いと思う。どうにも基本が軽いけれど勢いがあって、駄目な方向に浮ついてはいなくて、そういうとことてもすきだと思う。
4つ星付けられないのが自分でちょっぴり淋しいくらい。
想影真心は、私の中で心視せんせーとごっちゃになっていたみたいで前巻ラストのびっくりはまだしも、
今巻では新キャラとしてちゃんと整理して受け入れられて良かった。
みいこさんルートを受け入れられたと思ったら別の人にプロポーズとかしてる戯言遣いには盛大に突っ込みたくなったけれど。
ちょっと待てお前それは違うって方向じゃなかったのかと…!せっかく納得したのに。全くもー。
色んな人に愛してるって言って回るのとは訳が違うっつうの。全く全くもー。
明確にはなっていないけれど狐面の新式、旧式、創った、なんていう単語が気になりつつ
潤さんの確執が父親って似合いすぎてうわーんとか思ったり、再登場された人間失格と欠陥製品の掛け合いが素敵すぎて
仲良し素晴らしい!とか嬉しくなっちゃったり、何だかとっても楽しんだ。

講談社NOVELS / 2009.10.20.



西尾維新

ネコソギラジカル(下) 青色サヴァンと戯言遣い / ★★★☆☆

戯言シリーズ、最終巻。最終回というのは難しい、というのが正直な感想。
そもそも今巻は冒頭辺りから既にそれまでの勢いが落ちて感じてしまっていたのだけれど
そのまま挽回は出来なかったかな…という、印象。すきだったから、言うのも心苦しいけれど。ガッカリより淋しい。途方もなく。
玖渚との決着に、真心を救う為の色々、名誉挽回な潤さん。どれも弱かった。悪いと言う程でない代わりに、良いとも思えなかった。
特に大すき潤さんのここぞの活躍が喜べなかったのが自分でつらい…。
それこそ少年漫画のお約束じゃないんだから、って感じで脱力した…。
いーたんの妹の具体的なあれこれがぼかされたまま終わってしまったことも若干肩透かしだ。
改めて考えると、やっぱり私は日常のやり取りがすきだったんだろうなと思う。
事件があっても、そこに乗っかったしょーもないところがすき。
シリアスが一切なかったらさすがに浮つきすぎと思うだろうけれど、シリアス部分がメインでも同じように物足りない。
1番楽しめたのは潤さんと小唄さんと真心のその後かもしれない。
いっそその真心のドタバタを見たいと思った。むしろ続編か別シリーズ的に。単発でもいいから。きっと可愛い。

講談社NOVELS / 2009.10.22.



西尾維新

零崎双識の人間試験 / ★★★☆☆

殺人鬼の集団、零崎一賊の長兄である大鋏の使い手、針金細工のような零崎双識と
お茶目な普通の女子高生だった筈の無桐伊織の物語。
双識は戯言シリーズにも登場した弟である人識を探している中
なりかけな伊織に出会い、彼女を妹としてお兄ちゃんぶったりなんかしながら
太刀、薙刀、弓矢を操る刃渡、薙真、弓矢の早蕨三兄妹に復讐されそうになる。なり続ける。
人識が欠陥製品を話題に出したり、死色の真紅に至ってはしっかり登場されたりをはじめ
戯言シリーズを知っている人間には嬉しいことがちらちらあった。
そこと、双識さんと伊織のやり取りがお間抜け可愛かったところが良くて、でもそれだけだった。
肝心の芯をあまり感じられなかったというか
思わせぶりがそのまま思わせぶりな結果に終わったという感じで、普通に厚さはあるのに薄味だった。

講談社NOVELS / 2010.10.19.



西尾維新

新本格魔法少女りすか / ★★★☆☆

戯言シリーズがすきだったのだけれど、その後読んだきみとぼく〜といい、本書といい
戯言のすきが夢だったみたいに微妙な感じに楽しみ切れず、何だか困ってしまう。
どっちも続編まで手を伸ばしたら印象が変わったりするだろうか?
戯言も最初はそこまでじゃなかったし、でも戯言は2巻を読んでみようと思わせるものではあった、とか思いつつ。
魔法の国は長崎にある。
そこからやって来た魔法使いの水倉りすかと、
ただの人間だけれど彼女を自分の駒(でも扱い切れない)と称する供犠創貴(クギ・キズタカ)の物語。
語り手である創貴は口の達者な少年で年齢が出てびっくりの10歳である。
色々10歳らしくないけれど10歳とちゃんと頭に置いて読むと印象が変わったりしたりしなかったり。
りすかは同じく10歳、でも27歳にもなっちゃう正に魔法少女である。
電車の人身事故に、少女専門誘拐犯に、不運を引き寄せるお兄ちゃんの3本立て。
電車は考えるまでもなく浮かんだ人が犯人だった。嬉しいんだか悲しいんだかわからない…。
子供向けアニメのような甘いファンタジーの中にある、それで収まらないもの、を期待したのだけれど
血がどばどば出てそれがキィになるようなところがありつつもそこまでの意外なスパイスは感じられなかった。
敢えてだろう間抜けで意味不明な呪文にも、特に感じるものがなかったし
10歳のふたりにいまいち10歳ならではとか、だからこそを感じられなかったのも残念。
物語はまだ始まったばかりで、りすかのお父さん探しをメイン目的に続くモード満載な作り。
終盤では長崎の城門を越えて来た6人の存在も明らかにされているけれど
続きが読みたいって思えるタイプの本じゃなかった。どうしようかなあ。

講談社NOVELS / 2009.11.16.



西尾維新

傷物語 / ★★★☆☆

阿良々木暦と、後の忍であるところのキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードの物語。化物語の前日譚である。
こよみヴァンプのみの収録な為、それのみで結構長い。
読んでいて長いと感じることは読み易さ故に全くなかったけれど
ちょっとぼやっと引き伸ばされたような印象も、正直なところ受けてしまった。
羽川との出会いの物語でもあるということで、ひたすら暦とキスショットと羽川だらけで、
はじめは他キャラが出て来ないところに物足りなさを感じたり過剰なパンツ描写に軽く引いたりしたものの、段々慣れた。
にしてもこれだけ仲良くラブコメしていて化ではああいう結果って、切ないなあと思う。何という思わせぶり。
向こうでは羽川のこの頃の記憶は操作だか忘れただかとされていたような気がしていたのだけれど
だから読んでいる最中はそれで納得したりしていたのだけれど、仲良しのまま終わってしまって、拍子抜けした。記憶違いだったか…?
それはそうと男子高校生は普通にひとりでえろ本を買っちゃうのか、若いのに度胸あるなあ、なんて
変な感心をしたり勉強になったりも、した。…フィクションだからか?
阿良々木くんが間違いに気付くきっかけのシーンが抜きん出た迫力で良かった。
それまでは学園異能バトルとかしつつも基本がどこまでもまったりだったから
ふいにど真ん中に危ないものを投げられたようで、掴まれて、良かった。

講談社BOX / 2010.06.27.



西尾維新

猫物語(黒) / ★★★☆☆

そういえばまだしっかりとは語られていなかった、のだっけ?と多少混乱してしまったくらい
これまで露骨に匂わされていたり触れられたりしていた、阿良々木暦、高校3年生のゴールデンウィークの物語。
羽川翼の、猫にはじまり猫に終わる、第禁話つばさファミリーである。
正しくて正しすぎて圧力の半端ない、怖いとか気持ち悪いとかの域にまで達している羽川の、更に踏み入った家庭事情と悪戯三昧の物語。
色々あったけれどリセットして終わりみたいな何とも言えない読後感だった。前半の日常(以下?)パートのぐだぐだなのんべんだらりっぷりが凄かった。
それでも読み易さは健在だったし、つらつらと普通に飽きずに読み進められたのは良かった。
後半のこれは恋じゃない加減は多少面倒臭かった。
先に出ている(時系列的にはこれより後の)ひたぎさんがいるから無理なのはわかっているんだけど
羽川さんを正規ヒロインにしてしまえば良いのになあとかつい思ってしまった。
阿良々木さんのお説教は今回のお話のキモだったのだろうけれど、あまりすきではなかった。
真っ当なことを言っていそうで冷たいような、深い思いやり故と見せ掛けていつつも軽薄っぽいとか、
わざと煽るような言葉を選んでいるのだろうけれど普通に煽られてしまった。
そのままフォローもなかったし、すきだとか言ってもやっぱり自己満足で自己陶酔で一方的な印象だ。
作中で阿良々木さんが自分でも言っているけれど、だからありって訳ではない訳で。
…そうやって考えると、阿良々木さんにはひたぎさんの方がやっぱり相性が良いのかな。

講談社BOX / 2011.08.28.



西尾維新

化物語(上) / ★★★☆☆

曰く、怪異を主題に据えた3つの物語…ではなく、馬鹿な掛け合いに満ちた楽しげな小説を書きたくて書いた、な3つの物語。
ひたぎクラブ、まよいマイマイ、するがモンキーの3本立て。
怪異は怪異としてしっかり在るけれど怖くはないし、かと言って変に軽すぎると感じることもなく、ふしぎ怪異をほへえと追いつつ
馬鹿な掛け合いであるところの登場人物たちのやり取りを楽しんだ。
最初は入り切れずにお寒く感じる部分もあったけれど読み進めるうち掴まれて気が付けば癖になっていた。
読み易さも勿論あるのだろうけれど次から次へとページを捲りたくなるところはさすがだと思う。
ひたぎはメインヒロインの割にページ数が少なめで若干あっさりな印象。逆に駿河は長すぎて後半のバトル辺りで間延びを感じた。
その為、と言ったらあれだけれど真宵のエピソードがいちばんすきだった。
小学5年生と云々連発で阿良々木さんに軽く引きつつも癒された。伏線もオチもストレートだけれどその分ストンと馴染む。
ほんの少しとはいえアニメちら見の前知識があったこともあってかどの話も伏線に関してはわかり易かったけれど
かと言って真相が読めた訳でもなかったから、しっかり驚いた。特にアニメ情報が全くなかった真宵エピソードで。
地の文の過去形な語り口が妙に魅力的で、鋼やら軍曹さんやらのネタに、あまりお上品じゃないネタと、暴走している辺りも楽しく読めた。
阿良々木さんがいーたんと違って好意にやたら鈍だったりせず自意識過剰かと思いつつ悶々としたりするのも新鮮で面白い。
駿河の結末がそれだけのことをしたとはいえ何と言うか後味が悪くて、ちょっぴり痛くなったりしたけれど、それはそれで、いざ下巻!

講談社BOX / 2010.03.20.



西尾維新

化物語(下) / ★★★☆☆

上巻に続き、下巻も良い西尾維新だった。嬉しい。なでこスネイク、つばさキャットの2本立て。
下品なやり取りが暴走しつつも下品すぎず、痛いシチュエーションも程良く面白いのスパイスになっている。素敵。
その回の主になるキャラだけじゃなく長めの話ではこれまでのキャラとのその後にも触れているのがとてもすき。
特に神原とのやり取りがいちいち可愛すぎる。
可愛い、って表現を阿良々木さんが当たり前のように独白するのが何かおかしい。
楽しい、と断言する真宵との会話にも似た部分はあるけれど、あれは相手が小学5年生故にちょっとヒクッと来る。
それ込みで嫌いじゃないけれど。
阿良々木さんが鈍感じゃないのは対ひたぎさんオンリーとわかって若干ガックリ来つつも
初デートのやり取りをはじめメインヒロインなひたぎさんとのやり取りがしっかり断トツで可愛かったのが好感度大だった。
神原とのやり取りとか撫子単体の可愛さなんかとはそもそも舞台が違うとは思うけれど、それ込みで素敵。
お父さんの前でお前って呼ぶ方が会話の内容よりよっぽど、と突っ込みたくなったことと
どうにもバトルシーンになるとパワーダウンしてしまうところは残念。
神原エピソードの後味の微妙さを掬ってくれたところと、思わせぶりだった羽川エピソードを回想って形でなく披露してくれたところがすき。
忍だけは思わせぶりのままだけれど、妹2人と合わせて続編(?)が出ているようだから次はそこへ行かねばっ。

講談社BOX / 2010.03.23.



西尾維新

偽物語(上) / ★★★☆☆

ファイヤーシスターズの実戦担当、阿良々木くんの上の妹である火憐ちゃんのかれんビーな上巻。化物語後日譚その1。
上手くセットで借りられなかったのだけれど上下巻とはいえ続く、で終わらなかったから問題なし。
続きもので間が空くのは淋しいからしっかり完結していて良かった。
序盤のひたぎさんによる阿良々木くん拉致監禁時のイチャイチャっぷりには引いたものの
(西尾維新、絶好調である…少しはストッパーを!ブレーキを!)、
八九寺に和み、神原に笑い、気付けばこのシリーズ独特のテンションなモードに入っていた。さすがである。
積極的な撫子の肉食さが微笑ましいやら
それをひたすら鈍感に受け止める阿良々木くんがここまで来るとなんかむしろすきだったりやらしつつ、
でも1番すきなのは神原との掛け合いだ。阿良々木くんと歳が近いせいか1番対等な感じがする気がする。
ひたぎさんとか羽川さんだと同い年だけど相手が強すぎるし、年少組はそのまま、阿良々木さん落ち着いて!ってなるから。
けど神原とのやり取りは言ってしまえばこれまで通りだったから1番印象的でしかもどストライクで来たのは
羽川さんに対するひたぎさんの凄まじいまでの意外性だった。
どこまで冗談なのかもよくわからないけれど、普段ああな人がああもガラリと変わると本当凄いんだと笑った。
破壊力が半端ないよ!素敵だよ!
男勝りな火憐ちゃんとむしろ油断ならない月火ちゃん、は楽しんだし
影から出て来て喋ったー!(何故かお風呂で)な忍も新鮮だったりしたけれど
化物語でタイトルに名前の入った子たちの個性は、やっぱり強力なんだなあとも思った。
メイン筋は、喪服男の貝木はあっさりだし今回怪異そのものもよくわからない催眠のようなものだったし
更に終盤の火憐ちゃんとの正しい兄妹喧嘩なバトルシーンがするがモンキーのそれを思い出すような退屈さだったりしたこともあって
やっぱりしょーもない日常の掛け合いが魅力なシリーズなんだなと、改めて思ったりした。

講談社BOX / 2010.07.21.



西尾維新

偽物語(下) / ★★★☆☆

ちっちゃい方の妹こと阿良々木月火の正体が開示されるつきひフェニックスな下巻。
の割に月火の出番は少なくて、むしろ火憐が出張りまくっている。
正体の衝撃はかなりのものだったけれど、話の運びは冗長で
敢えて抑えたっぽいファイヤーシスターズ以外の女の子たちの出番と相俟って薄い感じの残念さが最後まで漂っていた。
火憐が神原を崇めたり、火憐の接近に神原が頑張って耐えたらしかったり、
阿良々木くんが羽川さんとの電話にテンション上げすぎだったり
ひたぎさんがデレ通り越してドロッたりしたらしかったり(それってどんな…!)
撫子が企んでたり八九寺が相変わらずだったりの、些細なところをちまちま楽しんだ。
京都弁のお姉さんな影縫余弦と、僕っ子で無表情にキメ顔な斧乃木余接のコンビは
雰囲気的に戯言シリーズに出て来そうなキャラに感じられた。ちょっと懐かしい。
ロリ少女な忍のミスドやら自転車のカゴやらなマスコット化が微笑ましかったりしつつ
貝木泥舟のギャグキャラ化、ボケキャラ化にびっくりした。何か面白い人になっちゃって、どうしよう、結構すきかも、なんて(笑)

講談社BOX / 2010.08.02.



西尾維新

猫物語(白) / ★★★☆☆

一見、黒と対かと思いきやそんなことはない、第懇話つばさタイガーである。猫に続き、虎を生んだ彼女の話。
これまで阿良々木さん視点でひたすらに崇められていたりもした羽川翼がただのひとりの人間であることを、彼女自身が語り部になって語る。
ひたぎとの友情模様が新鮮で良かった。お風呂でわーきゃーしたりしていても物凄く物凄く健全で、逆にあざとくない。
ただ、羽川が全てを受け入れてしまうことについてのひたぎの怒りが羽川の全てを全否定という感じでつらかったのだけれど、
羽川本人はそこで傷付いたりはしないのだろうか…。
不在な間の阿良々木さんサイドの出来事については今後の巻で語られるのだろうと思うと楽しみだし、章番号の飛びも、真相はすぐにわかったけれどわくわくした。
終盤の満を持しての瞬間と羽川の変化には鳥肌が立つような染み入り感を久しぶりに味わった。この感覚が大好きだ。幸せだった。
曰く、化、傷、偽、猫黒までがファーストシーズンで、猫白であるこの巻からがセカンドシーズン、らしい。
セカンドは、元々作者の脳内にはなかった未来の物語ということらしい。
あとがきにある、どんな話なんだろう……。の一文が、ありがちなのに受ける印象が妙に違ってツボだった。

講談社BOX / 2011.09.07.



西尾維新

ニンギョウがニンギョウ / ★★★☆☆

ヘンテコで古風で幻想的って言うとちょっと違うけれどそういう感じの雰囲気を持ったやっぱりヘンテコな話。
23人の妹とそのお兄ちゃんと熊の少女の話。
17番目の妹が4回目に死んだりお兄ちゃんが逆様に吊られて映画を観たり足から子供が生まれたり自分の脳髄のスープを飲んだり
腐り落ちた眼窩にピアノの黒鍵を差したりする。
大勢の妹たちは名前もなく記号的なまま、妙な古風さを覚える文体のせいで浮つきは感じないまま、
でも訳のわからなさも放置したまま、そのまま終わった。
文学的な雰囲気を楽しむ本、だろうか。嫌いじゃないけれどやっぱりよくわからない。
1章1章がひたすら息継ぎもなくという感じで語られるのが新鮮であると同時に不可思議な雰囲気を強めていた。

講談社NOVELS / 2010.09.07.



野崎まど

[映]アムリタ / ★★★★☆

妙な話だった。全く掴めないとかそういう意味でなく一応掴めた上で掴み切れない妙な個性だったと思う。
前半は大学の映画サークルを舞台にした爽やかなキャンパスライフである。
撮影担当の画素はこびに天才監督の最原最早、
役者で語り手の二見遭一に、音響の兼森、の4人がメインスタッフとして映画作りに奮闘する。
画素に片思いしつつ、変わり者な最原最早に振り回される突っ込みな二見がひたすら微笑ましい。
風向きが変わるのは兼森が最原人殺し説を持ち出してからである。
その時はどちらかと言えば何だか妙な方向に話が進んじゃったよとあまり良い印象じゃなくて
最原の絵コンテに入り込んでしまうシーンも1度目は特に陳腐な表現だと思ったりしていたし
更に完成した映画に至っては凄いと言う割には下手に描写してしまった中身が小物すぎると感じたりしていた。
でも出来上がった映画を見て泣いてしまった理由であり真相へ繋がる最原の最初の作品の怖さに
きっと無茶苦茶なフィクション設定なのだと思いつつも掴まれてしまった。
そこからは見直したまま、前半や表紙の爽やかな印象をさり気なく裏切りまくった展開に惚れ惚れしながら読み進めていたのだけれど
最後の最後でまた妙なことになってしまって、混乱したまま、ぶちっといきなり終わってしまった。
嘘つきだし、繰り返された愛していないとか、一人称形式だから納得仕切れない何を忘れるのかとか、ヤンデレだったのか?とか
色々ごちゃまぜにぐるぐるさせられたまま、放り出された。
後半はとても良かったけれど、ラストはもう少しわかり易い方が良かったな。

メディアワークス文庫 / 2010.09.08.



野中ともそ

宇宙でいちばんあかるい屋根 / ★★★☆☆

表紙が可愛くて、開けた中のイラストも可愛くて、手に取った。とても王道なお話でした。
でも星ばあの言葉の数々がいちいちチクリとしたりした。
特に亨くんとの思い出云々の件は、つばめの気持ちが分かりすぎるくらい分かっちゃって痛かった。
幼馴染みとの思い出って、少なくとも私の場合は、ああいうものだ。そのまま。
けどそれが、王道にスパイスを加えている感じで、魅力的な理由…カモ。
いつの間にかつばめと一緒に星ばあの毒舌にも馴染んでた。
クラスメートとの描写は、軽かったけど苦手。けど学校ってああいうもの。なのに消えない違和感。
ママの最後の変わりようも、私は怖いと思っちゃう。今までが消せない。だけど不快感はなかった。
何度か痛かったり嫌悪したりもしたけど、でも大丈夫だった。何かすき。
それに、兎にも角にも、久しぶりに次から次へとな感じでページをめくってあっという間な1冊、な感覚は、懐かしくて良かった。

ポプラ社 / 2006.06.22.



野中ともそ

カチューシャ / ★★★☆☆

海辺の田舎町に暮らす高校一年生、のろまなかじおのマイペースな青春。
今時の高校生な香坂もかじお目線で見ればちょっとお馬鹿な愛すべき奴で
不良ちっくなこともうっかり忘れちゃうのが不思議で興味深かった。
カチューシャこと伊藤ちづるはロシアの血の入った転校生で気ままな自由人で、そのおじいちゃんのショウセイが、すごくすきだった。
かじおの釣り仲間で、自分のことを小生って呼ぶから通称ショウセイ。
教室で料理研究家の父さんお手製のおかずを売ったりカチューシャが男をとっかえひっかえしたり文化祭の戦車作りに奮闘したり
日々の描写は平坦な印象を受けたけれど
ショウセイの丁寧でとぼけた口調がそれだけで場をぱっと鮮やかにしていて、そこが飛び抜けてとても良かった。

理論社 / 2008.09.18.



野中ともそ

チェリー / ★★★☆☆

久しぶりにアメリカ北西部のさくらんぼの州へやって来た僕が回想する中学生の頃の、魔女のようなモリーとの日々。
主人公は帰国子女の日本人で、現実を舞台としているのに
どこまでものどかで素朴なファンタジーの雰囲気が外国文学みたいな独特さを醸し出していた。
図々しく居座って他人の家を乗っ取ったと思われたモリーの最初の印象はショウタと一緒にすぐに崩れた。
大人の癖に人見知りで、いつだって身をすぼめて、貝殻みたいな世界に住んでいるような人なのに
じょうずに居場所を見つけられない人間を引き寄せちまう、モリーが、いつの間にかすきになる。
鳥を呼びたくて家の壁に穴を空けるような、家をミドリやムラサキに塗っちゃうような、無茶苦茶な人でも。
子供みたいな純真さの中に大らかさを兼ね備えて、他の人には見えない精霊のハーヴェイ・ジュニアとお話したりして
ちょっと危ないおばあちゃんなんて近隣の人に思われつつも
パイ作りが上手で、さくらんぼのお菓子のお店を通して段々と認められていく。
ただそれは認められる為じゃなくて、モリーはモリーのままで、極自然な変化で全体がとても優しかった。
そんな中のショウタの心理描写は痛くなくでも刺さるストレートさで、それもまた良かった。甘ったるくなくて、鮮やかで。
でもモリーの素敵さはわかるけれどそれが恋愛になってしまうと、何となく、本当に微かだけれど、引っ掛かりを覚えた。
ただのすきじゃいけないのかって。こわい気がすると言った隅田ナエに反発し切れない私は汚いのかなあ…
終盤の、モリーにやさしく声をかけたであろうジュニアのシーンが大すき。とても響いた。

ポプラ社 / 2009.10.03.



野中 柊

ダリア / ★★★☆☆

前半は悍ましい。戸惑う。居心地が悪い。
独特の空気は前読んだ人魚姫〜に通じるものがあって、また、硝子玉が出て来た途端、飲まないけど…鮮明に思い出す。
何故か理科とか実験とかそういうイメージで不思議だった。後半は読みやすかった。よくわからないけど惹かれた。
病院のシーンとか…その辺からラストまでの流れは難しかったけど、嫌いじゃない。前半は怖いけど。

理論社 / 2006.05.01.



野中 柊

人魚姫のくつ / ★★★★☆

背表紙とタイトルに吸い寄せられて手に取った。
お姫様の出て来る童話がたくさん登場して、なのに甘さには冷たさが付き纏う。
じんましんにぞっとして、ビー玉に息が出来なくなる錯覚。
何とも言えない悍ましさ。どこまでもひんやりと冷たい、海の底、星空みたいな世界。現代の話だけど夢物語のよう。
決して優しくはないのに。綺麗さの一方で怖さの付き纏う童話みたいに。

新潮社 / 2006.03.16.



inserted by FC2 system