金原瑞人YAセレクション みじかい眠りにつく前に V 明け方に読みたい10の話 / ★★★☆☆

池上永一「サトウキビの森」
沖縄で女の子が男の子を待っている話。
方言が難解で、でも意味も括弧で入れてくれているからひたすらに新鮮な印象。
原色が見えそうな雰囲気と遅いのと速いののオバァふたりが映えていた。
女の子はひとりでくるくると空回っているけれど、変に苦くないのが良かった。

小川洋子「美少女コンテスト」
お母さんに言われて美少女コンテストに出ることになった女の子の話。
短編集で読んだことがある筈なのに覚えていなかった。
アイスの星空のしずくの描写がとにかく綺麗で素敵で、ラストの現実が淋しすぎたけれど、それはそれで多分味なのだと感じた。

川西 蘭「炎」
男の子たちが秘密基地を作る話。
子供の作ったものなのに何だか本格的っぽい基地にドキドキして、密室で蝋燭、の描写に危ないよ死ぬよ…!とハラハラした。
子供って怖い…。
最後の事件には、あれ?男の子、だよね…?とぽかんとしてしまった。
巻末の対談を見ても実は女の子な話ではなかったようで、ちょっと不思議。

桜庭一樹「A」
アイドルの消えた近未来で、最後のそれだったおばあちゃんと少女を機械で繋いでアイドルを復活させる話。
人気の移り変わりに対する、受け継がれる異形の神、って発想がすき。
へんに納得出来ちゃって、“かわいい”の価値含め、桜庭さんらしい独特さだと思った。

東 直子「道ばたさん」
イガイガした自分を持て余した女の子とそのお母さんと家の前で行き倒れていた女の人の話。
当たり前に面倒を見て、服を貸して、更に記憶喪失らしい彼女を暫く置いてあげて一緒に遊園地に行ったりする。
軽く受け入れちゃうお母さんとか、難しいお年頃な麻実が何だか結構すきだった。
でもこれまた不意のファーストキス事件はさすがにどうかと…。それじゃ変質者だよ道ばたさん。

三浦しをん「予言」
1999年の恐怖の大魔王の予言を知った時から世界の終末を想像するようになった俺と、彼の世界が壊れた話。
浮気して離婚したお父さんの元へほいほい遊びに行ける呼人少年の純真さが色々通り越して悲しかった。
案の定喜ばれはしたのか知らないけれど色々擦り切れて、ああもう、な感じ。
馬鹿ねと言いたくなったけれど、どうしたって鼻で笑いたいとかそういうのじゃない。
ただそこに固執するのでない、さり気ない立ち直りが良かった。

皆川博子「雪女郎」
お化けの子と意地悪されていた男の子の話。時代物。
勇ましいお姉ちゃんが格好良くて、雪と藍の描写が妙に生々しいというか凄まじく感じられて、持っていかれた。

よしもとばなな「血と水」
名もない宗教にのめり込んだ両親と共に信者の村で生きて来た私がそこを出てからの話。
これも読んだことがある筈だけれど覚えていなかった。
しわよせとしての、彼氏が纏う宗教の匂いに嫌らしさがなくて
主人公が元々それを毛嫌いしていたりしていつつも過剰な否定も肯定もなく自然体でいるのが心地好かった。
弱さとか優しさとかに言及しつつも胡散臭さは極力抑えられていて、水、みたいだ。
巻末対談にもあるけれど、在り来たりの当たり前がしっかりそれぞれの人だけのものとして存在しているのが素敵。

有島武郎「火事とポチ」
古い作品のようだけれど、時代設定が古いだけのように自然に読めた。ポチがあまりにも不憫で可哀相で何とも言えない気分になった。
火事の焼け跡で遊ぶ子供の無邪気さが妙にリアルで、ああそういうものだよねえ、と思ったりした。

荻原朔太郎「猫町」
散歩していたら奇妙な町に迷い込んだ話。同じく、古い作品。こっちは古さを読みながら感じたりもしてどこか難解さもあった。
文章そのものは普通の、現代と一緒の分かり易いものなのに古さの匂いってどこから来るんだろう。
でも難しくありつつも独特のセピアと硝子とアンティークさが綺麗ですきだった。
ファンタジーというよりは薬のせいなのかと思うと、勿論有り得ない前提ではあるけれどちょっぴり憬れみたいなものを持ってしまう。
あんな幻想的で繊細な怖さのある世界を見られるものなのだろうか、なんて。

ピュアフル文庫 / 2010.02.06.



C★N25 ―C★NOVELS創刊25周年アンソロジー / ★★★☆☆

約800ページ、5cmの分厚い本。ハードカバーでないのにこの厚さは中々の迫力である。
小説だけで24作品、コミックにイラストに対談やらインタビューまで入って背表紙の執筆陣が凄いことになっている。
全部を書き出すと膨大すぎる為、以下、抜き出し。

森 博嗣「ナイン・ライブス―スカイ・クロラ番外編」
この本を手に取るきっかけになった作品その1。覚えていなかったけれど、短篇集で読んだことのある作品だった。
ティーチャの若かりし頃の話。多分。根本的にストイックな雰囲気がやっぱり独特ですき。黒猫なのはC★Nだからなのか、と今更納得。
アニメ映画化にあたっての未公開メッセージの、作品を通して訴えたいこと、に突かれた。
生身の森さんが珍しく表面に現れた感じ。何だか軽い衝撃。

荻原規子「彼女のユニコーン、彼女の猫―西の善き魔女番外篇」
この本を手に取ったきっかけその2。銀の鳥プラチナの鳥の後日譚にあたるアデイルの話、時々レアンドラ。
本編を読んだのが結構前なことを悔やみつつ、読めば読む程懐かしくなって嬉しかった。ユーシスの鈍感さに和んだ。
男装と聖女を使い分けるレアンドラの素っぽい雰囲気も良かった。ふわふわだけれどお人形さんじゃないアデイルもすきっ。
続けて漫画版が読めたのも思いがけない素敵だった。
フィリエルとルーンとアデイル以外わからなかったのが残念。再読しておけば良かった…!
森さんと荻原さんの特別対談も楽しんだ。九九の意味がない、語感じゃなく考える森さんが特殊すぎる。

多崎 礼「夜半を過ぎて―煌夜祭前夜」
既読作品の番外編はやっぱり読めるとお得な気分になる。きっかけその3…には入っていたっけ?曖昧。
トーテンコフ(頭蓋骨)とガト(猫)が語る、
十一年に一度開花するトロンポウと亡くなったソザジと待てなかったミルカの話、を語るトーテンコフの話。
ただでさえ把握が難しいのに仮面は受け継がれるものとか言われたら余計混乱する。
登場人物の繋りの脳内整理は上手くいかなかったけれど空気の独特さはやっぱり凄いなと思った。
語られる物語自体は王道とも陳腐とも言えそうなのに、不思議。

三木原慧一「我等が猫たちの最良の年」
既読作品の番外編以外で最初にすきかもと思った作品。作者の飼い猫目線で描かれた、日常&身体の異常からの回復。
マーブルさんの具合が悪くなってからが若干長くて段々つらくなりかけたりしたけれど、エヴァネタとかよく知らない癖に何だか和んだ。

横山信義「闇の底の狩人」と、佐藤大輔「猫たちの戦野―皇国の守護者外伝」はどちらも戦争もので描写が妙に迫ってつらかった。
でもそうなるってことは凄いのかもとも思った。後者のラストがすき。兵卒を辞めて駆け出した佳二郎に、凄く気持ちが軽くなった。
千葉 暁「砕牙―聖刻群龍伝」はエアリエルの闘う強い女の人っぷりが素敵でラストの別れが淋しい。
篠月美弥「還らざる月、灰緑の月―契火の末裔外伝」は黒猫の使い方がいちばん綺麗だと思った。
単語とか文体に妙なデジャブめいたものを感じたりしたのだけれど、気のせい?同じ作家さんの別名義とか。…ないか。
それと、飛行船が舞台の三浦真奈美「あれから3年―翼は碧空を翔けて」、
食べたものがそのまま混ざって不気味なキメラとなった怪物のいる宝珠なつめ「猫と三日月―熱砂の星パライソ外伝」、
公爵に騎士団に国王陛下ときらびやかでしっかりとした雰囲気に包まれた
茅田砂胡「がんばれ、ブライスくん!―デルフィニア戦記外伝」の4作品は、本編を読んでみたいと思わせるものだった。

C★NOVELS / 2010.02.23.



推理小説年鑑 ザ・ベストミステリーズ2007 / ★★★☆☆

横山英夫「罪つくり」
刑事さんと鑑識さんの、2組の上司と部下が登場する、警察の話。4人の、男同士のやり取りが甘くなくていい。

春口裕子「ホームシックシアター」
殺人事件のあったマンションに住み続けている女の話。
強くてサバサバして性格は悪いけれどそんなに嫌悪は感じなかった主人公と
隣人のラストが、意外で、痛かったけれど読後感は悪くなかった。

蒼井上鷹「ラスト・セッション」
指の切断されたピアニストの死体の真相の話。
怪我と証拠の行方が、シンプルなのに生々しくて、気分の悪くなるような描写だったけれど、嫌いじゃなかった。

不知火京介「あなたに会いたくて」
記憶喪失に陥った盲目の男と、彼を拾った女の話。
最初は稚拙だと思ったけれど冒頭だけだった。真相は難しかったけれどこの本の中でもかなり上位。

桜庭一樹「脂肪遊戯」
砂糖菓子〜の番外編らしいけれど言われなかったら気付かなかった。
まっしろな脂肪で自分を守る紗沙羅と彼女を守ってやれと親父に言われている幼馴染みのお兄ちゃんの話。
作中でも語られている通りエピソードは断片的。
紗沙羅が食べなきゃ維持出来ないからと、夜、電話の向こうでひたすら咀嚼する描写に気分が悪くなりつつ
紗沙羅が難しそうな本を読み上げるところがすきだった。

大崎 梢「標野にて 君が袖振る」
しっかり者の書店員とアルバイト店員の謎解き物語。
色々お客のことを覚えている様子に居心地が悪くなり、たかが包装紙に必死なところがつらい。お仕事として当然のことなのだろうけれど。
杏子と多絵のやり取りは微笑ましかったけれど、救いになる筈の真実は苦手。堅い私は眉を顰めるしか出来なかった。

石持浅海「未来へ踏み出す足」
地雷除去に関わる人間たちの話。除去の為の発明とか実際に除去する描写が興味深かった。

北森 鴻「ラストマティーニ」
1人のバーマンと、店を畳んだバーマンの真相の話。グラスを冷やしたり、お酒を用意する描写が興味深かった。
途中の暴走した真相の妄想に背筋がちょっと寒くなりつつオチの必要性はよくわからなかった。

菅 浩江「エクステ効果」
髪を自分で切ってしまってはエクステをと頼みに来るお客の話。
美容師さんのお客の把握っぷりがやっぱりつらい。そういう仕事だってわかっていても観察されている感じが居心地悪い。
真相は気持ち悪くなった。発言に配慮がなくて気が回りすぎる香椎くんが可愛くてすき。

東野圭吾「落下る」
飛び下りか殺人か、な事件と突っ走り型の女性刑事の話。
薫のじっとしてなくてやたら突っ込んで行く性格がちょっと可愛い。刑事さんなのに親近感も持てた。

門井慶喜「早朝ねはん」
エアロビクスをするお釈迦様の涅槃図の話。
神永が美有(みゆう)って名前のせいで女の子に思えてしまってちょっと苦労した。真相には妙な迫力があってドキドキした。

薬丸 岳「オムライス」
放火で2人目の夫を亡くした看護師とその息子の話。
一見優しそうな刑事・夏目の隙のなさが怖かった。罠だと思った。
真相はつらかった。そこでの夏目の犯人の向こう側にいる人間への優しさが心強かった。

三上 洸「スペインの靴」
一流な靴屋さんと理想の足を持つお得意様の奥様の話。
靴屋の靴と足に対する執着っぷり、変態っぷりは最初は笑えるくらいの軽いものと受け取っていたのだけれど
その分クライマックスの容赦のなさがかなり怖かった。ラストはまた可愛くなっていて個人的には結構すき。

米澤穂信「心あたりのある者は」
ちょっとした番外編、みたいな雰囲気の高校生の男女の推理ごっこの話。真相とか推理より2人の楽しそうなやり取りが微笑ましかった。
推理だの何だのがすきというより、どちらかと言うと相手との会話が楽しい、って感じに思えた。

柳 広司「熊王ジャック」
シートン動物記のシートンと彼の話をきいて記事にまとめる男の話。
シートン老人の語る昔話と今の話が交互に語られて、文体は分けてあるけれどちょっとややこしかった。
おっきくてつよい灰色熊が人事だとどうにも可愛くて、木にサインをする様子とか想像したら本当可愛くて、すきだ。

本全体の中盤までは、どれも短編だし読み易くて且つ鮮やかで、凄いなと感じたけれど、それ以降はちょっと落ちた気がした。
厚いから私の問題かもしれない。特別凄くすきと思う作品はなかったけれど、全作品が一定水準以上でとても安心して読めた。

講談社 / 2008.10.28.



Sweet Blue Age / ★★★☆☆

角田光代「あの八月の、」
母校である大学に忍び込んで在学中に撮影したビデオを見る2人の女の話。
ひたすら色恋にうつつを抜かしている当時が見えすぎるビデオ、というのは
どうにもわからないし失笑もので、だけれどどうやら、そういうことがあってこそ大人になるらしい。普通は。
冷静な今がある分不快感は抑えられていた…かな。だからこそ、別の釈然としないものもあった気がするけれど。

有川 浩「クジラの彼」
潜水艦乗りを彼氏に持つ女の子の話。1番すきだった。
主人公は社会人だけれどナチュラルに可愛くてとても女の子って感じで微笑ましかった。
クジラ乗りさん、って呼び掛けるところがすき。何だか幸せになれるお話だった。

日向 蓬「涙の匂い」
地方に引っ越して方言に苦労しながらも転校先では気になる男の子とかも出来ちゃったりして青春する女の子の話。
お母さんに対する反発がとても思春期だなーって感じてしまった。
間違ってはいないしわかるのだけれど、何か、若い。不思議だ。…私も歳取ったんだなって感じだ。

三羽省吾「ニート・ニート・ニート」
会社を辞めた男と旅行行こうぜと押しかけて来た穀潰しなヒモ男とヒモ男に拉致られた昔の同級生で現在引き篭もりな男が
旅行の筈だったのだけれど、環状線をぐるぐるする話。
どうしようもない男3人がどうしようもなくぐるぐるしてるだけの話で、物凄くどうしようもないけれど、嫌いって感じじゃなかった、かな。

坂木 司「ホテルジューシー」
卒業旅行の資金を稼ぐ為、沖縄のホテルでアルバイトをはじめる女の話。冒頭の理想と嫌いについて語った部分が物凄く苦手だ。
好き勝手してる常識のない人たちの方が人生楽しそうで魅力的な気がした。特に松谷さんは嫌いになれないいいキャラだった。

桜庭一樹「辻斬りのように」
少女七竈〜冒頭の、七竈のママである川村優奈の物語の部分(ほぼ?)そのままでがっくりきた。
読んだことのない短編と思って取り寄せたから拍子抜けだ。。
白っぽい丸から脱する為に、思い切りふしだらにならなくてはと頑張ってみたお母さんの話で、つまりは結構生々しいのに
独特の空気がしっかり出来上がっているからどっか奇妙で不思議な雰囲気の作品になった、な印象。
色恋沙汰をもの狂いでまとめるところは結構すき。

森見登美彦「夜は短し歩けよ乙女」
語り手の片割れである間抜け男が読者に語りかけてくる作りが鬱陶しくて苦手。
意図せずの主役だった彼女だけに語らせればいいと思った。
ただ読み進めるうちとぼけた味もちょっといいかなって思うようになったし
偽電気ブランなるお酒の描写が華やかで爽やかでキラキラしていて、とても良かった。

角川書店 / 2008.11.08.



Story Seller 新潮社ストーリーセラー編集部編 / ★★★★☆

アンソロジーで総合4つ星は珍しいと思う。
読み応えは長篇並、読みやすさは短篇並、っていう文句は前者が些か言い過ぎな気もするけれど、
でも偉そうに言うならどれも中篇並の読み応えはあったと感じた。

伊坂幸太郎「首折り男の周辺」
隣人が殺人犯なのではと疑う夫婦と、殺人犯に間違われた男といじめられっ子の少年の話。
交わる筈のない3組の交わりようと、それによる男と少年の変化が良かった。
夫婦のオチだけはよくわからなかった。本物の殺人犯の男がいい味。

近藤史恵「プロトンの中の孤独」
自転車レースの選手の話。
専門用語とか基本のルールみたいなところに難解さがあったりしつつもさり気ない会話とかに何だか妙に掴まれた。

有川 浩「ストーリー・セラー」
安いSF映画のような不治の病を宣告された女小説家の話。
冒頭からテンションMAXで始まって置いて行かれるわラノベ臭に頭抱えるわな心境になりつつも、
中盤のラブコメなやり取りはとてもすきだった。
有川さんのあまりにもむき出しの恋愛模様は見ていて恥ずかしくなるくらいだったりすることが多々あって、
場合によっては引くまでいくけれど、でも恋愛小説とはこういうもんだ!みたいなド直球さは嫌いじゃないし
油断するとニヤけそうになることも多い。今回も段々同じく。
小説書きがヒロイン故に作者の分身?ってつい感じてしまうようなシーンには首を捻った。
編集に怒るとか、ならあんたが作家になって書けとか…。後者は特に言っちゃあかんことなのではと個人的には感じる。
精神科医に同調されて泣けるのもわからない。
間違っているかもだけど、彼らはそうするのが仕事でとにかく否定しちゃいけないって聞いたことがあるから。
ぼけてしまったおばあちゃんと施設云々にも微妙な気持ち悪さが残った。
…流せない、掴まっちゃう、つまりその時点で負け、って作中の言葉には同意だ。
有川さん作品て何でこう良くも悪くも引っ掛かっちゃうかなあ、不思議…。

米澤穂信「玉野五十鈴の誉れ」
昔の日本を多分舞台にした、閉鎖された空間での少女ふたりの話。
お祖母さまの厳しい家のお嬢様とその専属の使用人の、ともだち、な絆の話。
透明で美しかったものが歪んで、あまりにも静かな狂気を生み出して、エンド。
作中に沢山出て来る小説のどこか古風な登場の仕方がすきだった。やっぱりわからないのばかりだったけれど。学がないって淋しい…。

佐藤友哉「333のテッペン」
東京タワーの塔頂部で男が死ぬ事件とタワーの中でバイトをしているフリーター青年の話。
サバサバがサバサバを着て歩いているような同僚の華野が可愛くてすきだった。わかり易くわかりにくいクールさで。
主人公の土江田のダークな過去は格好付けた高校生みたいでいまいち響かなかったけれど
今の土江田の周りの人間との日常のやり取りはやたらリズミカルで軽快で、楽しくなった。

道尾秀介「光の箱」
童話作家の青年とクリスマスと学生時代の思い出の話。わかってみればベタなのにあっちもこっちもコロッと騙されてしまった。
作中で挟まれる昔書いた童話とそのモチーフのクリスマスソングが鮮やかで綺麗だった。

本多孝好「ここじゃない場所」
日常に退屈してずれたいのにずれ方のわからない高校3年生女子とテレポーテーションする男子同級生の話。
思い込んでまっしぐらなリナの自信過剰な語り口が客観的な描写がない故に妙に滑稽で微笑ましくて可愛くて、和んだ。
ここじゃないを求める様もベタなのに嫌味がなくて飽きも感じさせなくて軽やかで
基本の雰囲気がずっとどこか明るくて、それが何だかとてもすきだった。

新潮社 / 2010.01.10.



短篇ベストコレクション 現代の小説2008 / ★★★☆☆

日本文藝家教会編。

石田衣良「絹婚式」
しょっぱなから苦手すぎる生々しい話。その上山なし落ちなしに感じられた。

宮部みゆき「“旅人”を待ちながら」
ブレイブストーリーの番外編。驚いた。魔法を学ぶ落ちこぼれ少女ココロのお留守番話。和んだ。

諸田玲子「黒豆」
結局外側の人間だった、ってラストはむしろ潔くて清々しかった。

泡坂妻夫「匂い梅」
紋章上絵師の話。職人な話は鮮やかですきだ。

中場利一「笑わないロボット」
世界で一番好きなのは自分だと言い切る住職と彼が預かったいじめられっこの話。3番目にすき。
主人公の開き直りがちょっと鼻に付いたりもするけどいい話だった。

山田詠美「涙腺転換」
お母ちゃまの言い付けで泣かない子で生きて来た男の話。最初は良かったのに段々下品になって残念。

蓮見圭一「秋の歌」
偶然会った元カノの娘を観察する話。娘の描写がほのぼのしていて良かった。冒頭で語られる主人公の経歴は青すぎてつらかった。

唯川恵「みんな半分ずつ」
とにかく対等を望んだ女の話。ベタだけれどラストは嫌いじゃない。

桐生典子「雪の降る夜は」
橋から飛び降りそうだった所をナチュラルに止められてそのまま止めた男と旅行へ行く看護師の話。
危なっかしすぎるけど綺麗だったから割とすき。
弱いふりが上手な女、と決め付けて、そこにいない相手を糾弾するシーンだけは苦手。頷けなかった。

藤田宜永「黄色い冬」
年下の彼氏目線の不倫の話。だからかそんなにじめっとはしていなかったと思う。
でも描写から若々しくて綺麗に感じられても専務の妻で年上で、つまりいい歳でっていうのが浮かぶと気分が悪くなる。重ねちゃうから。

関口尚「図書室のにおい」
図書委員の少女と別に本なんかすきじゃなかった少年の恋の話。めんどくさい告白の方法とか潔い切り替えとか、清々しかった。

大沢在昌「ぶんぶんぶん」
女マンガ家の警護をする2人の刑事の話。
腐れ縁みたいな2人のやり取りがやんちゃで可愛くてしかも何かかっこよくて、良かった。元になったシリーズの方も読んでみたい。

恩田陸「弁明」
よくわからないままに始まって終わる舞台の話。お芝居なのか否か、のあやふやさは割とすきだった。

桜庭一樹「五月雨」
男だけど中性的な、個人的には雪女みたいな印象の吸血鬼の話。日常に紛れた非日常感があっさりしている分映える。

柴田哲考「初鰹」
味六屋の店主と奥様の話。艶っぽい中にも可愛い奥さんはこっちはちゃんと素直に魅力的と思えた。

新津きよみ「その日まで」
時効の近付いた指名手配犯と彼女の元同僚の話。引っ張ってもあれだけれど落ちが呆気なさすぎた。

森見登美彦「蝸牛の角」
阿呆神を奉る学生と件の阿呆神の話。
伝言ゲームみたいに繋がっていく語り口は最初は特に難しかったけれど適当感はよくわからないなりに面白かったかも。

堀晃「渦の底で」
宇宙飛行士が星を探査する話。
最初から最後まで掴み所がなくてついて行けなかった。インターフェースのトリニティとの対話は嫌いじゃなかったのだけれど。

飯野文彦「蝉とタイムカプセル」
子供の頃の記憶のない男が同窓会に出る話。ホラー、だろうか。
映像にしたらとんでもなくB級になりそうだけれど文章の引力が物凄くてこの本で1番すきだった。
どういうことだろうって思わされたら最後ぐわっしと捕まっちゃう。

小路幸也「唇に愛を」
バカみたいに真っ直ぐなミュージシャングループの話。
色々あっても凄く楽しそうで胸張ってて眩しかった。前半の1976年から後半の2007年への繋ぎもいい感じ。2番目にすき。

高橋克彦「私のたから」
お宝鑑定番組への出演依頼を受けて自分は何を出そうかと記憶を探りつつ考えるおじいちゃま(おじちゃま?)の話。
耳の痣からいきなり未知の生命体?だか何だかに繋がる展開について行けなかった。唐突だしよくわからなかった。

…全体的に、流れちゃって残らない話が多かった印象。

徳間文庫 / 2009.01.22.



電撃コラボレーション まい・いまじね〜しょん / ★★★☆☆

背中合わせで手紙を持った学生の男女と、2匹のマスコット的宇宙人のイラストを元に
計17人の小説家とイラストレーターがそれぞれ浮かんだ物語を描いたっていう企画。
表紙にもなっているお題イラストは西E田氏によるもの。可愛い。すきなタイプの絵。
むにゅう氏、京極しん氏のイラストはシチュエーションがラノベ的軽さ過多で私には合わなかった。
田上俊介氏、山本ケイジ氏のイラストは整っていて綺麗。さそりがため氏の4コマは可愛いけれど薄い。
三日月かける氏の台詞を極力排除した漫画はそれがとても映えていて素敵だった。
以下、各小説の感想。

うえお久光「ラブレターズ」
どちらがより大人かを競い合って来た幼馴染の話。
女の子らしく先を行く夏香が何て言うか、勿体ない。先に色々なくしている感じが何故か凄くした。
奥手の冬樹の方が可愛いし好ましいし羨ましい。
不器用にクラスのみんなにラブレターを出す阿呆キャラっぷりがしょーもないし酷いのにどっか愛しい。
スパイスになっている桜森よなか嬢のぶっ飛んだ性格と彼女に付き従うアン子ちゃんの関係が
歪なのに厭味がなくてどっか暖かくてすきだった。あの2人がメインのお話とか読みたいな。

時雨沢恵一「先生かく語りき」
あとがきみたいなノリで、訳のわからん造語(だよね?)を駆使した会話のみで語られる宇宙人2人の人間観察の話。
相変わらず飛んでる。本編でも飛んじゃった。ぶっちゃけ勢いだけで適当に書いてないかってノリ。
でもこれは凄い。天才だって思った。
この本の中でいちばんぶっ飛んでてふざけてて
だけど書きたいものにお題を絡ませるのでなく、しっかりお題に自分を寄り添わせることで消化し切っている。
観察する宇宙人と観察されている人間の時間の流れの差とか、さり気ないけれど感動した。
お題イラストを改めて見て物凄く納得した。素晴らしい。

上月 司「恋のフレーズは紙一重!?」
宇宙人がそれぞれラブレターを勝手に書いて人間のキューピッドをする話。
ラブレターを受け取った花菜とストーカー宣言を受け取った陽二の温度差が凄まじい。コミカルなんだけど、でもちょっぴり淋しい。
怖がる陽二の目線に立つと花菜の行動が一々怖いから恐ろしい。
何がどうしてストーカー宣言になってしまったのか宇宙人組のオチが可愛かった。

有川 浩「恋愛のカミサマ」
同じ苗字な高校生2人の普通の、だから価値がある的な、青春。普通だからみんなで海とか行っちゃう。もう、甘々ベタベタ。
有川さん作品は子供の恋愛話だと作中の言葉を借りればやっぱり色ボケている…と思う。そうなると私は結構ついて行けない。
何だあのテンション、あれが恋愛ってものですか、そうですか…。
でもそういう私にもふいにきゅんとくる言い回しが入っているところが、何とも憎い。文化祭で駄菓子屋さんっていうのがとてもすきだった。

中村恵里加「代理戦争とその人選における諸問題」
特別ラブな感じでなく展開するしょーもない代理戦争をすることになった名もなき少年少女の話。
可愛い宇宙人がぴいぴいと代わりに戦えと言う。しょーがないので2人はじゃんけんその他対戦法を考えていく。
それだけの話に、色々とゲームや何かのネタを仕込んであるのだけれど
淡々とした内容の割に、ネタも全くわからなかった癖に、何だか楽しめた。
滅亡はさすがに軽すぎてそれでいいのか!って思ったけれど、ちょっぴり仲良くなってだけどそんだけな2人が可愛くて良かった。

五十嵐雄策「僕とあなたの天体観測」
冗談で自分は宇宙人だと宣言してしまった宙野が
それをきっかけに宇宙人をぎったぎったにぶちのめすのが夢の天乃川さんとお近付きになる話。
傍若無人な天乃川さんに某団長さんを連想してしまったのがちょっとつらかった。
捻られたオチにちょっとびっくりした。おじいちゃんがお茶目ですき。

有沢まみず「SMOKING CHAIN」
異色の話。暗くて重くて報われなくて、明るく楽しくが多いこの本の中でかなり目立っていた。
当事者にはならない場所でオカルトを楽しむあゆと、そういう彼女をだから大丈夫と信じて見守る幼なじみの耐彦の話。
ベタさが半ば顔をしかめたくなるレベルで、前半のラブコメとあと特に事故の件は読んでいて苦かった。
だけどその後の展開の陰鬱さが凄くてこの為に過剰なくらいのラブコメをしていたのかと納得。納得出来る話はすきだ。

柴村 仁「タカチアカネの巧みなる小細工」
バイトがすきな僕と、掴みはフシギちゃんなタカチアカネのストラップ販売作戦話。
宇宙人マスコットのストラップ、イラストの通りに出来ているならかなり良い!可愛い!
付加とかなくても500円なら安いもんだ。かなり欲しい。どこで買えますかー。
嘘で売り上げをってところにはもうちょっと突っ込みなりあっても、と思ったけれど
下駄箱の手紙を通した2人のやり取りがとても可愛かった。
タカチアカネのメッセージは軽くウザいけどやり取り自体は可愛い。微笑ましくてすき。
でもマスコットの名前は、歩み寄ったりせずペケぽんとマルティネスが可愛かったと思うなー!

古橋秀之「守ってくれる?アダムスキー」
他人の目には見えない宇宙人に話し掛けるフシギちゃんな矢追ハジメと
彼女はアホの子ではないと断言して彼女を見守るアダムスキーこと和田正樹の話。
電波っ子との日常を暫く追っていたと思ったら
ちょっと困った系のオタクさんに絡まれて、かと思ったら物語はあさっての方向へ飛んでった。ぽかん。
どうにもお間抜けな宇宙語にへにゃっとなって、その中で真面目に働いているアダムスキーがかなりすき。
こういう付かず離れずで色々微妙な恋愛模様は結構好みだ。

岩田洋季「シンデレラ」
はじめて恋をした読書家の優子の片恋相手である龍一くんとの図書館で筆談な日々の話。
へんにリアルにしようとしたみたいな、優子にとっての本物の恋、な描写がちょっぴり苦手だった。女の子って生々しい…。
一緒にいるだけで浮かれたりしとけばいいのに。子供らしく。
筆談は可愛かった。ラストは意外だった。若かったらそんくらい平気とかって思わないかな。
勢いのままに恋だすきだってずぶずぶハマっていっているようなものだったのに、そこだけ妙に物分かりのいい2人が不思議。
あれで良かったと思うけれど。あんな綺麗なままでって感じで終われたらそれはもう素敵な思い出になるでしょう。…なんか釈然としない。
シンデレラ全否定がちょっと気になった。わざわざそんな引き合いに出さなくても。
作中に出て来た恩田さんと梨木さんの名前と作品名には馴染み深い作家さんだからときめいた。
数は少なかったけれど、それでも出て来たの全部わかったってはじめてかも。

成田良悟「クランクはいつもアップアップ」
学園祭で発表する自主制作映画の撮影前の監督他部員たちのどたばた迷走話。
中盤でネタにされている今回の作家陣の方々に笑いつつ、そういうおちゃらけたノリだけで終わらなかったのが意外で、素敵。
ポスター作って記者会見までやって
なのにどんな映画にするか決めていないような無茶苦茶な監督の終盤の何だかまともでらしくない頑張りが可愛かった。
お題イラストを使った引っ掛けにも騙された。

電撃文庫 / 2009.04.07.



ピュアフル・アンソロジー 夏休み。 / ★★★☆☆

ティーンエイジの少年少女を描いたオリジナル短編集。

梨屋アリエ「夏の階段」
のっけから再読でちょっとガクッと来た。両親を離婚させてあげる為に早く大人になりたい玉木くんの話。
玉木くんは出来た子だ。派手な夫婦喧嘩ばっかしていた癖に別れる気なんてそもそもなかった両親は憎いし
知り合いでもない少年に当たり前みたいに家の掃除をさせるおばあさんにも反発ばっか感じる。
玉木くんはいい子で大人だ。私は情けない子供。

石崎洋司「Fragile―こわれもの」
ビー玉と数学がすきないじめられっ子少女の話。
丸いビー玉の簡単に割れない様に強さを見る彼女が空に翳したビー玉の綺麗さを語る所とか
ハイビスカスと氷の色の一輪挿しの綺麗さを語る所が、すごく澄んでいて涼やかで、彼女の言葉を借りればすうっとした。すごくすき。
こわれものな年代を逞しくあろうと生きている2人がいじましかった。
いじめられっ子とはいっても全くじめじめしていない所もいい。いちばんすき。

石井睦美「もう森へなんか行かない」
部屋の隅っこに向かって座って出来た三角地帯を森とする美穂の幼馴染であるぼくの話。そこはきっと彼女のサンクチュアリである。
ぼくにはすきな子がいて、それは美穂じゃなくて、美穂を気にしつつも恋に部活にと青春している。
だけど終盤の事件には美穂もしっかり関わっていて、無駄なく置かれた美穂の立ち位置がいい。
文体がとにかく優しくてすき。
やるせなさというか苦さというか、苦しさを残す、むしろそれしか残らないようなラストだけれど
なのにずっとほんのり優しい空気に包まれていて、でも甘いとかではなくてお話そのものが繊細なサンクチュアリ、って印象。
1番と僅差で2番目にすき。

前川麻子「川に飛び込む」
いきなり川がごおごおと流れる田舎のおじさんの所へ友人と2人で遊びに(?)行くことになった、お洒落じゃなくて微妙に太い女の子の話。
田舎の描写がすごく素敵。なのに人間には生々しいくらいの描写が付き纏って悲しい。それがなければすきなんだけどなあ。

川島 誠「一人称単数」
小説というよりエッセイみたいだと思った。これももしかしたら一人称で書かれているだけで「私」は作者じゃないのだろうか。
エッセイといえば聞こえはいいけれど日記とかブログの自分語りに近い印象で、これをこういう本に入れることにちょっと違和感。
ですます調と、〜した、〜していた調が混ざるのも個人的にとても苦手。

あさのあつこ「幻想夏」
仲良しだったおばあちゃんに怪我をさせてしまって、
そのせいでおばあちゃんは逃げられなくて殺されてしまったのだと自責の念に苦しむ少年の話。
終盤までは普通に読んでいたのだけれど、犯人の正体とかラストの再会とかで拍子抜けというか肩透かしというか
そういう方向でまとまっちゃうのか、と何だかすり抜けられてしまった。
特にこういう方向だろうって思っていた訳じゃないけれど、最後の最後で小さく纏まってしまったようで残念だった。

ピュアフル文庫 / 2009.03.29.



ふたり。新風舎文庫大賞短編アンソロジー / ★★★☆☆

日日日「夜汽車の骸骨」
骸骨と幽霊の乗った、冥界行きの夜汽車の物語。オチは予想がついたしベタな話だけれどラストが妙に響いてしまった。
とぼけたキャラクターと夜の雰囲気が綺麗なファンタジー。多少グロさもあったけれど幻想的な情景が全てを飲み込んだ。2番目にすき。

岩月杏佑美「オレンジリング」
一週間分の記憶喪失に陥った彼と彼女の別れる別れない話。
たかが一週間だけれどその間に何らかの事件があったのならたかがどころではない。
これは逆にベタなオチがつらすぎたのだけれど
それまでの、どうにもやりきれない、お互い譲れないふたりの主張と心理描写がとても良かった。この本の中で1番すき。

北沢志貴「みにくいおんなのこ」
顔にコンプレックスを持つ女のひたすら鬱屈とした話。苦手だった。あまりにも綺麗じゃないを追いすぎていて気分が悪くなる。
こういう話は何が楽しくて書くんだろう。椿姫は昔話的で趣があって嫌いじゃなかったからそれでちょっと救われた。

小早川恵美「手紙と花火と少年の夏」
やたら青い春な中学三年生男子の年上に憧れた恋愛と友情の話。
唯(ただし)の打ち明け話が不意でぐっと来てしまった。そういうネタをあざとく感じさせないナチュラルさはすごい。

松村比呂美「マニキュア」
昔いじめていた担任が亡くなったとご主人から葉書が届く話。
オチが予想外で何とも微妙な読後感だ。桜色と真紅のマニキュアの小瓶、って小道具にときめいた。

新風舎文庫 / 2008.10.23.



yom yom vol.6/ ★★★☆☆

初の雑誌。単品では最高で星3.5かな。
短編の集まりだからかどれも小さくまとまっている印象を受けた。

小野不由美「丕緒の鳥」
十二国記の最新作。番外編的短編。舒覚から舒栄、それから陽子さんへと、な慶を一官吏の視点で描く。
飴細工とか硝子細工とかを連想する繊細で美しい鳥の描写が素敵。派手な話ではないのに何度か鳥肌がたってさすがだと思った。
少ない出番で全部ひっさらっていく陽子さんはやっぱりスゴいデス。

山本文緒「ネロリ」
同著者の文庫を2冊程読んで両方あまり合わなかった為ずっと苦手意識があったけれど
これはギリギリの所でちょっとすきかもしれない。
苦手な甘さと厳しさも健在だったけれど、嫌悪感は比較的薄かった。大黒柱で働く姉と病気で働けない弟と2人の側の異性の話。

森見登美彦「或る失恋の記録」
大学生のしょーもないドタバタ青春話。妙なサークルがいっぱいで馬鹿馬鹿しくて男の子って可愛いなぁ、と珍しく思った。

他、畠中 恵「ひなのちよがみ」は怖そうで怖くない妖が面白く、
恩田 陸「青葉闇迷路/紛れこむ者たち」は怖かった。シンプルなのにやたら怖かった。ホラー。
重松 清「にんじん」は苦手だけど印象にとても残る話だった。
嫌いだけど。ああいう、教師も人間だから、的な教師って物凄く。でも物語として、薄味すぎて印象に残らないよりはいいのかもしれない。
小説以外では南 伸坊「怪しい趣味」がとてもすき。本棚の本の整理の話。笑った。でもすごくよくわかる気がした。
有吉玉青「本は有機的工芸品だった」の皮装丁変身話もとても興味深かった。
上橋菜穂子「“脳がほてる”物語をもとめて」は苦手。
著書を3冊、かな、読んで、この人とは多分合わないと感じていたけれどやっぱり合わなかった。
同じように内容が作品紹介のものでは荻原規子「かいまみる多様な世界」がすき。
文章って人柄が出るんだなと改めて思った。勿論好き嫌いは相性だからそういう意味でなくね。

残りは、何ていうかさらりと流れてしまったのが多かったかな。。
全体的にどの文章も基本とても読み易くて敷居が高くないのが意外だった。
でも私には雑誌より、丸ごとでひとりな文庫とかハードカバーの方がいいかもしれない。これだけ厚いのに何か不完全燃焼。
雑誌でも、また十二国新作!とかならばそれはまた別、だけれど。

新潮社 / 2008.03.26.



yom yom vol.12 / ★★★☆☆

小野不由美「楽照の獄」
十二国記の番外編。これ目当てで買ったのだけれど、いまいちだった。
柳国の死刑制度の是非話。最初から最後まで官が議論をしていて、それだけ。
国の傾きなんかの纏め方は十二国ならではだけれど、現実世界にも当て嵌まりすぎて
シリーズものの番外編って形でやる必要性が感じられなかった。

以下は気に入ったもの。

中島京子「トラブル・イン・オイオワ」
作家の主人公がアイオワではなくオイオワへ行き
大学の国際創作プログラムに参加する筈が国際動物作家会議に参加してしまう日記小説。
動物、は最初は比喩なのかと思いながら探り探り読んでいたらそのものだった。多分。なんてシュール。
作中にも出て来た不思議の国のアリスのような、言わば理不尽なおかしさ、なのかなと思う。訳がわからないのに妙にすきだった。
本当っぽさと現実離れしたところのアンバランスな感じが面白かった。

ほしよりこ「ヘビに巻かれて」
活字雑誌の中のイラスト日記だから、はじめは異質さとかも相俟ってあまり乗り気じゃなかったのだけれど
淡々と読み進めるうち妙な魅力に絡め取られていた。味のある絵もなんか良い。
急がない、でもあちこち特に興味がなくてもせっせと回る(そして行ってみれば楽しめる)大人旅がしたくなった。
シロヘビのエピソードが可愛すぎた。特にハツカネズミの食べ易い向きに3匹目にして気付くところがたまらなくやばかった。
これで著者さんは元々ヘビが大の苦手だっていうんだから凄い。シロヘビの可愛さが物凄く伝わった。

辻村深月「アイドルの心得―使者生まれる日」
冴えない27歳の平瀬愛美が、使者(ツナグ)によって、芸能人で急死した水城サヲリと会わせて貰う話。
使者の能力については愛美がきいても全く説明されないからリアリティはない。ただ、現実として、実体を持った死者と会うだけ。
愛美の冴えなさがあまりにも惨めで、サヲリの存在があって尚カバーし切れるものでなかったのが悲しかった。
愛美の年齢があと5歳でも若かったなら希望もあるように感じられたかもしれない、というのは
多分自分よりある程度年上の年齢設定だから。
20代後半でお金はあっても上手く使えない、お店に気後れする、
周りの人が自分の悪口を言っているような気がして、でもその資格があるとする卑屈さが、未来のない感じを強く印象付けた。
同僚のように本を必要としない人になりたかったという一文が嫌だった。
読書家っぽいけれど、好きで読んでいるのではないのか、自分はそれが好きなのだと誇れないのか、って。
終わり方は暗くない筈なのに、どこまでも八方塞がりのようだった。
…著者さんは、惨めさを描くのが上手いよなあと思う。
お話は嫌いじゃなかったし、鼻につく感じも控え目で読み易かったけれど、なんかもう、悲しかった。

新潮社 / 2011.05.22.



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