山川健一

iNovel 山川健一作品集 Angels 水晶の夜 / ★★★☆☆

厚い本だし、シンプルで分かり易いのに入り込みにくい文章で読み切るのに苦労した。
ただ入り始めると凄く馴染むから、途中途中のそういう時は楽しかった。
ドラッグにハマっている主人公と生々しい男の思考回路が余計。
それさえなければ純粋な少年の物語として美しく受け入れられたと思うけれど
多分それがなきゃこの作者の作品じゃないのだろうなとどの作品でも出て来る拘りぶりから、感じた。
天使が浮かんでいた、は超短編でローリング・ストーンズのブライアン・ジョーンズの話。
鏡の中のガラスの船、は遊園地で読者する男とライオンらしい絵を描く少女の話。
絵を描く少女を見つめる描写が綺麗で絵になっていて印象的だった。
さよならの挨拶を、はドラッグの幻の描写が美しくて
薬のせいじゃなくてただの幻想的な小説だったら良かったのにと何度も思った。森とミミズクの凄く綺麗なファンタジーさがすき。
水晶の夜、はこの本の約半分な長編でたまに思い出したみたいに男を語られる所以外は良かったと思う。
宗教にのめり込んで輸血を拒否する女と自衛隊の召集を拒否する男の話。
教祖のうさん臭さは馬鹿馬鹿しかったけれど覚悟は相当のもので、嫌悪感はなかったし時代設定とかよくわからなかったけれど
拒否権もなく人殺しにならなきゃいけないとされた主人公の抵抗も儚くてちくちくきて良かったと思った。

iメディアパル / 2008.11.15.



山科千晶

エンジェル・ウィスパー / ★★★☆☆

最初の3分の1くらいは星4つか?5つか?とワクワクぞわぞわしながら読めたのだけれど
後半、勢いが削がれてプスプスと終わってしまった印象。
私の読解力が足りなかったり、厚い本だから集中力が足りなかったかなとか、思うけれど
個人的な結論としては、星3.5寄りの3って所か。
失踪した弟の行方を追う鷹次と天女伝説の伝わる神社の巫女少女を軸に語られる現代ミステリー。
自殺サイトで囁かれる向精神薬、携帯に届く奇妙なメール、
新種のウイルスと、人の脳が見えてそこに浮かぶココロが見えてしまうという力。
薬とか細胞云々の近代的な、白黒はっきりした要素と
神社の伝説とか儀式の、どこかファンタジーのようなふわふわした要素が相俟って、不思議な雰囲気を醸し出していた。
香夜に選ばれる不安定なカナリヤと、地に足の着いた小物と、両方あってこその魅力が素敵。
オカルト的な軽く寒気のする描写もありつつ、双子とかアングラ劇にドキドキしつつ。
でも終盤、盛り上がった所までは良かったもののラストはよくわからなかった。
安易な終結にしなかったのは素敵だと思うけれど、難しかった。。

メディアワークス / 2008.03.20.



山田詠美

放課後の音符 / ★★★☆☆

2007年05月14日、再読。
音符、でキイノート。女子高生が主人公の、8編の恋愛小説集。
17歳は、大人が思うよりいろんなことを考えているんだって。
大人は悪い子って言うかもしれないけれど、私はこれでいい、みたいな潔さが全編通して溢れていた。
でも、いくら可愛い単語で飾っても、動物の恋は動物の恋だ。
実際、そこまで生々しい描写はないけれど、過激な単語は幾つも出て来る。
喫煙や飲酒が格好いいことのように語られているのも違和感。
細い鎖のアンクレットとか、シャネルの真っ赤な口紅とか、宝石箱、香水。ときめく小道具は大すきだった。
でもやっぱり、恋が主体の話は私にはあまり合わないみたいだ。リアルなら、リアルな程。
下品ではなかったけれど、そういう話に辟易していた学生時代を思い出した。
…なんていうと、この本の理屈でいくと逆にいやらしい子、なのかな。
私としては、本当に男も恋もいらないって思っているつもりなんだけれど。

新潮文庫 / 2006.02.01.



山本文緒

絶対泣かない / ★★☆☆☆

2007年05月16日、再読。
15の職業の女たちの、元気の出る小説集、らしい。…うっそだぁ。
私は、苦手だった。もちろん、私は、だけれど。本当に元気になる方ももしかしたら沢山、いるのかもしれないけれど。
本自体も薄いし、その上全15話だからどの話も短くて、読みやすい。とてもあっさりしている。
多分、リアルを生きている人は自分だけじゃないんだと安心するんだろう。
やな奴でも主人公で、その彼女が報われれば、小さな幸せに出会えれば、
人生そう悪いことばかりじゃないかも…と希望を持てるのだろう。だから、私は無理だった。
図太いくせに人に文句ばかり、八つ当たりも正当化する、さも自分は一生懸命やっているのに、と言いたげな主人公たち。
同情も共感も無理だし、そんな人が報われたって元気になるどころか。憎いだけだ。虚しい。
私には、リアルな普通を突き付けられるような痛い本だった。遠いくせに何て醜い。

角川書店 / 2006.02.22.



山本文緒

プラナリア / ★★★☆☆

2007年05月21日、再読。
現代の無職をめぐる心模様を描いて共感を読んだベストセラー、らしい。直木賞受賞作。わからん。
あいあるあしただけはとてもすきで、それ単品ならば星4つでこの本も手元に置いておこうと思うけれど、他の4作が苦手すぎる。
どの話の主人公も痛々しいくらい勝手で共感、というより同情。同情、というより不愉快。
負の感情に引きずり込まれるだけで私にはいいとこなしとしか思えなかった。
その4作があるから、仕方ない。売ろうと思う。
あいあるあしたは惜しいけれど、手元に置いてうっかりまた再読して落ちたくないから。
自由で気ままな、正に野良猫なすみ江がとてもすきだった。
他の作品は後ろ向きにしか感じられなかったのにこれだけはとてもナチュラルに明るくて、微笑ましくておっきくて。
どうしてこの本に収録されているんだろう、と思うくらいこの本の中では浮いている。
バツイチ男と手相観さんと男の娘とバイトのゲイ(バイ)さんと男の居酒屋の常連さん。
無職でもふらふらしてても、すみ江みたいだったら素敵だな。優しくて良かった。何となくどことなく、希望に溢れてる風で。

文春文庫 / 2006.02.06.



山本幸久

幸福ロケット / ★★★☆☆

読書好きで自称クラスで8位な可愛さの小学5年生の山田香な子と、立派な眉毛ででも情けない顔をする小森ユウキの恋愛未満な物語。
香な子目線の文章がかわいくておかしくて良かった。何度か出て来た難しい漢字とか言葉に関する香な子註も微笑ましい。
ライバルの町野さんとのやり取りもへんにギスギスしないのが素敵でわざとらしくない小学生の世界が心地好かった。
とても楽しめたのだけれど3つ星なのはちょっぴり派手さとか盛り上がりに欠けたから、かな。
すきだけれど、4つ星には残念だけれど届かなかった。
ちゃんと先生で、けど先生らしくなく話してくれたりもする鎌倉先生が、凄く格好良くていいスパイスだった。
黒ロリっぽいクラスメイトがいるのが何となく今時って感じだ。

ポプラ社 / 2009.09.17.



雪乃紗衣

彩雲国物語 はじまりの風は紅く / ★★★★☆

ちょっと前に出たドラマCDで主役の女の子をほーちゃんが担当したってことで、まず興味を持った。中国系は十二国が大すきだし。
けど軽めっぽいし、そんなに期待はしてませんでした。でも、うん、良かった!
確かにティーンズーって感じだし、セリフがまた軽いしだけど意外となかなか。
劉輝可愛いよー。いいの?ヒーローがあんな可愛くて!
他の登場人物もみんな魅力的でいい感じ。特にお気に入りなのは珠翠。すきだー。
映像になったら、衣装とか風景とか綺麗なんだろうなぁ…。鮮やかで。桜とか本当に。でも家はアニメ写らないのです。残念。

角川ビーンズ文庫 / 2006.04.08.



湯本香樹実

夏の庭−The Friends− / −−−



湯本香樹実

ポプラの秋 / ★★★☆☆

2011年05月22日、再読。
昔住んでいたアパートの大家のおばあさんのお葬式に向かう中、
元看護師で25歳の千秋が、7歳でそこへ越してからの日々を回想する話。
不気味で近寄り難い大家のおばあさんは、死んだら、死んだ人への手紙を届けるお役目を持っているという。
父を亡くしたばかりの千秋は父への手紙を預けるようになる。
子供の千秋目線が回想って形のせいかあざとく子供をしていなくて
もしかしたらリアルではないかもしれないけれど子供という前に一人間という感じで寄り添い易かった。
全部がストンストンと私の中に収まっていくみたいにやたらしっくりと読めた。
引っ越しのきっかけになるポプラの木もアパートの人たちもすごく自然でそれでいて優しい。
環境の雰囲気はあまりにもファンタジーな気もしたけれど、清々しくてすきだった。

新潮文庫 / 2004.12.01.



吉本ばなな(よしもとばなな)

アムリタ(上) / ★★★★★

凄い引力。徹底的な、凄まじい程の力。読んでる途中唐突に真下に落ちるように錯覚して少し怖かった。
透明で綺麗なのに、抉られるみたいに暴力的ですらあるような。神聖で俗っぽくて、何かもう何も考えられない。
不思議な、計り知れないもの。少しだけとろみのある甘い水、ぽっかり浮かんだ夜空と同化しない満月。只、真っ白に燃え尽きた。

福武書店 / 2006.03.22.



吉本ばなな(よしもとばなな)

アムリタ(下) / ★★★☆☆

慈雨、甘露、蜜雨、雫。アムリタ、のイメージ。
私は渇いた大地に、たゆたう泉になってしんとした空気の中、しとしと降るそれを受け入れる。受け止める。
それが出来る本。染み透ってく。
ひたすらに綺麗を研ぎ澄ましたみたいな、澄んだ描写とその一方で繰り広げられる身も蓋もないような会話のギャップが、結構、すき。
力の抜き具合、というか、嫌味にならない素直な感じ方が独特で面白い。
朔ちゃんに自分が、由ちゃんに弟が重なるシーンがたくさんあった。お母さん、って、部外者なものなのかな。
どうして1人だけ遠いんだろう。わがまま、と、院の子と由ちゃん、の話が凄く苦手。
本そのものは、全てを認めてあるがまま受け入れて例えば受け止めることが出来ないなら流せばいい、っていう
でも押し付けじゃない、ナチュラルな空気。そういう広さと強さが、純さが、透明さが、すきだと思った。

福武書店 / 2006.04.03.



吉本ばなな(よしもとばなな)

キッチン / ★★★☆☆

2007年05月22日、再読。
国境も時もこえて読みつがれるロング・ベストセラー、らしい。相変わらずのアムリタ。蜜雨。甘い夜露のような空気。
でもナチュラルとは言えない片言染みた台詞や稚拙な文章はデビュー作とはいえ、ちょっと厳しい。私には馴染まなかった。
表題作と、表題作のその後を描いた満月-キッチン2はえり子さんがとても魅力的だ。
お話の中のゲイさんetc.って優しくて可愛い人が多くてすき。現実は知らないけど。
ムーンライト・シャドウはうららさんが素敵だった。不思議な人、っていいな。
どの話も誰かの、近しい人の死から始まる。そのわりに明るく。…わざと明るく。ちょっと痛々しい。
日々の生活の中で、傷は確実に癒されてくんだよ、みたいな慰めと逞しさがあると思った。ちょっと淋しいけど、必要なことなのかな。

新潮文庫 / 2006.02.24.



吉本ばなな(よしもとばなな)

白河夜船 / ★★★★☆

ばななさんの本には、夜、死、不思議体験、がよく出て来る。まだそんな沢山読んだ訳じゃないけど、そんな印象。
甘く、優しく、冷たく、しんしんと…しっとりと馴染んであまりに自然すぎて、1度入り込んだら同化して、自分でも捕えられなくなる。
3つの作品を3日かけて読んだからどうしても今強く残ってるのは3作目の「ある体験」。1番短い話。
その分文章が凄く深い色に磨かれていていきなり虜になる。
例えばあおく光る葉っぱだとか、きこえる歌声、幼い笑顔に経験のないはずの二日酔いの感じ、白百合の香り…
「夜はゴムのように長く伸びて果てがなく甘い」「朝は情け容赦なく鋭い。その光は何かを突き付けるようだ」「固くて、透明で、押しが強い」
読書は夜に、が基本な私は夜の話を夜に読む。それだ!と思った。何てことない言葉が組み合わさって出来るリアルな空気感。
伝える色、匂い、感触…綺麗だなぁ。冷たいのに。甘い。アムリタはばななさんの本に共通するイメージかもしれない。

福武書店 / 2006.04.24.



吉本ばなな(よしもとばなな)

TUGUMI / ★★★☆☆

2007年05月14日、再読。
児童文学のような優しい雰囲気と、反面、全てを悟ったような淋しさがばななさんの作品にはある気がする。
悟ったからこその、言葉が微妙だけれど諦めから来るような、しんとした広さ。
つぐみの声について、細く高い、って描写が出て来るのはかなり後半だ。
それもあって、私の中では中々そういう表面的なイメージが定まらなかった。
高くて幼い声、かと思えば、ちょっと低めの少年のような声になったり、それは多分、つぐみの印象がどこまでも透明だから。
リアルには想像出来ないところが逆に彼女らしくて良かった。
口が悪くて繊細で、いじわるな嫌な奴。本当はいい子、とかしたら怒られそうなわざとらしさのカケラもない、人物。
別れがあるからこその尊さがずっとキラキラしていた。

中公文庫 / 2006.02.10.



吉本ばなな(よしもとばなな)

デッドエンドの冒険 / ★★☆☆☆

表題作について、これが書けたので小説家になってよかった、って著者があとがきで言っている。なかなか言えることじゃないと思う。
しかもこの本については、つらく切ないラブストーリーばかりだと言っている。
ラブストーリー、にはちょっと苦手意識があるけれど、興味が湧いた。けど結論から言えば、私にはちょっと、いまいち。
最初の2作は優しくて、あれ、辛くないじゃん、と少し拍子抜けしてしまった。
「あったかくなんかない」が1番すきかな。特に前半。他はよくわからないけれどピキ、ってひび割れるみたいに何度かなった。
何だかよくわからない、でも絶対的な強い力が、私は苦手だと思った。子供、なのかなぁ…
つらいと受け取れなかったのも、人生経験が足りないから?だから響かなかったのかなぁ。残念。

文藝春秋 / 2006.05.25.



吉本ばなな(よしもとばなな)

とかげ / ★★☆☆☆

細かく言えば星2.5?不快、て程ではないのだけど…何ていうか、私的には、濃度が薄い。
文章も内容も、あんまり…。93年発行。昔の作品だからかなぁ?
全体的に生々しい話が多い。無駄にそういう単語が出て来るような、印象。そういうものが苦手な私は、例によって入るどころではない。
血と水はすきかな。優しくて。宗教も、最初は否定的な主人公だったけれどわりと綺麗な感じで。
大川端奇譚も、基本は一番過激なのだけど
誰でも一度は親から決定的に拒まれていて、それをどこかで覚えていて、だからもう一度親になってくれることを求めて、
ひとはひとと暮らそうとするのだろう…て箇所にはっとした。
読み終えてちらちらとまためくる時、どの話にもどこかしら綺麗な描写があるような気がする。
ちゃんと読んでいる時には感じられなかったもの。まだ早かった、ってことなのかなぁ。。
いつかまとめて綺麗だと感じられる日が来るだろうか。
一人称が私で、女の人だと反射的に思い込んでいたら男の人だったりする作品が幾つかあってその度吃驚。
何となく、とかげサンは魅力的でした。

新潮社 / 2007.01.04.



吉本ばなな(よしもとばなな)

ハゴロモ / ★★★☆☆

ばななさんの本は安定していていいなぁ、と思う。
わざとらしい台詞回しには苦手だと感じたけれど
あとがきにあるみたいに何のメッセージを受け取るでもなく、何だか優しくて、癒される感じ。
ちょっとだけ苦しみのペースを落とす、感じ。
あとがきは本当に、自分の作品なのに客観的に的確にわかっている風な印象だった。
無理をしないことと、流されないことの違いって難しい。ゆっくり時間をかけることが、無理していないとは、見えにくい時もあるし。
無理しないのは逃げるのとは違って、逆に、向き合う感じ…?無理しない、は、無理に元気にならないということ??
みつるさんのお母さんの無理しない、な姿勢も理解はやっぱりどこか難しかった。
無理してでも頑張ることを正しいと決めたのは誰なんだろう。
本当、優しくって、安心して読める本で、奇妙な暖かさとか、不思議で。良かったです。

新潮社 / 2006.07.21.



吉屋信子

紅雀 / ★★☆☆☆

昭和の名作家、偉大な作家、なイメージだった。
たまたま吉屋先生関連の文章を2冊の本に見つけて、何だか称賛されているっぽくて、興味を持った。
独特な絵の表紙に怯みつつ、控え目だったこの本を選択。
…難しかった。
当時は勿論、現代、の解説でも称賛されているけれど
昔のお話らしい言葉遣い…というか、文章の色、というか、とにかく消化するまでに時間がかかる上、何だか結局よくわからない。
可愛ゆい、可愛ゆいの連呼にはじまる過剰なまでの見た目の称賛、とか
ああしてやったのに、こうしてやったのに、何ていう言い回しだとか、冷たいだの欠点だの…
どうしても、快くは感じられない点がとにかく沢山あって、そういうもの、だったのだろうけれど
…私は多分、すきにはなれないと思った。名作って難しい。

ゆまに書房 / 2007.09.17.



米澤穂信

遠まわりする雛 / ★★★☆☆

「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことなら手短に。」
が、信条の省エネ主義な高校生・折木奉太郎と、大人しそうな外見に反して好奇心の塊である千反田えると
ムードメーカー的な福部里志と、いちいちきつめな伊原摩耶花の、学園青春物語。
つい先日読んだ推理小説年鑑2007に収録されていた短編と同シリーズ(しかもそれはこの本にも収録されていた)で、驚いた。
7つの短編からなる本作は、古典部シリーズの第4弾らしい。
気になります、の一言で身近なあった疑問をホータローに解いて貰って、
彼が考えれば全てわかる、と全面的に信用しているえるが可愛い。たまにとんちんかんになるホータローも可愛い。
あきましておめでとう、が一番すきだった。
えるの小紋姿が鮮やかで、お正月の神社が賑やかで
そういう意味では表題作も華やかだったけれど根っからからっと明るい前者の方が好みだった。

角川書店 / 2008.10.31.



米澤穂信

ボトルネック / ★★★☆☆

自分の代わりに生まれなかった筈の姉が生まれた世界へと飛ばされてしまったリョウの物語。
易しい文体で、自分じゃなければこんなにも違ったって事実をひたすら突き付けられるのが
淡々とすらしていない、和やかな語り口故にショッキングだと思う。
雰囲気が優しいからどこかで前向きになるのかと思いきや、最後の最後まで貫かれたナチュラルにネガティブな感じに
読後感が悪いというよりは、どう感じたらいいんだろう、みたいなあやふやさが残った。
終盤は説明もなくどこか断片的に紡がれる台詞や僕の心境が上手く掴み切れなくて
ラストのメールと合わせてますますどうしよう、と思った。でもわからないなりに直前の電話のやり取りの必死さとスピード感はすきだった。

新潮社 / 2009.11.30.



リリー・フランキー

東京タワー オカンとボクと、時々、オトン / ★★★☆☆

リリーさんについては、昔バラエティ番組にレギュラー出演していた時の顔しか知らなかった。
とぼけたおじいちゃまっぷりが割とすきだった。
私の場合、話題作は1度は読みたいかもって流行の過ぎ去った後で手に取ることが多い。
この本もそういう風に今更ながら読んで、文体の気の抜け加減はリリーさんの人柄かなとふわふわした。
自伝、だと思うのだけれどノンフィクション特有の陰気な媚びも美化も感じなくて
至極あっさり、普通のことを普通に書きました、的なところがすきだった。作品とある程度距離を置いた冷静さが好印象。
麻雀とか方言とか、よくわからない部分もあったし、オカンが貧乏なのにやたら息子にものを買い与える様子はあまり好かなかったけれど
全体の訥々とした雰囲気は爽やかで良かった。後半になってやや感情的になっている部分はすぐにクールダウンしているしご愛敬?
マザコンが気持ち悪がられるのは、大切が執着に見えたりするからだと思う。
冷たいのかもしれないけれど、終盤のリリーさんは物語の主人公とかなら全然問題ないと思うけれど、と感じた。
感情に支配されてある種狂気的に思えたのはやっぱり失礼だし私が浅いからかなあ。

扶桑社 / 2008.10.30.



C.S.ルイス

ナルニア国物語 ライオンと魔女 / ★★★☆☆

ナルニア国物語の第1巻。
児童文学らしい、児童文学…というか完全に善が良い、悪は悪い、で、悪い子は駄目、いい子になるべし、な内容。
大人気ない私は少し反発。
エドに対して、語り手?からしてひたすら冷たかったり、いい子、な筈のピーターはエドの言う通り確かにいけ好かないわ、とか
そもそも白い魔女が悪い、って最初から決め付けてる流れにエドと一緒に反発したりも…
悪い人は殺しても全然構わないけどいい人をけなすのは物凄く悪いこと、みたいな雰囲気も頂けない。
まあ、結局は白い魔女は悪で正義が勝つのだけど、映画で魔女さますきーになってしまった私は原作でも魔女さますきだった(笑)
だって冬は駄目ですか!白い顔はそんなに駄目ですか!春は、金色はそんなに比べるまでもない程素敵なの?
戦時中、疎開中の子供たちに聞かせる為に作られた話だっていうし、それを考えればわからなくもない話だけれど、でも、、
指輪物語と違ってかなり読みやすかった点は良かったかも。
子供向けのお話…な訳だけれど。こういうのって逆に教育上良くなかったりはしないのだろうか。
これを素直に読んで育った子、なんて、やたら自信過剰になりそうな気がするのだけど…。ひねくれた考え方かな。

岩波書店 / 2007.01.11.



アーシュラ・K・ル=グウィン

ゲド戦記T 影との戦い / ★★★★☆

映画公開後ちょっとした騒ぎ(?)にもなった作者は個人的にすきでないけれど、一度は読んでおきたいと思っていた。
何度か挟まれる地図がやたら細かくて、綿密に作られている様はある種狂気とも言えそうな執着を覚えさせる。
…失礼な話だけれど、恐れすら感じた。
文章は読みやすくて、児童文学のわりに暗い話は現代でいうハリーポッター?何て連想したりした。
凄く、文学的な、イメージ。飾りっ気のない、あるがままを描写しましたと言わんばかりの雰囲気も好感。
前半、同じ単語が乱用されていたのは頂けないけれど、ラストは引き込まれたし、いつか読み返したいと思わせる本だった。
ナチュラルすぎて、しっかり捉える前に行き過ぎてしまいそうに何度もなったから…
とても純粋なお話だと感じた。Uも読んでみようかな。

岩波書店 / 2007.01.16.



アーシュラ・K・ル=グウィン

ゲド戦記U こわれた腕環 / ★★★★☆

Tのメインであるゲドから離れて、前半は特に、ひたすらアルハを追う。
映画のテナーとゲドの会話から想像していたよりずっとアルハにとっては自然だった、…それが絶対だった、墓所の描写が印象的。
後半でゲドは闇だ孤独だと言うけれど、そこまで悪として描かれてはいないような気がして、好感。
アルハは、…テナーは、とても感情移入がしやすい子だった。
昔のお話の色なのか、外国文学の色なのか
戯曲のような純粋で無垢で飾り気のないありのままな匂いは感じたけれどでも不思議と入りやすかった。
知らないもの、こと、への恐怖がとてもリアル。
訳者あとがきの作者への賞賛の嵐はTに続き閉口だけど
本編は、外国ものや昔のファンタジーで私のよく陥る人事、な状態にはならなかったし、とにかくテナーの迷い、逡巡が胸を打った。

岩波書店 / 2007.01.24.



アーシュラ・K・ル=グウィン

ゲド戦記V さいはての島へ / ★★★☆☆

ゲド、テナー、と来てついにアレンの回、だ。
この、どの話にもゲドは絡んで来るものの主人公を自然に別の人に回してゆく手法が何だかすき。
冒頭の噴水の庭の描写が凄く綺麗で良かった。所々、映画に通じるシーンがあるものの基本は大分違う感じ。
アレンのキャラも結構違って、そもそも父親殺しをしていないし若さ故の跳ねっ返りはあるものの、とても真っ当な子みたい。
いきなりゲドに恋にも似た思いを抱いた、とかびっくりな描写もあったりするけれど。
ウサギはかなり違うから、名前だけ借りた感じ、なのかな。
クモは男で、この回だけっぽい。もう登場はしないかも。
人間らしい弱さの塊染みた人だった。映画の妖艶さがなくてちょっと濃さに欠ける風に感じられた。
ラスト、急に王子らしく、次期王らしくなるアレンは少し唐突な気がした。
同時にカレシンがゲドを年老いた男、と言い、まさにその通りな風に、普通の人間ぽくなるゲドも意外。
けどこっちは、いい意味の意外さ、だったかもしれない。
カレシンが凄くすきだ。登場シーンは少ないのに物凄い存在感。素敵。ゲドに、お疲れ様、と言いたくなるラストだった。

岩波書店 / 2007.02.15.



アーシュラ・K・ル=グウィン

ゲド戦記 最後の書 帰還 / ★★★☆☆

作者はこれをVの発表から16年後に書き始めて、その後発表までの期間を合わせると18年も、かかったらしい。
お話の雰囲気ががらりと変わってしまったのはそのせいだろうか。
男だの女だの、男尊女卑だの、それに対する反発だのが鬱陶しい。果てはテナーの男がほしかった発言。
どうして急にそんな話になってしまうのか、どうしてテナーはあんなに嫌な奴になってしまったのか、わからない。ついていけない。
別にわざと嫌な奴として書かれた訳でもなさそうだから作者の主観が前に出過ぎたんじゃないか、なんて思ってみる。
でもそれにしたって、息子のことを、失敗作、みたいに
育て方を失敗した、って、失敗だ失敗だ連呼すらするのには鈍い痛みと苦さが広がってどうしようもなかった。
映画ではヒロインだったテルー登場のお話で、映画と違ってまだ幼いけれどクライマックスの活躍は素敵だった。でも、…何だかなぁ。
錆び付いて澱んだ空気ばっかりが強烈な印象。残念。

岩波書店 / 2007.03.12.



アーシュラ・K・ル=グウィン

ゲド戦記X アースシーの風 / ★★★☆☆

メインにハンノキを加えての最終巻。前巻よりはマシになったものの、やっぱりテナーの考え方は身勝手に思えて仕方ない。
映画より引っ込み思案さが目立つテハヌーはテナーをよく頼るけれど、素っ気なかったり葛藤したりとテナーは忙しい…。
レバンネンはレバンネンで王としてしっかり責務を果たしたりしつつ
そこへ送られて来たセセラクは娘らしい王女さまなのだけれど、この子にはなかなか打ち解けなかったりしつつ。
竜のアイリアンの存在感がとても光る。テナー以外のキャラクターそれぞれには好感が持てた。でもそのテナーがちょっと、大きい。
作者はテナーに一番入りやすいのだろうか。。
ラスト、一気に動くストーリーには引き込まれたけれど、全体的には、何となくぱっとしない印象。2巻が一番良かったかな。

岩波書店 / 2007.04.08.



J.K.ローリング

ハリーポッターと賢者の石 / ★★★☆☆

2009年02月11日、再読。
久しぶりに読んだら文章が易しすぎてびっくりした。もっと入りづらくて硬いってイメージだった。
初読時より読書力(?)がついたってことだったら嬉しい。
無駄のない構成にもびっくりした。必要性のない色んなエピソードをいっぱい詰め込んでいて、だから厚くて
でもそれが子供心を忘れないってことで遊び心なんだってイメージだった。
読み手の年齢とか読書遍歴で結構印象って変わるのかもなあ。
この巻ではそんなに捩じれていないスネイプが可愛い。
なのにスネイプを一直線に疑って憚らないコドモタチに若いってこういうことか、なんて思ったりした。
でも11歳時はそんなにハリーちゃんも主張激しくないし不快ではなかった。
冒頭でシリウスの名前が出て来たことには驚いた。この頃から仕込まれていたのか、って。
1冊1冊が厚いし、シリーズも全7作っていう長編だけれど、作者がそれに振り回されていない感じが好印象。
そしてマクゴナガル先生絡みに相変わらずときめいた。
冒頭のダンブルドアとのやり取り、特に名前呼び!とか、ハリーちゃんのシーカーの素質に喜んで更に突然にっこりなところとか、
スネイプとさり気に犬猿しているところとか、クィディッチでリーの実況にいちいちガミガミ言うところとか、
最強なのはクリスマスの酔ったハグリッドにほっぺちゅーされてクスクス笑うところ大すき…!大人が可愛いのは素晴らしいのです。

静山社 / 2001.08.07.



J.K.ローリング

ハリーポッターと秘密の部屋 / ★★★☆☆

2009年04月15日、再読。
12歳になったハリー、ホグワーツ2年生の第2巻。
1巻より初読時の印象に戻ってしまった。エピソードの1つ1つが上手くくっついてくれない。
でも終盤では一気に挽回した。終盤だけなら文句なしの4つ星。涙腺をとても刺激された。
ジニーの自責とかダンブルドアの全部わかっている微笑みとか
マクゴナガルの暖かさとかドビーのご褒美とか、それらひとつひとつの描写が本当にぎゅっと詰まっていて掴まれた。
ジニーとハリーに感情移入して、マクゴナガルとドビーには読者な立ち位置できゅうっと来た。
ドビーの締めの展開とか本当に素晴らしい。ルシウス氏が若干弱っちすぎる気もしたけれどいいんだ。
リドルもとても濃くて鮮やかで素晴らしかった。すきと言ってはいけない人だけれどキャラクターとして物凄く魅力的だしそそられる。
ヴォルデモート卿には特別惹かれないけれどリドルはかなり別格で、この巻でもキィとなるそのお役目を凄まじく素敵に真っ当していた。
ひとつだけどうにも気になってしまったのは
冒険ファンタジー的にハリーがハラハラドキドキのピンチに投げ込まれるのは児童文学として必然かもしれないけれど
やっぱり、何故そこでロックハート?っていうこと…。
蛇さんがたまたま弱めで彼も記憶ってものだったから良かったけれど、マクゴナガルとか呼びに行こうよ、危ないよ…;;

静山社 / 2001.10.18.



J.K.ローリング

ハリーポッターとアズカバンの囚人 / ★★★☆☆

2009年09月01日、再読。
13歳のハリー、アズカバンを脱獄した殺人犯に狙われるの巻。ルーピン先生もご登場。ついでに占い学のトレローニーも。
セドリックとチョウがちらっとだけれどこの時点でお披露目されていて驚いた。
若干描写の多めなチョウはでもクィディッチが潔くないからあまりすきじゃない…。
原作からは、可愛いより美人なんだろうなーって印象を受けた。
映画版を何度か見るうち終盤の犬+狼+スネイプ、のシーンがやたらすきになっちゃった為
その辺り、再読するのを楽しみにしていたのだけれど、全体的にいまいち引き込まれなくって残念。
やっぱりちょっと私には合わないのだろうか。基本が冗長な印象。もっとスマートにいける気がする、とか感想が元通りになりつつある。
でもラストのシリウスからのプレゼントはぐっと来た。原作版ならではのキレまくっているスネイプの細かな描写もとてもすきだと思った。
というか全編に渡ってスネイプがやたらすきになっている自分がいる。
再読だとやっぱりハリーちゃん方はスネイプを不当に見すぎだと思う。
若干の不憫さも感じさせつつどこか軽やかに笑えちゃうスネイプがすきだよスネイプー。
ルーピンにお薬作ってしかもわざわざ届けてあげるスネイプ優しいよスネイプー。
ラストはさすがに可哀相だったけれど、元苛められっ子とは思えないくらいストレートに可愛い人だと思う。
初読時はそんな風になるなんて思ってもみなかった。気絶したスネイプに対してシリウスがわざと乱暴なのとかもどっか美味しい。
どっちも可愛いなあもう!ワルだなあシリウス!でもハリーちゃん云々はわかりにくすぎだったよシリウス!本当になんて人騒がせ。
とっても賢いクルックシャンクスも良かった。可愛かった。擬人化したらきっとぞっこんになる。
クィディッチの試合中の厳格なマクゴナガルも、思わず生徒と同レベルになっちゃうマクゴナガルも素敵。
スネイプと相変わらず犬猿だったりとか、トレローニーの悪口になりそうになる度口を噤んだりだとかも可愛い。
やっぱり大人組がいい感じっ。

静山社 / 2002.01.08.



J.K.ローリング

ハリーポッターと炎のゴブレット(上) / ★★★☆☆

2010年02月11日、再読。
上下巻構成に突入、14歳になったハリーのホグワーツ4年生の始まり。
セドリック親子と移動キーでクィディッチワールドカップへ行き、まずはクラムのお披露目。更に闇の印現る。
それから三大魔法学校対抗試合の為ダームストラング校とボーバトン校の面々がホグワーツへやって来る。
上巻ではそれの第一の課題までが描かれる。
リドルの館から始まる冒頭シーンが新鮮ですきだったのだけれど、再読では何故かあまり鮮やかには感じられなかった。残念。
ワールドカップのシーンでは登場人物があまりに多くて混乱したりもしたけれど
ホグワーツでの学校生活へ舞台が移ってからはかなり把握し易くなって良かった。
ウィーズリー・ウィザード・ウィーズとか、屋敷しもべ妖精関連のハーマイオニーの動きとか、一々伏線にきゅんとする。
上巻の時点ではハーマイオニーがクラムに対して(というよりは取巻きに対してだけれど)結構邪険だったりするのにも
再読ならではな面白さを感じた。
この巻でしっかり決着のついているエピソードでは
ロンの嫉妬から始まるハリーとロンの擦れ違いの末の仲直りに対するハーマイオニーの反応が大すき。
いっぱい気にしていたんだってそれだけで凄く伝わる描写が素敵。
心配性といえば今巻は出番が控え目だったマクゴナガルの第一の課題の時の反応もすきだった。
厳しくて心配性、とか素敵タッグすぎる。
闇の魔術に対する防衛術の新しい先生としてやって来たマッド−アイ・ムーディの異色な雰囲気も映えていた。
リータは現段階では思ったより濃くない印象。
4巻は結末は覚えているもののどこからっていう部分の記憶が曖昧だからその分そわそわしながら読み進められて良かったかも。
色んな伏線が爆発する下巻が楽しみ。

静山社 / 2004.11.19.



J.K.ローリング

ハリーポッターと炎のゴブレット(下) / ★★★☆☆

2010年02月14日、再読。
初読じゃなくて、先の展開の基本がある程度頭にある状態だった為
上巻で下巻への伏線と感じていた部分が実は次巻以降への伏線だったりした第4巻。爆発、(私の印象では)しなかった。残念。
クリスマス・ダンスパーティがメインとなるハーマイオニーとクラムのやり取りが微笑ましくてすき。
クラムが物凄く純愛って感じなのが可愛くて良い。
第二の課題をこなして、憂いの篩で過去を見て、第三の課題の末にヴォルデモート卿、復活。
いちばん大事なトリックはタイミングを忘れていたから色々疑いながら読めた。タイミングとかいう問題じゃなかった。うわあ。
侵入やら脱獄やらが結構簡単に出来てしまうお粗末さには多少ガックリ来たりしたけれど
やっぱりアズカバンも絶対ではない、ってことかな…。…ダンブルドアも。
犯人へ尋問する怖いダンブルドアがその直後に来る疲れ切った雰囲気とも相俟ってすごく心配になった。
今にも倒れそうなご老体さが無敵のおじいちゃんじゃないんだって妙にリアルでつらくなる。
これ以上の憎しみはないと言わんばかりに睨み合うスネイプとシリウスに、そういうシーンじゃないと思いつつも少し和まされた。
終盤は重いからいい救いだった。
他校やら魔法省やらがどんっといるから今巻では基本控え目だったけれど
スネイプはやっぱり美味しいよなあと先の記憶を刺激される描写に改めて思ったりした。

静山社 / 2004.11.22.



J.K.ローリング

ハリーポッターと不死鳥の騎士団(上) / ★★★☆☆

2010年11月26日、再読。
騎士団の面々がいきなり増えたと思ったら魔法省で懲戒尋問を受けさせられ
ホグワーツに帰ればアンブリッジが待っていた、な5年生になったハリーの物語。
ダンブルドアの弟とかRABが既に会話に上っていることにドキッとした。
先へ先へと続いている伏線はいつも埋もれていて初読じゃそれと気付かないから再読する度その面白さが嬉しい。
映画では全面カットだったクィディッチの新しいキーパーもそうだったと思い出して楽しんだ。
ただ、全体的には上巻のせいか序章染みていて地味な印象。
シリウスがハリーにジェームズを重ねたり、自分が考えていた程父親似でないと言うところから
先の展開を連想してしまい切ないやら悲しいやらだったりした。
今巻初登場なルーナがジニーと同い年で驚いた。映画ではハリーたちと同学年設定になっていたのかな?
結構気が強いのも新鮮。ハーマイオニーとも地味にぶつかったりしているし。
不思議ちゃんさは原作の方が徹底的ですきだ。獅子頭の帽子とか。でも全体の雰囲気は映画の方が癖が強くなくてすき。
逆にチョウは原作の方が素敵だなあとつくづく思う。聡明さがさり気なくいつもあるようで良い。
毎回の悪役は原作ではかなりねちっこくて強烈という印象があって
アンブリッジも同様のイメージがあったけれど、思っていたより平気でびっくりした。下巻で炸裂するのだろうか?
それでもマクゴナガルがアンブリッジに対するハリーの癇癪に注意したりそれで減点したりするのは良かった。
マクゴナガルの守り方の形がすごくすきだ。耐えているけれど、負けている訳では決してない。
直接のやり取りで一生懸命耐えてその度「何か?」って言うのも妙にすきだった。我に忍耐を与えよの祈りには思わず笑った。

静山社 / 2004.12.26.



J.K.ローリング

ハリーポッターと不死鳥の騎士団(下) / ★★★☆☆

2010年12月10日、再読。
全体としては勢いがあるとは言えない印象だったけれど、下巻は幾つかとても引き込まれる章があって、それが嬉しかった。
長さを少しすっきりさせたらずっとそんな風にすることも可能なのだろうか。
でもこの膨大な量にさり気なく沢山の伏線が張られている訳で、だから無駄はきっとない筈なんだろうと思う。
アンブリッジは下巻でもそこまで炸裂しなかった。
シリウスがハリーにジェームズを重ねていることもあまり関係なくて、勘違いをしていたらしい。
スネイプの記憶を覗いた形ではじめて語られた親世代エピソードが懐かしかった。あの毒は結構嫌いじゃない。
ハリーの反発っぷりが何故か初読時程感じられなかったから良いスパイスだった。スネイプによる閉心術の特別指導にもやられた。
今回も、愛しのマクゴナガルは素敵だった。ハリーの進路指導でのアンブリッジとの激しい攻防がたまらなかった。
不在についてはすっかり忘れていた為原因のシーンとか復帰にはかなり鷲掴みをされた。特に復帰はもう、飛び付きたい。
ネビルの頑張りや重要だったかもしれなかったところと、ベラ様のベラ様っぷりもすきだった。
読後すぐだとやっぱりラストのダンブルドアの懺悔と予言を打ち明ける辺りの印象が強い。
あれにもかなりやられた。涙につられてこっちまで泣きそう。

静山社 / 2005.01.08.



J.K.ローリング

ハリーポッターと謎のプリンス(上) / ★★★★☆

物凄く読みやすくてびっくりした。今までハリーちゃんのシリーズはいつも読み終えるまでに結構時間がかかっていたのに。
ダーズリー家のシーンが冒頭少ないこと、ダンブルドアのハリー贔屓があからさまな分気にならなくなったこと、
次巻が最終巻ってことではじめの頃の間延びしたエピソード群がもうないこと、ですっきりした印象。洗練、された感じ。
ジニーが別人みたいに成長してて、あれ?あれ?って何度もなった。ハリーちゃんは結局のところどうなんだろう。
ロンとハー子は相変わらずで、惨さが痛々しくて切なくなった。痛いと言えばダンブルドアも…心配になります。
6巻だけじゃなくて、全巻通して、ハッピーエンドになりますように。

静山社 / 2006.05.28.



J.K.ローリング

ハリーポッターと謎のプリンス(下) / ★★★★★

ずっと、上巻を読み始めた当初から、嫌な予感はしていた。そこかしこに影が付き纏っているのを、感じずにはいられなかった。
だからハッピーエンド、を、祈ったけれど、下巻に入って、難しいかなぁ…って気がどんどんしてきて
実際、そうで的中しちゃって、もう、何か、…淋しすぎる。
謎のプリンスの正体は下巻に入って薄々感付き始めていた。R・A・Bは見当もつかない。
ハリーちゃんは大人になったし、ジニーにも納得出来た。
弱っている時のおじいちゃまが切なくて、怒るおじいちゃまにはとにかくごめんなさいって懇願したくなった。
あの威厳は、本当に凄いと思う。
次巻、みんなの幸せは怖くて祈れないけれど、少しでも暖かくあれますように。
苦しくて仕方ないけど、これだけのものを、ここまで形にしてくれたローリングさんに、感謝を込めて。

静山社 / 2006.05.30.



J.K.ローリング

ハリーポッターと死の秘宝(上) / ★★★☆☆

最終巻にして、はじめて先に映画版を見てしまった(part1だけだけれど)巻。
ハリー、ロン、ハーマイオニーはホグワーツには戻らず、分霊箱を探す当てどない旅に出る。ヒントもない中姿くらましの連続。
ひとつひとつのエピソードがスローというよりはやたら丁寧で、なのに映画同様印象には残り辛かった気がする。
ダンブルドアの過去関連は映画のpart1ではカットされていたから新鮮な筈なのだけれど
上手くハリーの反発に入り込めなかったし、リータの本の中の権力を求めた云々も上手く掴めなかった。
ナギニやグリフィンドールの剣をはじめ、ハラハラとかドキドキするべき場面が妙に淡々とした描写に感じたのも
展開を知っているからだけではないように思った。最後の最後の巻である下巻はもっと入り込めるといいな。
ぺちゃくちゃウサちゃんだけは活字でも物凄い破壊力で、思わずニヤけるくらい素敵だった。

静山社 / 2011.01.08.



J.K.ローリング

ハリーポッターと死の秘宝(下) / ★★★★☆

決戦の舞台はホグワーツ、の巻。
ダンブルドアの語るハリーの真の役目、があまりにも児童文学じゃなさすぎて、そういうタイプのバッドエンドなの…?と目を見張った。
ベラ様の拷問は先に見てしまった映画版part1の方が迫力のあるシーンになっていて残念だった。
完璧超人じゃないダンブルドアはここに極まれり、な印象。
やっぱりいまいち何を考えているんだかわからないお人だけれど
全部わかっていたからとはいえ理不尽さもあったと思うからこういう描かれ方なのは嬉しい。
逆に若者が死を受け入れることへの過剰な美化は少し受け入れ難かった。
スネイプとダンブルドアは繋がりすぎのように若干思った。でも彼らが例えば女の人だったなら萌えちゃってたのかな…。
キャラクターが亡くなる度にいちいちハッとなった。
展開上、それが誰であるかに限らず意外ってことはなかったのに
でも絶対に予想通りではなかったから、呆然とするような気持ちになった。
やっぱり上巻より下巻の方が展開的にも盛り上がるのかもしれない。読みながら何度も泣きそうになってしまった。
特にネビル関連がやたら胸に迫って、少しの、さり気ない、でも力のある描写が多くてずるかった。
終盤のハリーの「〜のだ」口調は力が抜けてガックリ来た。
それ俺様ヴォルちゃんな口調じゃないか、そうでなくても「〜なんだ!」じゃ駄目なの?
他にも、地の文で「ハリーのおかげ」とか、訳が残念なことが多かったと今更だけれど思う。
わざわざ言わなくても、そもそもシリーズ全体を通して誰もが多かれ少なかれ思っていたことな気がするけれど
あとがきで「日本語としての完成度」とか書かれちゃ触れたくもなってしまう。
しょうもなさすぎて苛っとは来ないけれど、何だかなあって思ってしまった。
多分元々、翻訳か原作かはわからないけれど、余韻の強いタイプのシリーズではないのだと思う。
だから終わってしまうと至極あっさりな感じだ。でも中盤の盛り上がりにはかなり引き込まれて、それは凄く嬉しかった。

静山社 / 2011.01.12.



綿矢りさ

蹴りたい背中 / ★★☆☆☆

金原さんと2人、話題になってた芥川賞受賞作品。
蛇にピアスはネタが痛すぎて読む勇気がないから、綿矢さんより金原さんの方に何となく好感を持っていたけど、こっちを読んでみた。
文章の粗とかはさすが気にならない。
でも代わりに凄く、綺麗じゃないモノばかりを追っている感じが全面に出ているようで、読んでいて気持ち悪かった。
にな川の描写にしても、ハツのキャラクターにしても、どうしてこんなに汚いモノばかりを強調するのか、わからない。
汚いと感じるのが間違っているのかな。
そもそも「にな川」って書き方も苦手だ。ハツが知らない字だから、みたいだけれど小学生の作文みたい。
それを小学生が書くなら普通だけど、芥川賞だよ、児童文学でもないはずだよ。そういう配慮じゃない訳でしょ。
…何か、不格好としか思えない。
もっとまともな本だと思っていたんだけどな。良くも悪くも…?そのイメージは何だか違っていたみたいです。
そういう意味でのいまいちは、覚悟していたけれど…。何だか意外でした。

河出書房新社 / 2006.07.15.



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